連載「lit!」第139回:=LOVE、FRUITS ZIPPER、僕が見たかった青空……個性で新潮流を生み出すアイドルたち
2024年のアイドルシーンは、新たなグループの開花と既存グループのさらなる進化により、これまで以上に多様で魅力的な展開を見せた。依然としてTikTokの影響力も無視できない状況が続いている。楽曲のバズがグループの認知度を大きく左右し、パフォーマンス動画や振り付けが拡散されることで、新たなファン層を獲得するケースが急増している。短尺動画がトレンドを生み出し、アイドルシーンにおいてもプロモーションの鍵となる今、各グループはSNS戦略を強化しながら、より多くのリスナーにリーチするための工夫を重ねている。この傾向は2025年も続いていくことだろう。今回は、2025年に注目したいアイドルグループの新譜をセレクトした。
=LOVE『とくべチュ、して/恋人以上、好き未満』
指原莉乃プロデュースの=LOVEからは、両A面シングル『とくべチュ、して/恋人以上、好き未満』がリリースされた。まず「とくべチュ、して」は2月27日現在でMVの再生回数が920万回を突破し、大きなバズを起こしている。その背景にあるのはキャッチーで真似しやすいサビの振り付けのユーモアと〈とくべチュが欲しい〉〈ショートケーキ/イチゴみたいに 座ってもいい?〉といった指原の作詞のセンス。“激甘束縛ラブソング”という重いテーマが据えられているが、それを歌いこなすだけの圧倒的な存在感と表現力が彼女たちには備わっている。=LOVE初となるアニメ主題歌となった「恋人以上、好き未満」は『クラスの大嫌いな女子と結婚することになった』のオープニングテーマ。サビでは合いの手が入れられていたり、聴き心地よい王道のコード進行など、アイドルソングの定石を踏まえながらも、洗練された楽曲構成で新たな境地を開拓している。
FRUITS ZIPPER「好き、お願い」
昨年リリースした「NEW KAWAII」が『第66回 輝く!日本レコード大賞』で優秀作品賞を受賞し、総動員数約4万人の全国ホールツアーを成功させ、2024年のアイドルシーンだけではなく、音楽シーンを席巻したFRUITS ZIPPER。彼女たちが放つ新曲「好き、お願い」はABEMA『恋する♥週末ホームステイ 2025 冬』のオープニング曲に起用されている、淡い恋愛模様を描いたラブソング。近年のトレンドにある“自己肯定感爆上げソング”を数多く歌ってきたFRUITS ZIPPERだが、同曲はストレートな恋心を歌ったミディアムソングであり、メンバーの繊細なボーカルが恋の瑞々しさを表現している。「フルーツバスケット」のリリース以降は、従来のFRUITS ZIPPER像に囚われない音楽性にも挑戦している印象で、ライブの幅が広がることは間違いないだろう。今年5月と6月にはグループ史上最大規模となるさいたまスーパーアリーナと神戸ワールド記念ホールにてそれぞれ2DAYS、結成3周年公演の開催を発表しているFRUITS ZIPPERは2025年も要注目だ。