『ミタマセキュ霊ティ』はジャンプの新たな王道ギャグ漫画となるか?

『ミタマセキュ霊ティ』王道ギャグ漫画となるか?

 後に幽子と呼ばれる霊は、ミタマに恋をしたことで、女として実体化する力を身に着けて告白しようとする。そんな幽子とハゼレナは親友になっていくのだが、このあたりは本来の意味で少女漫画的でにんまりしてしまう。

 他にも「ぞびろ」としか言えない顔から無数の足が生えている悪霊やミタマの師匠にあたるダンディなセキュ霊ティ・ストライプさんなど個性的なキャラクターが続々と登場する。中でも一番強烈なのが第3巻で悪霊コレクター・竹之内ジャンカが召喚するデーモンゴースト。

 最初はどんな不気味な悪魔が現れるかと思っていたら、かわいい魚がオーバーオールを着た姿で登場し「あ 自分サーモンっす」と言う。つまり、デーモン(悪魔)とサーモン(鮭)を間違えたという出落ちのギャグなのだが、このサーモン(後にシャケ二郎と呼ばれる)、この後、頻繁に登場して、実はサーモン帝国を築こうという野望を秘めているとか、水に触れると造形がリアルな鮭になるといった細かい設定が出来上がっていく。おそらく作者が気に入ったのだろうが、こういう新キャラが増えていくのも本作の面白さである。

 また、ジャンプ読者なら思わず笑ってしまうバトル漫画のパロディも多いのだが、この辺りはまだ踏み込みが浅いので、いっそのことシリアスなバトル漫画に路線変更したら面白いのではないかと思う。『ウルトラマン』のパロディから生まれた『キン肉マン』を筆頭に「ギャグからシリアスへ」というのはジャンプ漫画の王道路線だ。鳩胸がシリアスなバトル漫画を描いたらどんな怪作が生まれるのだろうか? 想像するだけで笑ってしまう。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『ミタマセキュ霊ティ』(ジャンプコミックス)既刊3巻
著者:鳩胸つるん
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/mitama.html

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