『るろうに剣心』名悪役・志々雄真実のカリスマ性 北海道編に与えた影響を考察
『るろうに剣心』という物語は、かつて人斬りだった剣心の贖罪と新時代を生きるための答えを探す旅の物語だった。そして志々雄以外のほぼ全ての登場人物もまた、それぞれ自分の信念に対しての”答え”を探し続けていた。剣心は人誅編を経て答えをみつけ、また主要人物たちの大半もそれぞれの答えをみつけることができた。しかし、誰もが葛藤する最中、志々雄だけがまったくブレずに「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ死ぬ」という単純明快にして絶対的な答えを持って行動していたのである。その姿は十本刀たちからすれば、善悪を超越して最も魅力的な存在に映るであろうカリスマを秘めていたのではないだろうか。読者から見ても、やっていることは悪役そのものなのに、思わず共感し、魅入られてしまう力を持ったキャラクターだったはずだ。
剣心の最大の強敵である志々雄真実の存在をリトマス試験紙として、登場人物たちが再び答えを探していく物語に仕立て上げているのが北海道編である。今から北海道編を読む方々には、ぜひ一度旧作を読み返すことをオススメしたい。そして「志々雄真実」というキャラクター(と彼にまつわる人物の心の動き)をしっかりと自分の胸に焼き付けてから北海道編を読むと、何倍も楽しく、何倍も深く、物語に没頭できることだろう。
■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。
■書籍情報
『るろうに剣心 ─ 明治剣客浪漫譚 北海道編 ─(1)』
著者:和月伸宏
ストーリー協力:黒碕薫
480円(本体)+税
出版社:集英社
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