アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る(3)シリーズに継承される「DANZEN! ふたりはプリキュア」、影響力と魅力を再考

 アニメソング/アニメ音楽の歴史において大きな転換期となった2005年のシーンを振り返りつつ、その功績や現代アニソンへの影響を紐解くシリーズ連載企画『アニソン20年の軌跡:シーンの変遷を辿る』。今回は2024年に20周年のアニバーサリーイヤーを迎え、今も多くの子供たちの憧れであり続けている『プリキュア』シリーズを取り上げる。

 『プリキュア』シリーズの第1作『ふたりはプリキュア』の放送が開始したのは2004年2月1日。女児向けアニメの定番である“変身ヒロイン”もののフォーマットをベースにしつつ、かわいさのみならず凛々しさや力強さが感じられるキャラクターデザイン、魔法や道具を用いるのではなく素手による肉弾戦を中心としたアクションシーン、タイトルに『ふたり』と冠されているように主人公ふたりの友情を軸にした“バディ”ものとしての見せ方を強調したストーリーなど、「女の子だって暴れたい」をコンセプトに掲げて従来の“ヒロイン”型ではなく、“かっこよくてかわいいヒーロー像”を打ち出した本作は、子供たちの心を掴んで記録的なヒットとなった。

【公式】『ふたりはプリキュア』キュアブラック、キュアホワイト変身シーン【フルver】

 そんな状況の中、いまから20年前の2005年2月6日に放送スタートしたのがシリーズ第2作『ふたりはプリキュアMax Heart』。主人公は第1作に続き、キュアブラックこと美墨なぎさ(CV:本名陽子)とキュアホワイトこと雪城ほのか(CV:ゆかな)で、そこにもうひとりの戦士・シャイニールミナスこと九条ひかり(CV:田中理恵)が加わることで、華やかさが増しただけでなく物語にもさらなる奥行きが生まれ、シリーズの人気を盤石のものとした。

 『プリキュア』シリーズの祖と言うべきこの2作品のオープニングを飾った楽曲が、五條真由美が歌う「DANZEN! ふたりはプリキュア」だ(第2作では歌詞やアレンジを改めた「「DANZEN! ふたりはプリキュア (Ver. Max Heart)」を使用)。作詞はその後も数多くの『プリキュア』楽曲を手掛けることとなる青木久美子、作曲は小杉保夫、編曲は同アニメの劇伴も担当した佐藤直紀。オーケストラヒットによる勇ましい幕開けから、〈プリキュア〉というワードを繰り返し連呼する冒頭部分のインパクトたるや凄まじく、小さな子供でも一発で覚えて歌いたくなるようなキャッチーさがある。さらに主人公のひとり・なぎさの口癖を引用した〈ぶっちゃけありえない!!〉といった作品とリンクするフレーズも入れながら、ユーモラスでポジティブなエネルギーに満ち溢れた歌詞、快活なメロディとそれを引き立てる管弦楽器をふんだんに入れたゴージャスなアレンジ、五條のはつらつとした歌声。あらゆる点において聴く者に元気を与えてくれる、華やかでヒロイックな楽曲になっている。

 後のシリーズを含めた『プリキュア』楽曲、特にオープニング主題歌においては、常に前向きで夢や希望を感じさせる真っ直ぐなメッセージが込められており、それが子供だけでなく(かつてプリキュアを観ていた世代を含む)大人にも刺さる一因となっているが、その礎を築いたのは間違いなく「DANZEN! ふたりはプリキュア」と言っていいだろう。

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