才能なき漫画家はジャンプ連載とどう向き合う? 『タイムパラドクスゴーストライター』が問う“持たざる者”の生き方

才能なき漫画家はジャンプ連載とどう向き合う? 『タイムパラドクスゴーストライター』が問う“持たざる者”の生き方

 8月4日。『タイムパラドクスゴーストライター』(集英社、以下『タイパラ』)の第1巻が発売された。市真ケンジ(原作)と伊達恒大(作画)が『週刊少年ジャンプ』で連載している本作は、漫画家の佐々木哲平を主人公にした作品だ。

 物語は、佐々木のナレーションで〈「その日から俺の家の電子レンジには毎週」「10年後の「週刊少年ジャンプ」が転送されてくるようになった」〉と語られるところから始まる。

以下、ネタバレあり。

 佐々木は現在24歳。ジャンプで連載することに憧れて、持ち込みを繰り返す漫画家志望の青年だ。漫画専門学校に通っていた20歳の時に応募したマンガで新人賞の佳作を受賞。卒業後に上京しバイトと連載作家のアシスタントで食いつないでいたが、4年経っても未だにデビューできずにいた。

 佐々木は、ジャンプの担当編集者に読み切り用のネーム(マンガの絵コンテ&脚本)を見てもらう。まず担当編集者にOKをもらうことが最初の関門だが、ありがちな設定で、キャラが薄くてつまらない、普通すぎて個性がないと指摘される。一晩で書き直しても持ってきた原稿も「空っぽだわ このネーム」「なんにも詰まってないよ」とキツイ一言を浴びせられる。

 少年ジャンプとジャンプ編集部が登場する虚実の入り混じった描き方は、大場つぐみ(原作)と小畑健(漫画)がジャンプで連載した『バクマン。』を連想させる。漫画家志望の少年二人(原作&作画)がジャンプで連載を持ち、人気作家として駆け上がっていく姿を描いた『バクマン。』は、ジャンプ連載だからこそ可能なマンガ家漫画だった。『タイパラ』も『バクマン。』の手法を踏襲し、ジャンプで漫画家が連載に至るまでのプロセスを説明するが、『バクマン。』と大きく違うのは、主人公の佐々木が「才能のないからっぽの人間」であるということだ。

 打ちひしがれた佐々木が家に戻ると、突然、雷が落ち、家の電子レンジに直撃する。そして黒焦げになった電子レンジから10年後の少年ジャンプが現れる。

 佐々木はジャンプに掲載されていたアイノイツキのマンガ『ホワイトナイト』の第1話を読んで衝撃を受けるが、もう一度読もうとしたらレンジの中になかったため、夢か幻覚だと思う。しかし、興奮が止まらない佐々木は、この漫画を読み切り用のネームに直して編集部に持っていく。

 ネームは無事通過し『ホワイトナイト』は本誌に掲載。読み切りとしては異例の読者アンケート1位となり連載へとつながるのだが、その後も未来のジャンプが送られてくるため、自分は“未来の作品の盗作”をしてしまったのだと、後悔する。

 一方、17歳の藍野伊月(アイノイツキ)は、ジャンプに自分が描くはずの『ホワイトナイト』が掲載されているのを読んで驚く。その後、佐々木は『ホワイトナイト』の連載をすることとなり、なぜか佐々木のアシスタントになった藍野は新人賞に入選し、漫画家デビューを果たす。

 しかし、連載から1年後。未来からのジャンプにアイノイツキの訃報が掲載され『ホワイトナイト』が最終回となったと知らされる。そして、『ホワイトナイト』の連載を継続し、藍野を救ってほしいという、未来からのメッセージが届いたところで、第1巻は終わる。

 というのが話の流れだが、強く感じるのは、佐々木の切迫感だ。何度も登場する「空っぽ」という言葉は佐々木にとって呪いの言葉で、自分には個性とオリジナリティがないとい思っていることが、繰り返し描かれる。

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