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怪異蒐集家・中山市朗が語る、“幽霊が出てこない”怪談の怖さ「みんな、どこかで身に覚えもある」

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 『新耳袋』シリーズ(KADOKAWA)で、怪談・ オカルトファンから絶大な支持を得た怪異蒐集家・中山市朗。新刊『怪談狩り あの子はだあれ?』(KADOKAWA)には、 山道に佇む白無垢の花嫁、22階の高層マンションから落ちていく男性、ガソリン・スタンドに現われる子どもの謎、 旅館の部屋に敷き詰められた真っ赤な椿など、中山市朗が直接聞き集めた76話にも及ぶ怪談話が収録されている 。

 しかし、これはただの怪談集ではない。この本には「幽霊が出てこない」のだ。幽霊が出てこないからこそ、話のリアリティに身の毛がよだつ。だれもが、「そう言えば同じようなことがあった」、「あれはこういうことだったのかな?」と思わずにはいられない怖さがあるのだ。本作に中山氏が本書に込めたメッセージ、そして実話怪談の魅力について話を訊いた。

オチのない怖さ

――本書を読んでいると、怪談的なオチがなかったり、 素人ならではの怖さを感じました。 そういう怖さは意識したんですか?

中山市朗(以下、中山):『新耳袋』 シリーズをやっていたときから、「オチ」に関しては意識していました。それまでの怪談っていうのは、やっぱりオチがあるんですよ。調べてみたら墓地だったとか、なにかの祟りだったとか。ひどいのになりますとね、その人は呪い殺されているのに、呪い殺された描写が延々とあったり。「それだれが伝えたん?」ってなるでしょ(笑)。それが怪談としてまかり通ってたんですけど、 さすがにそれは違うやろと。

――それは違いますね(笑)。 実際は不思議なまま終わることの方が多いと。

中山:恐怖ドラマとかホラー小説だったら、 霊能者に見てもらって「ここ昔、墓場でしたね」って言われたら、家を引っ越していくとなるんですよ。でも実話だと「家でこんなことあったんです」って言われて、「で、引っ越されたんですか?」って聞くと、「いや、まだそこにいてます」となる。「なんでですか?」と聞くと、「引っ越しめんどくさいし、お金かかるじゃないですか」っていうことになるんですよ(笑)。その程度のちょっとした不思議を集めただけなんだけど、それが76話も重なるから怖い。みんな、どこかで身に覚えもあるしね。

――収録されている、おじさんが傘を持って浮いている「メリーポピンズ」の話とか、怪談ぽくはないですよね。

中山:メリーポピンズね(笑)。訳わかんないでしょ? あんなもんはね、昔は怪談にならなかった。「それなに?」で終わってた話。「メリーポピンズおったんや、おっさんやんの」って(笑)。僕は落語が好きなんですけども、そういう笑えるところは通じるところがありますね。

――確かに落語にも怖い話があります。

中山:そうそう。怪談っていうのは、ちょっと笑っちゃうような話だとか、じーんとくる話だとか、ご先祖様が守ってくれたんだっていう話もあったりする中で、「やっぱり怪談は怖い」っていうのにも、ちゃんと応えてあげないといけない。怖い話はうまいタイミングで挟み込んでいって、最後は恐怖で終わらせるっていうことはします。話の最後がメリーポピンズだったら、ダメでしょ? 途中だからいいんですよ。

――年齢によっても、怪談のとらえ方が違いますよね。自分の祖母の代なんかは、祟りとかそういうものに対してすごく神経質で、 現代の人とまったく違います。

中山:年の功というかね。生活の知恵であったりだとか、神信心であったりだとか、その人のキャラなんですよ。その人の中で怪のとらえ方が違う。おばあちゃんとお孫さんが同じ怪を目撃しても、おばあちゃんが見る怪と孫が見る怪は違ったり。孫の見る怪は純粋で、おばあちゃんは「何々を大事にせえへんかったから罰が当たってんねやわ」って。それもひとつの怪なんですね。

――たしかにそれはあるかもしれないですね。おじいちゃんおばあちゃんたちって、若い子にそういう話をするんですかね?

中山:いま、核家族になってるでしょ? だからおじいちゃんおばあちゃんからそういう話を聞かないんじゃないのかな。僕も怪談のライブをやったりするじゃないですか。「怪談どうですか?」って言うと、「怪談を子どもに聞かせるのが嫌」っていう親がいるんですよ。あと怪談ライブというのを、みなさん知らない。「来てください」と呼びかけると、「怪談って怖いんですか?」っていうので「怖いです」というと、「怖いんだったら聞きたくない」って……。逆に「そんなに怖くないですよ」と言うと、「怖くないのに怪談なの!? 」とも言われるし(笑)。そこは本当に難しいですね。

      

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