『みんなで筋肉体操』筋肉指導・谷本道哉が語る、“市場に媚びない”フィットネスのススメ

『みんなで筋肉体操』谷本道哉インタビュー

 2018年夏、深夜。NHKで放送された5分番組『みんなで筋肉体操』。「筋肉は裏切らない」というキャッチフレーズと、俳優・武田真治を始めとするイケメンマッチョ集団がひたすら筋トレをするという、まさに「ストイック」な番組内容に開始直後からSNSなどで話題になり、何度も再放送されることに。その番組がDVDを付属して書籍化され、大いに話題となっている。著者であり番組の筋肉指導を行っている谷本道哉氏に『みんなで筋肉体操』がどのように生まれたのか、そして書籍のコンセプトやフィットネス市場に対する意見まで話を聞いた。

NHK『みんなの筋肉体操』出版イベント中の筋肉指導・谷本道哉氏(右)と植木職人・村雨辰剛氏(左)

フィットネス市場の現状

――本書のプロローグで、すぐにトレーニングに入るのではなく、筋トレに対する姿勢や生理学的な理論について語られているのが印象的でした。

谷本:取り組む姿勢、そして僕らが番組を作るときの姿勢を書きました。根拠に基づくものでなければいけなので、生理学的な説明も入れました。「自重トレーニングは素人向け」「バーベルトレーニングなどに比べて効果は落ちる」というイメージに対して、工夫すればそんなことはまったくないというのを、まず理論とエビデンスからきちんと説明したかった。そして、そういった考えをぶち破れたら、自重トレーニングはどこでもできるので、効果的な「みんなの筋トレ」になるだろうということを、最初に言いたかったです。決意表明ですかね。

――本の中では、レベルダウンしたトレーニングも掲載されていますが、テレビで放送されたものはとてもレベルが高いと思います。それが一般的に支持された理由を、どのように分析していますか?

谷本:今まで出版やテレビなどでは「楽をして変われる」という、市場に媚びたものが大量に出回る状況が続いていました。夜中の通販番組などがいい例ですが、それに対して消費者も「やっぱり効かなかった」と、特に憤ることもなく受け入れてきていました。でも、やっぱり違うよね? という認識がどこかであったはずなんです。そこで出てきたのがRIZAP。RIZAPは真剣に、もの凄く厳しい食事制限、そしてきっちりと筋トレをする。変わるには、それくらいのことをしないと無理だよという考えが浸透し始めました。いかにして厳しく追い込むかという、僕らの筋肉体操が受け入れられる土壌ができていたのかもしれないです。

――5分という短い時間も衝撃的でした。

谷本:それも大きいと思います。「たった5分でこんなに効くじゃん!」「次の日、歩けないじゃん!」「腕が上がんないじゃん!」というリアクションが多くて、とても喜ばしい状況だと思います。

――ずっとフィットネス市場に違和感を感じていたんですね。

谷本:書店のフィットネス本のコーナーなんて正直、見ていられないですよ(笑)。僕はこれまで何十冊も本を書いてきたけど、タイトルとカバーは、なかなか思い通りにならないんです。編集は「いかに楽をして……」というタイトル案を出してくるので、こちらとしては「そこまでは言わないで下さい」という「戦い」のなかでの折り合いをつけてきました。もちろん、それがすべて“悪”ということはないんです。やや甘い言葉で運動の世界に引き込むためのセリフとしては、意義はあると思います。読んでいただければ、「しっかりやれ」と僕の本には書いてあるので。

――きっかけとしては悪くないと。

谷本:もちろんそうです。だけどほとんどのものは、中身も楽をして終わるというものばかり。この書籍はタイトルでの編集者さんとの戦いもなく、もの凄く気持ちよく書けました(笑)。これを読んで、5分だから楽なんて言う人はいないですから。“どれだけ短い時間で追い込むか”というメソッドだと知っている上で、お買い上げいただくと思うので。フィットネス市場には「もういい加減、そういう媚びたマーケティングはしなくていいんじゃないですか?」と言いたいです。これがきっかけでテレビや出版社側のリテラシーが変わればいいと思っています。そして買う側の姿勢も変わってほしいです。

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