『ゴールデンカムイ』アシリパさんの衝撃料理はなぜ美味そう? 愛すべきヒロイン像を考察
作品内でのアシリパの必要性
残酷な真実や殺人、奇妙な人物が多い世界で、淀みのないアシリパの存在は非常に心が洗われると言えよう。真っ直ぐさだけでなく、時々子供らしい一面を見せてくれるのも愛らしいポイント。杉元の所持している味噌を「オソマ」(アイヌ語でう〇このこと)と言って騒ぐ姿もまたキュートである。
そしてゴールデンカムイ名物、アシリパのアイヌ知識&お料理シーンも忘れてはならない。リスの皮を剥がしてチタタプにして食べる、カワウソを煮込んで食べるなど衝撃的な場面も多いが、手際良く調理し、読者の「うまそ~」を誘うのもアシリパマジックだろう。しかしながらどんなに彼女が魅力的で愛らしいキャラクターでも、“珍味”に関してはいつまでも理解が難しく、困惑してしまうのだが。
現在発売中の最新20巻では、樺太のストーリーがひとまず終了。前巻に引き続きソフィアの様子が描かれ、新キャラクターも登場する。物語は新局面へと向かうのだ。19巻にて再会を果たした杉元とアシリパはお互いの道を確かめ合い、見事に“相棒の契約更新”をする。二人の恋愛のような、家族のような、不思議な関係性に思わずドキドキさせられてしまう。どんなに離れてしまっても、アシリパと杉元の心の繋がりはそう簡単に切れるものではないのだろう。
あまり今巻でアシリパの出番は多くないのだが、登場が少ないながらもしっかりと名言を残しているのも印象的。ネタバレを避けるために詳しい記述はあえて控えるが、「悪い事をするやつは、自分を見られるのが怖い」これの意味は誰を指すのか? 常に冷静で周りを見渡せる、どんな逆境にも立ち向かってきたからこそ飛び出した言葉だろう。
彼女の発言の真意は何なのか? 物語はどのように進んでいくのか? 最新20巻を読むことでよりアシリパという人間の深さを知ることが出来るはず。アシリパが目的を果たし、いつかは「ヒンナ ヒンナ」と穏やかに食事ができますよう――。彼女の力強い背中を最後までしっかりと見届けたい。
■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。
■書籍情報
『ゴールデンカムイ』20巻
野田サトル 著
価格:540円+税
出版社:集英社
公式サイト