『グッドモーニング・コール』から『グッドモーニング・キス』へ 菜緒が選んだ道は正しいのか?
『グッドモーニング・コール』では中学生だった菜緒と上原くんも、続編の『グッドモーニング・キス』ではそれぞれ大学生になりました。その後、菜緒は社会人に。上原くんは大学院生になっていきます。
あの頃、自分たちと同じ中学生だった彼らももう社会人。彼らがどのような人生を歩んできたのかさくっとみていきましょう。そこには、恋愛漫画としてだけではなく、人がどんな職業を選択するかというキャリア漫画としても考えさせられる側面があります。
上原くん・まりな・あべっちはそれぞれの道を進む
まず先に菜緒以外の主要人物についてみていきましょう。
最初は上原くんです。彼は大学卒業後東京の大学院に進学。その後、菜緒との今後の人生を考え就職を試みましたが、最終的にはやりたいことを優先し博士課程へと進みました。
まりなは東京でOLになりました。北海道の大学に進んだみっちゃんとはいまだに遠距離恋愛中。二人のすれ違いも限界が来て「いよいよ破局か……?」と思わせたところでまさかの婚約。続編連載後まったくみっちゃんが登場しない状態で、果たして本当に結婚してしまうのか? 今後が楽しみな二人です。
あべっちは地元企業へ就職。しかし、東京出張のたびに菜緒の就職先の一番星に現れます。相変わらず便利に使われているキャラです。
大学を卒業し社会人となった菜緒
ここからは本作のヒロイン菜緒についてみていきましょう。
大学卒業を控えた菜緒は就職活動を開始。東京の大学院への進学が決まった上原くんと一緒にいるため、東京勤務の就職先を探していました。しかし、なかなか面接が通らないまま月日が過ぎていきます。
そんな中、父親からは地元に戻って就職するようにと説得されます。紆余曲折ありましたが、最終的に菜緒は地元の役場の臨時職員として就職することになりました。
1年限定の臨時職員だったということもあり、地元に戻った菜緒は別の仕事を探し始めます。そんなとき、菜緒の元バイト先のラーメン屋「一番星」が東京へ2号店を出店することが決まりました。そして、なんと菜緒に正社員のお声がかかったのです。これ幸いとばかりに菜緒は一番星の正社員に就職。東京への転居を決めました。
ここまでの展開で、筆者が一番気になったのはここ。「菜緒ちょっと行き当たりばったりすぎでは……!?」です。
二人の今後はどうなる? 気になる、菜緒のキャリア
日本社会では新卒採用が一般的。それ自体にもちろん賛否両論はありますが、現時点では大学卒業後入社1社目のキャリアがその後の人生に与える影響は大きいです。そのことは重々理解しているはずの大学生が「1年限定の臨時職員」としてあっさり就職……?
菜緒が臨時職員の職を引き受けたのには大きくふたつの理由があります。ひとつ目は就活がうまくいっていなかったから。
そしてふたつ目は、このままずっと上原くんと一緒にいたのでは両親と一緒にいられる時間が今後の人生でほとんどないから。そのことを寂しがっている父親と、菜緒の父親との関係に悩む上原くん、二人の関係性を考慮して地元の田舎へ帰ることを決めました。
・今後どういうキャリアを歩んでいきたいか?
・5年後10年後どういう仕事をしていたいか?
・最終的にどのような人材になりたいのか?
といった、新卒面接のお決まりの質問に関することをすぽーんと放り出したかのような選択をしたことに筆者は驚きました。
菜緒本人も自覚している通り、菜緒には特になりたい職業というものがありませんでした。だからこそできた選択ではあるのでしょうが、場当たり的な選択に菜緒の今後が不安に……。それと同時に、このような自由な選択ができることにうらやましさも感じさせられた選択でした。
臨時職員の後、ラーメン屋の正社員になったことにも驚かされました。4年制大学を出て臨時職員に、そして次はラーメン屋の正社員に。なかなか今後のキャリア形成が難しい道を選んだなと感じました。社長のオフィスで一時的にOL体験をしたことからも分かるように、菜緒の身に付けたビジネススキルは1社目から一般企業を選択した新卒とは違うものになっています。