電子書籍と紙の書籍、脳への影響はどう異なる? 「深い読み」を身につけるために必要なこと

電子書籍と紙の書籍、脳への影響はどう異なる? 「深い読み」を身につけるために必要なこと

 紙で文章を読む体験と、電子書籍やウェブなど画面で読む体験はどう違うのか? 理解力に差はないのか? ということを考えてみた人は多いだろう。

 字を読むこと(読字)を脳科学的に研究しているメアリアン・ウルフの『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳 「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』はまさにこういう疑問に答えてくれる本だ。

 のみならず、スマホやタブレットまみれになっている子どもは脳に悪影響はないのか? という親・大人の不安に対しても示唆を与えてくれる。

電子書籍で読むと紙より、ストーリーや本の構成の順序の理解が損なわれる

メアリアン・ウルフ『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳 「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』

 ノルウェーのアン・マンゲンらは、学生に短編小説を読んで、それについての質問に答えるように指示した。学生の半分はKindleで読み、半分はペーパーバックの本で読んだ。すると、紙の本で読んだほうが、画面で読んだ人たちよりも、小説の筋を時系列順に正しく再現できた。

 デジタルで読むと、細部の順序づけがわからなくなるのだ。なぜか? 理由はふたつある。

 ひとつは、画面で読むこと自体が斜め読み、読み飛ばし、拾い読みを促す傾向にあるからだ。画面で文字を読む「デジタル読字」では目がF字やジグザグに動くことがわかっている。文章全体をざっと見てすばやくキーワードを拾って結論をざっくりつかみ、それが自分にとって正当に感じられたときだけ、本文に戻って裏づけになる細部を選び出す。これがデジタル読字/斜め読みの特徴だ。こうすると大雑把な理解はできるが、順番を覚えることはあまりできないという。

 もうひとつの理由は、よく言われる話だが、紙の本と違って電子書籍では「だいたいこのへんに書いてあったな」という、本の物理的・空間的な位置と内容を紐付けた記憶をつくることができないからだ。位置・場所の記憶は非常に原始的なもので、言いかえるときわめて重要な能力だ。なぜなら敵がいる場所、食糧がある場所を記憶できないことは死に直結するからだ。紙の本の中身を覚えているということは空間記憶と結びつくが、平面的な画面で読書しても空間記憶と結びつかないらしい。

 とすると、なんでも画面で読む文章に置き換えるのはまずいし、紙の本を読む「深い読み」を捨てて「斜め読み」(「軽い読み」)であるデジタル読字の能力だけを身に付ければいいとは言えない、ということがわかる。

 仕事でもなんでも、手順を覚えるのはどう考えても大事だからだ。

「深い読み」と「軽い読み」を両立させる教育を

 特に問題になるのは、紙ベースの社会環境で育ってきた大人よりも、生まれたときからデジタル機器に囲まれている子どもたちだ。

 2015年のランド研究所の報告によると、3~5歳の子どもがデジタル機器に費やす時間の平均は1日4時間、0~8歳の子どもの75%がデジタル機器を利用できる。2013年には52%だったから、2010年代以降、急激にデジタルに浸かる時間が増えていることがわかる。

 アドリアナ・ブスは、アプリなどで提供されているインタラクティブなデジタル書籍(読み上げてくれる絵本アプリなど)は、やはり子どもの語彙や物語の内容を理解する能力にマイナスの影響を及ぼすことを実証している。

 さらに言えば、スマホやタブレットで子どもが触れる動画やゲームなどのアプリは、脳の新奇性中枢を刺激して報酬を与えるが「もっと見たい」「もっとやりたい」という中毒のループに陥らせるような仕掛けになっている。これは持続的な努力と注意に対する報酬を得たい前頭前皮質(「深い読み」をするためにも発達させなければならない脳の部位)にとってはマイナスだ。人間は長期的な報酬を求め、短期的なものをあきらめるよう、自分を訓練する必要がある。スマホやタブレットを使って高度な言語能力を育てることは困難だ。

 ではどうすればいいか? 40年以上前からさまざまな研究で、のちの読解力達成度のもっとも重要な予測因子のひとつは、親が子どもに読み聞かせをする量だとわかっている。昔ながらの、物理的な本を使って大人と子どもで対話しながらする読書こそが、子どもが言葉のしくみをおぼえることにとって最高のものなのだ。親が子どもに読み聞かせをしているあいだ、子どもの脳内の言語ネットワークが広範に活性化することも判明している。

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