ELSEE、グループとして“一線を画した個性” MONJOE、Giga & TeddyLoid……気鋭のクリエイターと確立するコンセプト

「また新しいガールズグループ?」――そんな言葉が頭をよぎったのは一瞬のことだった。直後、YouTubeにアップされたMVとパフォーマンスビデオを観て、目が釘づけになった。余計な装飾のないスタジオに響く、弾むようなビート。その上をしなやかに、時には鋭く走る5人のダンス。名前も顔もまだ知らないのに、動画を視聴するごとに、ただひたすら彼女たちのコンセプトと音楽性に惹きつけられた。
彼女たちの名前はELSEE(エルシー)。AKARI、KARIN、NANAMI、PONO、HINAからなる5人組ガールズグループだ。ELSEEはオーディション番組などを介さず、それぞれが異なるバックグラウンドを持って結成された。つまり、“物語”の始まりはまだこれから。しかし、彼女たちにはすでに強固な“らしさ”が存在している。その1つが、「世界一不幸じゃないけど、特別幸せでもない。街のどこにでもいるそんな彼女たち=“ELLE & SHE”の胸にある想いを切り取る。私はあなた、あなたは私。」という想いが込められたコンセプト「I’m you, You’re me. for ELLE & SHE」だ。
今やオーディション番組発のグループ/アーティストは多く存在するが、一方で、ELSEEはその流れとは一線を画す存在だ。メンバーはそれぞれが自分のルートで表現活動に取り組み、別々のキャリアを歩んできた。なかでもAKARIの名を見て「おっ」と思った人も多いだろう。彼女は2020年に話題を呼んだオーディション番組『Nizi Project』に出演し、印象的な存在感を放っていた。あれから5年、静かに自身を磨き、グループとしての再出発を果たしたその姿は、ファンにとっても待ち望んだものではないだろうか。他のメンバーたちも、長年ダンスを続けてきた者、ずっとアーティストを志してきた者、それぞれが異なるルーツを持ち寄っている(現にKARINは、『TOP OF THE DANCE』『SHOW STOPPER JAPAN』など数々のダンス大会にソロ参加。2022年の『Soulm8 Final』では全国1位に輝いた実績を持つ)。そしてそれが、ELSEEというグループならではの“深み”に繋がっているのだと思う。
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ELSEEは、漠然としたもやもやや不安を抱く10代〜20代の女性に宛てて、女性目線で共感を呼ぶ歌詞やメロディを歌う。それは、彼女たち自身もこれまで漠然とした不安を抱え、傷つきながら前に進んできた当事者だから。そんな経験を持つ5人だからこそ、現代の人々と共感し合いながら、その心の機微を、音楽という形で表現していくことができるのだろう。
昨年9月27日に配信リリースされた1stソング「POW POW」は、Ado「踊」「唱」に代表されるヒットメーカーのプロデューサータッグ、Giga & TeddyLoidによるサウンドメイク。ボカロPとしても知られるGigaとDJの顔を持つTeddyLoidならではのサウンドが楽曲全体を駆け巡る、サビの〈POW POW〉での盛り上がりが特徴的な1曲だ。ビートや展開の妙がオリジナリティを演出していると同時に、Stray KidsやBE:FIRST、三代目 J SOUL BROTHERSなどダンス力が高く評価されている男性グループのコレオグラフを手掛けるKAZtheFIREによる振付も見どころだ。KAZtheFIREにとって初の女性グループへの振付提供となった本作は、5人のダンスの緻密さと身体表現の説得力が際立ち、静と動の見事なコントラストを堪能できる楽曲となっている。
続く「Reset ≠ Reboot」(1月15日リリース)は一転、内省的なムードが漂うナンバー。大好きで、大嫌いで、拒絶したくて、忘れたくて、忘れられなくて、苦しくても永遠に手放せない――そんな矛盾をも孕む強い想いを歌うことで、失恋をテーマに1人の女性の心の機微を描いた1曲だという。「水死体は恋したい」などボカロPとして数々のヒット曲を生み出し、独特なワードセンスで異彩を放つLonePiが作詞している「Reset ≠ Reboot」は、関係を全てゼロにすることを“Reset”、もう一度やり直し関係を再起動させることを“Reboot”になぞらえて表現しており、過去をなかったことにするのではなく、抱えながら前に進む意思が感じられる。メロディの切なさと浮遊感が、ELSEEという存在の強さの“内側”にある揺らぎを映し出しているようにも思う。近年のJ-POPシーンにおいては、海外進出などを視野に入れ、現地のトレンドを取り入れるために欧米の音楽プロデューサーをクレジットすることも増えているが、ELSEEにおいては、TeddyLoidやGiga、LonePiらを中心に、ボーカロイドシーンなど日本ならではの音楽文化を支えるクリエイターがサウンドクリエイティブを担っている点が、独自の個性を生んでいるのだ。



























