ホリエモンが明かす、フジテレビ買収騒動の内幕と再建への道 話題の書『フジテレビの正体』を読む

ホリエモンこと堀江貴文氏が5月30日、『フジテレビの正体』(宝島社)を上梓した。SNSやYouTubeでもフジテレビをめぐる一連の問題を厳しく追及してきた堀江氏が、同局の企業風土・組織構造からメディア事業のあり方までを赤裸々に語った一冊だ。
言うまでもなく、2005年のニッポン放送買収騒動以来、堀江氏にとってフジテレビは仇敵と言える存在だ。普段から歯に衣着せぬ主張には賛否あるところだが、その因縁だけでなく、実績のある企業経営者であり、また自身がメディア出演を重ね、テレビ業界の裏側に触れてきた経験を持つことからも、フジテレビ問題を語るには適任だと言えるだろう。
実際に読んでみると、もちろん“堀江潰し”に動いた旧日枝体制への言葉も多く、 フジテレビが起こした問題やその後の対応に疑問を抱える読者にとってはカタルシスのある内容でもあるが、一方で堀江氏は、フジテレビ自体に恨みはなく、仇敵の危機を嘲笑っているのではないと強調し、比較的淡々と20年来の持論を展開していることがわかる。
第1章から、今般の騒動と第三者委員会報告書について、その経緯と問題点をわかりやすく整理。自身の経験も交えつつテレビ業界/テレビマンの人権意識やガバナンスの問題に鋭く切り込み、 関連のトピックを時系列で並べた表も掲載している。当然「堀江貴文の主観」も多分に含まれるが、報告書の内容を細やかに引用しながら、客観的事実にフォーカスしている印象が強く、冷静な目で騒動を振り返りたい読者の役にも立つだろう。
また本書は「フジテレビの正体」と銘打たれているだけに、同局の成り立ちから80年代に迎えた“黄金時代”、女子アナの誕生からその後の低迷まで、歴史も細かくまとめられている。その上で、今回の問題を理解するポイントとして「40年以上にわたり日枝体制が続くことになった背景」「アイドル化したアナウンサーと接待文化の誕生」「外部の人間による買収防止、経営参画排除によって形成された時代錯誤の社風」の3点を挙げ、自身が20年前にその問題に切り込んだ買収騒動についての内幕も明かしている。