『ミタマセキュ霊ティ』はジャンプの新たな王道ギャグ漫画となるか?

『ミタマセキュ霊ティ』はジャンプの新たな王道ギャグ漫画となるか?

 シンガーソングライターの早川義夫の作品に『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』というアルバムがあるが、鳩胸つるんの『ミタマセキュ霊ティ』(集英社)を読んでいると、このタイトルを思い出す。

 『週刊少年ジャンプ』で連載中の本作はオカルトテイストのギャグ漫画。セキュ霊(レ)ティのミタマ(御霊浄)が、生まれつき霊を引き寄せる特殊体質のハゼレナ(羽瀬玲奈)を警護するという話だ。こう書くとジャンプによくあるオカルトバトル漫画のようだが、まったく印象が違うのは、そもそもハゼレナは霊のことは見えていて、霊が後ろにびっしりと行列を作っていても、別に困ってはいないからだ(でもちょっとでも反応すると調子にのってちょっかい出してくるから無視するのが一番だと思っている)。

 逆にミタマは実は霊に対して超ビビっていて過敏に反応しすぎる。アクロバティックなアクションで飛び回って幽霊専用の武器・除霊銃を構えてポーズを決めるのだが、なかなか撃たず、やっと“泣くこと”で真の力を発揮し暴走した霊を倒すことで一話が終わる。

 つまり本作は、ミタマというヒーローのおかしさを、ツッコミ目線で眺めるギャグ漫画なのだ。

『剥き出しの白鳥』1巻

 作者の鳩胸つるんは、少年ジャンプ+で『剥き出しの白鳥』(全4巻)を連載していたギャグ漫画家だ。主人公の白鳥飛(しらとり・かける)は美少年の優等生だが、実は「ゴリゴリの露出狂」で、学校で全裸になることを生きがいにしているド変態。毎回、全裸の白鳥が生徒に正体がばれないように顔を隠して華麗なアクションで逃げ回るのだが、少女漫画における美少年の在り方、それ自体が本作ではギャグにされていた。その少女漫画テイストは『ミタマセキュ霊ティ』にも反映されている。

 古くは魔夜峰央の『パタリロ!』(白泉社)あたりがそうだが、少女漫画テイストのギャグ漫画の面白さは、カッコいい男の子をいじわるな目線で愛でながらオモチャにする楽しさをギャグにしていることではないかと思う。

 『ミタマセキュ霊ティ』のミタマは『剥き出しの白鳥』の白鳥にくらべると、少年漫画寄りで、より過去にさかのぼると日活アクションスターの小林旭が演じていた『渡り鳥シリーズ』に出てくるような存在だが「そんなカッコいいキャラが実在したらおかしいだろう!」というツッコミ目線が、最初の掴みとして効いている。

 それがつまり「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」ということなのだが、この「カッコ良さを誇張すると、めちゃくちゃカッコ悪くなって、超笑える」という視点こそが、ギャグ漫画家の鳩胸が持つ最大の武器である。

 だが、これはあくまで導入部で、話が進んでくると、ミタマとハゼレナだけでなく周囲のキャラクターの面白さも際立ってくる。特に背後霊たち。最初は全員同じ姿で顔の目と口が黒丸で描かれた不気味な存在だったが、第一話でさっそく1人(?)が解説キャラとして喋りだし、実は背後霊は喋れるけど、ハゼレナに気を使って黙っていたことが明らかになる。

 このあたりの距離感は、地下アイドルとアイドルオタクの関係を思わせるのだが、次第に背後霊たちとハゼレナとジョーがコミュニケーションをとるようになり、ある種のファミリー感が出来上がってくるのだ。

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