ナイツの時事ネタはどんな世相をも笑い飛ばす! 「コロナ疲れ」の日々を振り返って
今年は例年以上にいろんなことがあったのでウイルスが流行り始めたばかりのことが遠い過去に感じられる。4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が発令された。下記はその直後、4月11日放送の漫才の一節だ。
塙 みなさん、大丈夫ですか?ここのところずっと新型コロナウイルスへの対応に追われて、コロナ疲れしてませんか?僕ももしかしたらそうかもしれないし。
土屋 みんなそうですよね。
塙 みなさんの気持ち、よくわかります。そりゃキツイと思いますよ、毎週、毎週、コロナ、コロナ、コロナ。だって、今日で7週目になるんじゃないですか? コロナで漫才やるの。みなさん、キツイでしょ?
土屋 みんなはそんなことやってないよ! 俺らだけだろ! 「コロナ漫才疲れ」してんのは!
塙 そろそろデカめの芸能人、不倫してくれよ!
土屋 やるか!今不倫してバレたらその芸能人、完全に終わるよ!
思えばいちばん「コロナ疲れ」していたのはこの頃だったかもしれない。マスクもアルコールも満足に買えず、思うように外出もできず、籠って過ごす中でストレスは日々蓄積されていく。そんな日々が確かにあった。
塙 まあでも、本当にここ最近、家にいますよね。けっこう暇ですよ。寄席とか番組収録もなくなってるし、外出もしてないし、子供が「パパ遊ぼう」って言ってくるのも無視だし、何もやることないんですよ。
土屋 それは遊んでやりなさいよ!でも確かに、今まで、こんなに家にいることなんて、ないですよね。
緊急事態宣言発令後のステイホーム期間。飲食店は軒並み営業できなくなり、自宅で料理をする人が増えたことでパスタやホットケーキミックスなどが売り切れ、ドラマやバラエティ番組の収録ができないので再放送や過去の放送の傑作選が流れたりしていた。たった何カ月か前までそうだった。でも、これを読むまでそんな日々があったことをすっかり忘れていた。
非日常が日常に溶け込み、日常が戻ったらその非日常を忘れていく。時事漫才は本来新鮮な状態で楽しむのがベストなのだが、この本を読み返すことでそのときに起きた出来事やそれに対してどう感じたかを反芻する行為は、決して無駄ではないと思った。
〈どんな世相も笑い飛ばせ!!〉帯に踊るこの一文が、ほんの少し勇気をくれる。ニュースを見るのが楽しみになってきた。心が沈むようなニュースであっても目を通す。彼らの漫才で笑いたいから。
■ふじこ
兼業ライター。小説、ノンフィクション、サブカル本を中心に月に十数冊の本を読む。週末はもっぱら読書をするか芸人さんの配信アーカイブを見て過ごす。Twitter:@245pro
■書籍情報
『ナイツ午前九時の時事漫才』
編集:TBSラジオ『土曜ワイドラジオTOKYOナイツのちゃきちゃき大放送』
発売日:2020年7月31日
価格:1,760円(税込)
https://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=151997973