アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る(4)TVアニメ/劇場版『AIR』“国歌”「鳥の詩」、今なお響き続ける普遍の名曲

 2005年はアニソンシーンにおける大きな転換点であった。この年の中でも強い印象を残した作品として、TVアニメ/劇場版アニメが公開された『AIR』がその1つと言えるだろう。OPテーマ「鳥の詩」はアニソンの歴史に燦然と輝く不朽の名曲であると同時に、インターネットでは“国歌”と呼ばれている特別な意味合いを持った楽曲でもある。まさにアニソンの新しいカルチャーを築いた作品であり、本連載「アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る」でも欠かすことができない意義を持つ。今回は、この『AIR』と「鳥の詩」が起こした“革新”について語っていきたいと思う。

 ただ、この作品について語るには20年前にあたる2005年だけではなく、その前史についても振り返らなければならない。そもそも『AIR』は2000年9月8日に発売されたPC版の恋愛アドベンチャーゲーム“、いわゆる美少女ゲーム”である。「鳥の詩」はアニソンとしてではなく、美少女ゲームの主題歌として登場したというところにまず特異性があるのだ。

 『AIR』はビジュアルアーツのゲームブランド・Keyの第2作としてリリースされた作品で、ある海辺の田舎町を舞台に主人公・国崎往人と神尾観鈴らヒロインとの出会いが描かれている。Keyのデビュー作『Kanon』が“小さな奇跡の物語”と形容されるのに対して、本作はヒロインである観鈴が辿る壮絶な運命を描いたスケールの大きい世界観の作品であった。『Kanon』で確立された“泣きゲー”と呼ばれるジャンルから明らかに深化しており、後のKey作品である『CLANNAD』などで描かれる“人生観”にも通底するものがある。

『AIR』 オープニングムービー (高解像度)

 『Kanon』に続いて大ヒットを記録した『AIR』は、2001年には家庭用ゲーム機・ドリームキャストに移植。さらに多くのファンを獲得して、2005年1月から京都アニメーション(以下、京アニ)がアニメーション制作を手がけたTVアニメが放送された。なお、このTVアニメは“京アニ版”と呼ばれている。また、2005年2月5日には劇場版アニメが公開。この“劇場版”はアニメ界の巨匠・出﨑統が監督を務めており、監督の作家性が強く出た作品となっている。

 こうして振り返ると『AIR』や「鳥の詩」はPCゲームから出発して、メディアミックスによって順調に高い人気と知名度を獲得したように思える。だが実のところ、話はそこまで単純ではない。そもそも「鳥の詩」という楽曲が誕生した経緯も複雑なのだ。

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