ギャル文化は令和にも受け継がれる 『GALS!!』が伝えるギャル魂とは?
赤メッシュが入った金髪をなびかせ、厚底ブーツで渋谷をスタスタ歩く。待ち合わせはもちろん、ハチ公前。109で買い物したら、大きなハイビスカスのストラップをつけた携帯片手に友だちと恋話に花を咲かせる……当時小学生だった私は、りぼんで連載されていた『GALS!』(藤井みほな)を読み、いつか自分も漫画に出てくる女の子たちのようなコギャルになるんだと夢見ていた。
あれから約8年、90年代後半に全盛期だったコギャルブームは2000年代になると徐々に衰退し、コギャルのバイブルだった雑誌『egg』(大洋図書)は休刊。女の子たちの眉毛はすっかり細眉から太眉になったし、ギャル文化を牽引した安室奈美恵は引退、『GALS!』に登場した憧れの恋文食堂だって閉店してしまった。ギャル文化は平成の遺産として語り継がれていくのだろうと思っていたが、近年密かにギャルの復活が囁かれている。
2018年には1990年代後半を舞台にギャル文化を描いた映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』が公開され、話題に。休刊から4年の時を経て、『egg』がWEB版として復活。芸能界でも、昔なら“ギャル男”と呼ばれたであろうお笑いコンビのEXITや、にこるん(藤田ニコル)やみちょぱこと、池田美優など令和ギャルたちが活躍している。そんなギャルブーム再来を待ち望んでいたかのように、あの『GALS!』の続編『GALS!!』(ビックリマークが2つに)が昨年11月にマンガアプリ「マンガMee」(集英社)でスタートした。
物語の中心人物となるのは、警察官の両親、兄・大和と、警察官志望の妹・沙夜を家族に持つ寿蘭(ことぶきらん)。 本編では“渋谷最強のギャル”と呼ばれる彼女が、かつては不良チーム「レジスタンス」のリーダーとして名を広めていたが、大和に保護され更生した美由、優等生のように振る舞いながらも援助交際で憂さ晴らしをしていたが、蘭から本気で叱られたことで改心した綾の2人と共に過ごす高校生活が展開される。
基本的には、ぶつかりながら絆を深めていく3人の友情。そして、“スーパー高校生グランプリ”で優勝したクールな乙幡麗と彼に初恋を捧ぐ綾や、同じコンテストで準優勝を果たし、みんなから“2位”と呼ばれる麻生裕也、“町田のブラック”として有名なギャル男・黒井達樹(タツキチ)と蘭による三角関係、美由と大和のラブラブっぷりなど、登場人物の恋愛模様もたっぷりに描かれる。
ギャグ要素も強く、子どもから大人まで楽しめる『GALS!』だが、援助交際やいじめ、子どもに大人の理想を押しつける親や教師への反発など、当時の社会問題も取り扱っているのが特徴だ。
『GALS!』が連載された90年代後半から2000年代前半は、チーマーやカラーギャングと呼ばれる不良グループがパーティー券の押し売り、おやじ狩りなどの問題行動を繰り返し、普通の女子高生が援助交際やブルセラで稼いでいた時代。渋谷もけっして治安が良いとは言えず、そこら中で不良グループ同士の喧嘩が行われていたという。そんな渋谷で生きていたコギャルに対する世間の風当たりは強く、漫画でも彼女たちを“社会のゴミ”扱いし、体罰でコントロールしようとする親や教師が描かれていた。
しかし、蘭をはじめとする多くのコギャルはただ好きな服やメイクでおしゃれし、友達や恋人と楽しい時間を過ごしていただけ。曲がったことが嫌いな蘭は大人たちからの偏見にも負けず、時には自ら社会から放り出された若者を救い、自由でパワーに溢れた渋谷を愛していた。