ホストが“人生最大の失恋”綴る異例のZINE『失恋ホスト』 九龍ジョーとホストたちが語る、制作の狙い

ホストが“人生最大の失恋”綴る異例のZINE『失恋ホスト』 九龍ジョーとホストたちが語る、制作の狙い

「今は『人に愛されないと稼げない』」(レオ)

――九龍さん自身、編集者・ライターとして色んなジャンルについて原稿を書いたり、様々なカルチャーに関わっていますが、ホストの分野とシナジーが起こりそうな分野はありますか?

九龍:シナジーか……僕はいま「若き藝能者たち」っていう連載をやっているんですけど、ホストの存在もまた、江戸時代の歌舞伎役者のような“藝能者”だと思っていて。昔の芝居小屋も、やれ贅沢だとか悪所だとか言われながらも、「この人を見てるだけで何か元気が出る」という感じで庶民も熱狂する。さらにさかのぼれば、役者が個別に客をとっていたようなことだってあるわけです。ホストって、そういう職能の最先端にいる人たちだと思うんですよね。だから実はとても歴史あるものだし、「目の前にいる人を魅了して喜んでもらう」っていう意味では、あらゆるエンタメにも関係するんじゃないでしょうか。

――たしかに、そして一番難しいことでもある。

九龍:そうなんですよ。しかも、この人たちがやってるのは「目の前にいるただ一人を徹底的に満足させる」ことなんですよね。普通に飲みにいくよりは多少高い値段ですけど、人生の活力のようなものを与えるエンタメという側面もある。ただ、そこをわりきって「エンタメです」ってなるのも、僕はちょっと違和感があって。そこから漏れる危うさやリスクも、歌舞伎町にかぎらず夜の街で遊ぶときの魅力の一部を成していると思うんです。もちろん安全なほうがいいですけど、そういう、グレーな部分もすべてクリアにしていく方向性になっていくと、こういう場所でしか発露したり吸収されえない人間の持つ根源的な危うさとかはどこへ行くんだろう、という興味があります。

――法律が変わったり、街の再開発が具体的に形になってきたここ数年で、空気感はより変わっています。

九龍:ドラマでも薬物で捕まった人が出てるシーンは放送できないとか、本来、人間というものは弱くてミスをするけど、でも反省して更生することもできるっていうセーフティネットを全否定じゃないですか。でもどんなに放送のなかや、表側だけをクリーンに取り繕っても、中身は隠せないんですよ。ホストの接客も同じで。はっきり言うと、ホストの世界も、短期的に売ることを意識しすぎて、本人もお客様も酷いことになるケースがままあるんです。でも、group BJの皆さんは、そのへん、ちゃんと “少し狂った”魅力を持ちつつ(笑)、セルフコントロールが抜群に上手いし、商売としてのサステイナビリティも考えている。

レオ:僕も時代の移り変わりを見てきましたが、初めて歌舞伎町に来たときは「すごく怖い街だけど、女性に愛されたら稼げる」ということを教わったんです。でも、今は「人に愛されないと稼げない」という概念に変わってきている気がして。お客様も、同じような職業をしている方が対象だったのが、一般のOLさんや学生さんも来ていただけるようになって、アンダーグラウンドの世界から浮上していってるのを身をもって体感しているんです。そんななかで、ヒカル社長を筆頭に色々な意識改革や社会活動をやってもらっていて、自分たちのことも「プロ男子」と自称するようになって、外見だけじゃなく内面もカッコいい人を目指すようになって。会社としても、どこよりもコンプライアンスに厳しくしていますし、そうすることでこの街も安全になるし、マーケットとしても色々なところから人が流れ込んできて、カルチャーとして面白いものになる気がします。

ヒカル:なぜか、考え方がお金に直結しないんですよね。

――それこそ、短絡的にお金に結びつけている人から破滅していってる気はします。

レオ:そうだと思いますよ。目先の利益に囚われて、溺れていってしまう人は多いです。でも、二手三手先を考えていかないと、ちょっと売れてもすぐダメになったり、「A店はいいよ、B店はこんな感じ」みたいに誘われて流れていってしまったり。ただ、間違いなく言えるのは、うちに残っている子は真っすぐで正直で、モテ方を知ってると思います。

九龍:パーソナルな部分をどこまで出す、出さないの判断って、他の店やグループって実際どうなんですか?

レオ:導いているわけではないですが、生き残っていく人は必然的にそうなっていく気はしますと。人間にモテなきゃ意味ないし、表と裏で言ってることが違う人は同性にもモテないし、女性にも支持されないですから。

――そうやって周りにいる人が徹底していれば、適性のある人はどんどん成長するし、合わない人は離れていくわけですよね。

レオ:そうです。

九龍:とはいえ、そんなことないじゃない? みたいな意地悪な目で初めは僕も見ていたんですど、本気なので驚きましたよ。印象的な話があるんですけど、この人たち、赤信号を渡らないんですよ(笑)。区役所通りなんて、車はゆっくりだし、そもそも車道にタクシーが列をなしていて、信号なんてあってなきがごとしみたいなゾーンもあるんですが、車がいなくても絶対に横断歩道まで行って、青信号を渡るんです。

レオ・ヒカル・YU-MA:(笑)。

九龍:それにしても失恋の話なんて書いても、目先に何かいいことがあるわけじゃないし、何ならデメリットの方が多いかもしれない(笑)。なのに、それができるっていうのは、「これを出しても、自分たちの仕事は何も揺るがない」ってことなんですよ。むしろそれが自分たちの魅力をより高めるという確信もあるのかもしれない。

レオ:そこはどうなんでしょう(笑)。

九龍:たしかに。出してみたら、案外、「やらなきゃよかった!」って全員言い出す可能性もまだゼロではないという(笑)。

ヒカル:でも、どうせ出すからには、多くの人に読んでもらいたいですね!

(取材・文=中村拓海/撮影=富田一也)

■書籍情報
『失恋ホスト HEART BREAK HOST』
発行:group BJ
責任編集:九龍ジョー
デザイン:OCTAVE

<販売>
『第二十九回文学フリマ東京』
出店名:group BJ
日程:2019年11月24日(日)11:00〜
場所:東京流通センター
B6判/128ページ
価格:1000円
group BJ公式HP

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