あいみょん、キタニタツヤ、Aimer、緑黄色社会、MAZZEL、AKASAKI……注目新譜6作をレビュー

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はあいみょん「スケッチ」、キタニタツヤ「ユーモア」、Aimer「やさしい舞踏会」、緑黄色社会「PLAYER 1」、MAZZEL「J.O.K.E.R.」、AKASAKI「薔薇と散る」の6作品をピックアップした。(編集部)

あいみょん「スケッチ」

あいみょん「スケッチ」

 『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』主題歌となる新曲。爪弾くアコギと柔らかなメロディをゆっくりとストリングスが包み込むバラードで、気を衒った仕掛けは皆無。無理に乱高下しない、しかし、これしかないという感じで決まるサビのメロディなど、できたての新曲とは思えない懐かしさと温かさでハートに深く刺さってくる。公式HPのコメントによると、幼い頃から原作漫画を愛してきたあいみょんは「楽曲で最大の恩返しができますように」との気持ちを込めたそう(※1)。〈外し忘れた 眼鏡の跡〉などの言葉は、彼女の生活や思考ではなく、ドラえもんとのび太の日々を親身に想像しないと出てこない。歌手として、職業作家としても黄金期を感じる一曲だ。(石井)

キタニタツヤ「ユーモア」

キタニタツヤ「ユーモア」

 中原中也と小林秀雄と長谷川泰子を描く映画『ゆきてかへらぬ』主題歌。大正時代の話にキタニ楽曲のめくるめくスピード感は果たして似合うのかと思ったが、完全に杞憂でした。抑揚の利いたサウンドに一語一句をそっと刻み込むバラードで、得意の早口言葉っぽい唱法は封印。始まりは低音、中低音、高音に分かれた多重録音コーラスで、つまり、二人の男性と一人の女性という舞台設定が最初の20秒で鮮やかに浮かび上がるのだ。それぞれがままならない気持ちを抱えていた青春の人間関係。〈僕たちは永遠でいられない〉という一言も刺さるが、その手前に来る〈余白を生むようにきみの詩は在った〉のフレーズはたまらない。文学ファンも唸る仕上がりでしょう。(石井)

Aimer「やさしい舞踏会」

Aimer「やさしい舞踏会」

 シングル『SCOPE』のカップリングであり、『みんなのうた』(NHK総合/NHK Eテレ)で現在放送中の新曲。田中ユウスケの手によるクラシカルなワルツで、夢心地の隣に不穏な暗さが、古めかしいアコーディオンの響きにはゾワッとくる怖さが忍び寄る。映像美と共に〈あやかしの森の/香りに呼ばれ〉ていくストーリーは、ゴシック風味のファンタジーとして満点。怨念たっぷりに歌い上げたり歌詞に魑魅魍魎を登場させてしまうと子供のトラウマになってしまう曲でもあるが、夢と現の間をふわふわ漂うAimerの歌唱が絶妙。ブレスはわりとはっきり聴こえるし、ビブラートも丁寧なのだが、そこに存在しているのかどうかわからない。こんなふうに歌えるシンガーは稀である。(石井)

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