悪役令嬢ものの変化球? 『外科医エリーゼ』人気の秘密を探る

『外科医エリーゼ』は悪役令嬢ものの変化球

 現在放送中の、アニメ版『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(以下『はめふら』)が好評だ。原作はWeb小説で、「一迅社文庫アイリス」から少女小説として出版され、『月刊コミックゼロサム』でコミカライズもされている。(関連記事:アニメ版『はめふら』、原作ファンも虜にする魅力 メディアミックス成功のポイントは?

コミック版『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』1巻

 女性向け小説で人気のある「悪役令嬢もの」だが、TVアニメに進出したことで性別を超えて認知度も上がり、ジャンル自体への注目が高まっているようだ。まずはそのジャンルを築いてきた、代表的な作品を振り返ってみよう。

コミック版『悪役令嬢後宮物語』1巻

 タイトル自体に「悪役令嬢」を打ち出した『悪役令嬢後宮物語』が2012年。架空の西洋風世界を舞台に、(いわゆる「現代からの異世界転生」ではなく)「生まれつきの悪人顔のせいで悪役令嬢扱いされてしまう」主人公を登場させた。商業化の後、コミカライズもされている。

 2013年からの『謙虚、堅実をモットーに生きております!』の主人公は「少女漫画の世界の悪役令嬢に転生してしまう」という設定で、「悪役令嬢もの」と「異世界転生もの」が結び付いた人気をWeb上で長く獲得していた。

コミック版『ヤンデレ系乙女ゲーの世界に転生してしまったようです』1巻

 ちなみに『謙虚、堅実~』より少しだけ発表の早かった『ヤンデレ系乙女ゲーの世界に転生してしまったようです』は乙女ゲーム世界が舞台だが、主人公が転生するのは悪役令嬢ではなく、「ライバル令嬢」という設定。

 そして2014年に始まった『はめふら』が「乙女ゲーム世界の悪役令嬢への異世界転生」となるのだが、要するに「Web小説界のお約束が乙女ゲーム転生に持ち込まれた」のであって、「悪役令嬢が乙女ゲーム界のお約束というわけではなかった」というのは重要なポイントである。

コミック版『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』1巻

 それから『公爵令嬢の嗜み』(2015年)など、「乙女ゲーム+異世界転生+悪役令嬢もの」が定番化していくが、「乙女ゲーム」や「転生」に縛られない変わり種も出現するようになる。例えば『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』(2018年)は、現実のプレイヤーの立場から乙女ゲーム世界に干渉し、悪役令嬢ヒロインを応援するという「ひねり」が加えられている。

 さらに原作小説からのコミカライズではなく、漫画原作で悪役令嬢ものを描く作者も現れている。そこで今回紹介したいのは、『鬼滅の刃』などと並んで「ピッコマAWARD 2020」(https://piccoma.com/web/event_detail/3239)に選ばれたばかりの、『外科医エリーゼ』というWeb発のコミックだ。

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