向田邦子の本棚に並んでいた蔵書の数々に興味津々 後藤由紀子の“愛しい日々の読書”第3回

『向田邦子の本棚』後藤由紀子書評

向田邦子の人生を表現したような本棚

 「大きくなったら本屋さんのオヨメさんになる」と言っていたほどの本好きの少女が、納戸でこっそり読んでいた漱石全集や主婦之友。書く側になってからの同時代の小説・古典・社会派から、趣味の骨董・アート・旅・動物などたくさんの所蔵本が紹介されています。

 私は、ビジネスセンスのある人よりも、文化度の高い人が好きです。直接関係ない仕事をしていても話をしていても、こればかりは自然ににじみ出てきてしまうものなのかもしれません。

 そんな蔵書の中でも食に関する本は圧巻! 食いしん坊に贈る100冊の本のページは順番に探したいものばかりで、時代背景的にも絶版になっているものもあるので、古書街に通いたい衝動にかられました。

 古本と言えば私の友人に「ゆきちゃんが好きそうな本を見つけたから」と、さりげなく古本をプレゼントしてくれる人がいます。しょっちゅう会うというわけでもないのに、思い出してくれたことが何ともうれしいわけで、古本というのもさらっと気軽。初めて手にする作家もいたり、いろいろ教えてもらっています。

 真似してほかの友達に贈っていますが、私はそれほど本に詳しくないので、彼のようにセンスあふれる本を選ぶことができなくて残念な感じです……。

 この本に出てくる登場人物も興味深いです。久世光彦、イーデスハンソン、中川一政、山田太一、阿久悠、倉本聰などなど。後半にある藤久ミネとの対談「テレビドラマの中の家族像」も面白かったです。表面は愉快ドラマに見えるけれど、毒を一滴入れたいとか、声なき少数派とか、イワシ団子の話とか。

 上澄みのきれいなところだけうっすらと描くのではなく、心の奥底をじっくりととらえる向田さんならではの表現にグッときます。そんな先人の存在は財産ですね。また改めて向田作品を読み返してみようと思います。

■後藤由紀子(ごとう・ゆきこ)
1968年静岡県生まれ。静岡県沼津市の雑貨店「hal(ハル)」店主。庭師の夫、長男と長女の4人家族。センスの良い暮らしぶりが雑誌などで人気。著書に『50歳からのおしゃれを探して』『おとな時間を重ねる 毎日が楽しくなる50のヒント』『毎日続くお母さん仕事』『日々のものさし100』など、暮らしまわりにまつわる著書多数。

■書籍情報
『向田邦子の本棚』
向田邦子 著
価格:本体1,800円+税
出版社:河出書房新社
公式サイト

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