『婚活迷子、お助けします。 仲人・結城華音の縁結び手帳』番外編
同棲中の男性の8割は結婚する気なし? 伝説の結婚相談所『結婚物語。』所長が語る、婚活のリアル
連載中の小説『婚活迷子、お助けします。 仲人・結城華音の縁結び手帳』。著者の橘ももが、小説を書くきっかけとなったのは、兵庫に実在する結婚相談所『結婚物語。』のブログを読んだこと。そこで連載開始にあたって、所長の苅谷昌浩氏にインタビュー! 結婚相談所の裏側を教えていただきました。(橘もも)
『婚活迷子、お助けします。 仲人・結城華音の縁結び手帳』第1話
『婚活迷子、お助けします。 仲人・結城華音の縁結び手帳』第2話
仲人さんを介す結婚相談所を利用するメリットとは
――アプリやネットで手軽に婚活できる今、初期費用がかかる結婚相談所に対しては、ハードルが高いと感じる人もいると思います。「そこまで焦ってると思われたくない」「自然に出会いたい」という人も多いでしょうし。
苅谷:その気持ちはとてもよくわかります。ただ、アプリ婚活の目的はあくまでも“出会い”であって、結婚ではないんですよ。出会った幸せの延長に結婚があるかもしれないけれど、願望の強さには個人差がある。口では結婚したいと言うけど実はそれほどでもない、とりあえず出会いたいということしか考えてない、という人としか巡り合えない可能性も高い。それをふまえた上で利用されるなら全然構わないと思うのですが……。
――結婚の優先度が高い人には、効率が悪そうですね。
苅谷:そうなんです。結婚相談所は「結婚したいです。10万円、20万円、30万円払ってでも結婚相手探したいです」という人同士のお見合いですから。だから、値段がいくらであろうと、本気の人は入会します。たとえば、車が欲しいと思ったとき「コンビニくらいしか行かないから1万円の中古車でいい」のか、「3000万円出してでも新品のフェラーリに乗りたい」のかで、思い入れは違うでしょう。やっぱり、かけるお金に真剣さは比例するんです。
――なるほど……。
苅谷:僕らにとっても同じで、100万円の入会金なら、一人に対して100万円分のサポートを存分にできるけれど、1万円の入会金なら同じだけ稼ぐのに100人集めなくてはいけなくて、そうすると一人ひとりに対してかけられる時間と手間も変わってきます。だから、ご自身の希望の強さと予算をかんがみて、自分にあった方法を選ぶのがいいと思います。結婚相談所によって金額も異なるし、仲人さんとの相性もありますから、「この人と一緒ならがんばれそう」「これくらいの値段なら払えそう」というふうに。ただ、繰り返しになりますが、結婚したいという意志が固い方にはアプリやネットではなく、結婚相談所をおすすめします。というのも、アプリとはまた別に、婚活サイトがあるでしょう? あれを僕たちは「結婚情報サービス」と呼んでいて。
――結婚相談所とは違うんですか。
苅谷:アプリよりはお金がかかることもありますし、そのぶん真剣度の高い方は多いと思います。ただ結婚情報サービスは、「結婚したいと言っている人を紹介しますから、あとはご自身で進めてください」というスタイルなんです。だから恋人同士になるも、実際に結婚まで話を進めるのも自分次第。対して結婚相談所は「結婚したいと言っている人とともに、婚活に必要な情報をご紹介します。だから一緒に探しましょう。結婚が確定するまで頑張りましょう」というスタイル。だから僕たち「結婚物語。」は、プロポーズはもちろん、婚姻届を出すところまでサポートします。
同棲した男性で結婚するつもりがあるのは20%!?
――えっ。婚姻届を出すところまで、ですか。
苅谷:はい。あのね、結婚を確約する前に同棲するカップル、多いでしょう。で、同棲したはいいけど男性側がなかなかプロポーズしなくて、疑似結婚状態になってしまうっていう。まず言っておきますが、同棲する男性で本気で結婚するつもりがあるのは20%くらいです。
――20%!?
苅谷:だってするつもりがあるなら、最初に結婚しているもの。もちろんね、一緒に住んでみてうまくやれるかどうかを試したい、というのはよくわかるし、場合によっては必要なことだとも思います。ただ、統計として「男性にプロポーズされたい」という女性は圧倒的に多いし、それを待ってしまうと、男性の都合にあわせなくてはいけなくなってくる。で、残念なことに男性にとっては、同棲状態でいるほうが楽なんですよ。よく言うのは「今のままでも十分だし、結婚してもしなくても何も変わらなくない?」っていう。
――ああー……よく聞きます……。
苅谷:男性側にもやっぱり「結婚したら養わなきゃ」みたいな意識がまだまだ残っていますからね。なんだかとても重いように見える責任だけが発生してしまうんですよ。だったら同棲がいちばん気楽。で、まあ、結婚相談所で本交際(結婚に向けた本気の交際で、並行して他の人と会うことはできなくなる)が決まったあとも、やっぱりなかなかプロポーズできない男性は多くて。そういう人たちに僕らが「女性はこういうことを求めています」「必要な手順はだいたいこれ」というようなことを伝えるわけです。相手の仲人さんから、要望をそれとなく聞くことだってできるしね。
――なるほど。それは確かに仲人さんがついていないとできないことですね。でも、そこで終わりじゃないんですか?
苅谷:婚約したあとで揉めるカップルって、けっこういるんですよ。たとえば両家顔合わせ、式場を決めるとき、結婚式の準備。
――あ、ありそう……。長く付き合っていたとしても、起こりうることですね。
苅谷:相談所で結婚を決めるカップルは、出会いから間もないので、意見を言うことにそもそも遠慮があることが多いですからね。たとえば、結婚したあとにどちらがお財布を握るのかで話が難航しているから、彼と一緒に話してほしいという会員の女性もいます。もちろん、彼女がうちの会員だからといってやみくもに味方するわけではなく、男性側にもどんな家庭が理想なのか、彼女はこういう希望を出しているけど何が引っかかるのか、逆に何ならこだわりなく手放せるのか、というふうに、客観的に話を聞く。彼女にも同じことをして、二人のわだかまりをほどいていく。あんがい、第三者を挟むだけで冷静に話し合えることはありますから。
――わだかまりがほどけず、決裂することはないんですか。
苅谷:もちろんありますよ。でも、入籍していなければ引き返すのも簡単ですから。でも、婚約したあとで「なんか違う」「なんかおかしい」と違和感を抱いたとしても、いちばん身近な家族や友人にこそ言いだせないもの。だけど僕ら仲人には打ち明けられることってありますし、「これを逃したら次はないかもしれない」という想いに対しても「大丈夫! またいい人探すから!」と言うことができる。僕たちはただ、会員のみなさんに納得のいく幸せな結婚をしてほしいだけ。だからそこにたどりつくまでは、全力で力になりたいんです。