THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、“間に合わなかった世代”にも授けたDNA King Gnu、キタニタツヤらが影響受けた名曲

 邦楽至上、最強かつ最高のロックバンドは誰かーー議論の紛糾も止む無しとなるこの問い。それでも間違いなく、一定数の人々から語気強く名の挙がるバンド。それがTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT(以下、TMGE)だ。

 1996年に『世界の終わり』でメジャーデビューし、7年間のメジャー活動をトップスピードで駆け抜け2003年に解散。その後も日本のロック史に、燦然とその名が輝き続けていることは周知の通りである。

 いまだ根強い大勢の支持の背景には様々な要因があり、悲しいかなもう二度と生で見られない“伝説のバンド”だという理由も、きっとそのひとつなのだろう。2009年に42歳の若さで急逝したアベフトシ(Gt)。そして2023年、チバユウスケ(Vo/Gt)も還暦を待たずして55歳でこの世を去った。

 もう二度と、4人が揃いの黒スーツで並ぶ時は来ない。未来永劫喪われた復活の日。ゆえに、みな彼らに焦がれ続ける。だからこそ先日始動したデビュー30周年プロジェクト『THEE 30TH』にも、多くのファンが驚き歓喜したのではないだろうか。

ジャンルや世代を超えたアーティストがTMGEからの影響を公言

 バンドが遺した功績の大きさは、現在の音楽シーンにおける“TMGEフォロワー”を公言するアーティストの多さにも如実に見て取れる。ASIAN KUNG-FU GENERATION、9mm Parabellum Bullet、ストレイテナー、マキシマム ザ ホルモン……彼らがTMGEの音楽に触れていなければ、今の日本の音楽シーンは一体どうなっていたのだろう。チバユウスケ逝去後、奥田民生やBRAHMAN TOSHI-LOW、THE YELLOW MONKEY 吉井和哉、東京スカパラダイスオーケストラの面々や、ザ・クロマニヨンズ 甲本ヒロトまでもがその存在に言及していたことも記憶に新しい。

 同じ時代に同じ土俵で生きた人々にとって、TMGEは到底看過できるバンドではなかった。だがそれだけに留まらず、彼らの活躍にリアルタイムでは「間に合わなかった」世代のアーティストにまで、脈々とその音楽的遺伝子は受け継がれており、現在の邦楽シーンの最前線にも点在している。

 特に有名な話は、King GnuがTMGEから多大な影響を受けているというエピソードだろう。過去に井口理(Vo/Key)は人生最高の1曲として「世界の終わり」を挙げ、常田大希(Gt/Vo)もそれに深く同意。また常田はチバの逝去時にもSNSで深い悲しみを滲ませる追悼コメントを投稿しており、そこからも彼らの敬愛ぶりが窺える。

 「青のすみか」のヒットで2023年に『第74回NHK紅白歌合戦』へ出場したキタニタツヤも、TMGEから影響を受けた人物の一人だ。アルバム『BIPOLAR』(2022年)収録曲「PINK」には、一節にTMGE「ドロップ」の歌詞が引用されている。ボカロPとしても活動していたキタニのやや意外なルーツに、驚いたファンもきっといたに違いない。

PINK / キタニタツヤ - PINK / Tatsuya Kitani

 海外レーベルにも所属し、国内外で幅広く活躍するラウドロックバンド・Paledusk。彼らは2024年2月にリリースした楽曲「PALEHELL」で、アウトロのコーラスフレーズに「世界の終わり」のサビを引用。KAITO(Vo)は制作の際、「メロディーもそのまま持ってきているんですけど、そこから曲の形が決まっていきました」と明かしている(※1)。

Paledusk / PALEHELL (Official Music Video)

 さらに昨年、各地の音楽フェスで開催されたチバユウスケの追悼イベントで注目を集めた出演者の一人が、『オハラ☆ブレイクʼ24 愛でぬりつぶせ』で「ドロップ」を絶唱したDISH// 北村匠海だ。DISH//の活動を思うと少し意外に思われるかもしれないが、北村が従来からTMGEや90~00年代のオルタナバンドを愛聴していたことはファンの間で有名な話。確かな愛とリスペクトを滲ませた彼のパフォーマンスも、その場に居合わせた大勢の観衆から高い評価を獲得していた。

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