『神之塔』は韓国の『HUNTER×HUNTER』か? あざやかな伏線と練られたゲーム

『神之塔』は韓国版『HUNTER×HUNTER』?

『HUNTER×HUNTER』脳を刺激する仕掛けとキャラクター

 『神之塔』は、塔の頂上に登ると願いが叶えられる――すべてを手に入れられる。そんな塔の頂上を目指す少女ラヘルによって、暗闇に閉じ込められて生きてきた人生から救われたと信じる少年・夜を主人公にしたアクションファンタジー作品だ。

 塔を登っていくためには『HUNTER×HUNTER』のハンター試験のようにさまざまなテストが各フロアで課せられ、それをクリアできなければならない。合格できない者は脱落し、それ以上、上には登れない存在として滞留するしかない。

 そんな塔の外部からやってきた例外的な「非選別者」――塔の内部で育った者たちからは警戒される存在――の夜は、塔で出会った仲間たち、そしてラヘルとともに塔の頂上を目指す。

 この塔は、階層ごとにがらりと様相を変える。建物の中なのに自然があったりするのは当たり前で、風景が階ごとに変わる(『魔界塔士Sa・Ga』みたい、と言っても若い人にはさっぱり通じないだろうが……)。

 その場所/地形が試験の前提条件になる。そしてそこで用意されている仕掛け/ルールをもとに、凝った試験が行われる。

 単純に「戦って倒せ」というものもあれば、知恵を働かせないと解けないものもあるし、チーム戦もある。階が進むたびに違う仕掛けやルールには「あ、そういうことを描くためのルール/システムだったのね!」と驚かされることになる。

 そうした試験を、夜の盟友となるクールで頭の切れるクン(『HUNTER×HUNTER』で言うとキルアっぽさがある)やケンカっ早いワニのラークといった魅力的なキャラクターたちが時にわーわー言い、ときに裏の顔を見せながら進めていく。

 そこにさらに謎に満ちた「塔の王ザハード」の姫同士の勢力争い、意外な人物の裏切り、非選別者である「夜」に秘められた謎……といったものが絡んでくる。

 とにかく話がめっぽうおもしろく、謎に次ぐ謎、張り巡らされた伏線が魅力だ――無料では23時間に1話しか読めず、一度読んだ話数は3日しか読み返せないというLINEマンガの仕様では気軽に読み返せないことが地獄に感じられるくらいに! だ。

 ただしキャラクターが多く、伏線も複雑なのであるていど一気読みすることをオススメしたい。読み返せる機会があるなら一から読み直すと「こんなところから伏線張ってたのかよ」と驚くことが無数にある(LINEマンガではよく冒頭50話無料とか100話無料のキャンペーンをやっている)。

 もちろん、読み返すと「あれ? ここ、これじゃまずくない?」と思う部分もないわけではなく、コメント欄で読者から突っ込まれていたりするのだが、なんとそういう箇所は今回のアニメでちゃんと補足、修正されている!!! 

 そういう意味でも今こそウェブトゥーン版とアニメ版を見比べながら楽しみたいところなのだが、この作品、もう10年も連載しているだけあってとにかく長い! アニメではおそらく物語の入り口のところまでしか描けないだろう。

 ぜひウェブトゥーン版で、アニメで放映される先の部分まで読み進めてほしい。ネタバレを避けて言うのは難しいが、衝撃の裏切りの「あと」がとにかくおもしろくなってくるからだ。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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