90年代ホラーの傑作『座敷女』は今も我々を追い詰める……理不尽なストーカーの恐怖

『座敷女』の理不尽な怖さ

SNS上に棲む『座敷女』

 そんなわけで後味の悪さも一級品のこの作品を この度、20数年の時を経て読み返したわけだが、その恐怖の色味はまるで薄まることはなかった。それがなぜかといえば、現代のネット社会、SNS社会にはスルーしてもミュートしてもブロックしても、ゾンビのように追いかけてくる座敷女、座敷男たちが無数に蠢いているからである。「さすがにこんなの本当にいないだろ?」っていう人間が本当に「いる」のがたやすく確認できるのが今の時代である。「なんにも悪いことしてないのになんで?」っていうこともそこいらじゅうで起きてる。

 そう、 あの時よりも今こそリアルに迫ってきては我らを追い詰め続ける作品、それが『座敷女』なのだ。

■恒遠聖文(つねとお・きよふみ)
73年生まれ。ライター。音楽雑誌を中心に幅広く執筆。

■書籍情報
『座敷女』
望月峯太郎(モチヅキ ミネタロウ)著
価格:本体533+税
出版社:講談社
公式サイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる