PEDRO、『ラブ&ピースツアー』で再確認した“音楽を鳴らす意味” ハプニングを乗り越えて迎えた大団円

PEDRO、『ラブ&ピースツアー』レポ

 2024年9月から全国を巡ってきたPEDROの『ラブ&ピースツアー』。そのファイナルとなるワンマンライブ『ラブ&ピースツアー Final 「意地と光」』が1月21日、Zepp Haneda(TOKYO)で行われた。ツアーを経ての成長、そして最新作『意地と光』に込められていたアユニ・D(Ba/Vo)の思いが溢れ出すようなライブは、予期せぬハプニングも挟みながらも、改めてアユニにとってPEDROとして音楽を鳴らすことの意味をはっきりと示すものになった。

 SEの「還る」が鳴り響き、田渕ひさ子(Gt)、ゆーまお(Dr)に続いてスキップするようにステージに躍り出てきたアユニ。「PEDROです、よろしくどうぞ」という挨拶とともに、1曲目「ラブリーベイビー」が始まった。その瞬間、フロアから声が上がり、リズムに合わせた手拍子が鳴り響いた。白い光がパッとステージを照らし出し、「祝祭」の〈おめでとう〉のフレーズが広がると、オーディエンスの熱はさらに高まる。ベースを弾きながら歌うアユニの表情も楽しげで、それを支える田渕とゆーまおのプレイも力強い。9月からツアーを回ってきたバンドの状態は上々のようだ。

 ところが、続く3曲目「音楽」でトラブルが起きた。アユニのベースが鳴らなくなってしまったのだ。だが、そこからがバンドのフロントに立ち成長を続けるアユニの真骨頂だった。音の鳴らないベースを諦め、手振りを交えながらさらに熱っぽく歌を届け、さらにはマイクを引っ掴んでステージの最前まで出てパワフルにパフォーマンス。ベースレスで少し軽くなったサウンドを熱量でカバーするようなその姿はとてもエモーショナルで、フロアからは大歓声が湧き起こる。「ベースが鳴らなくなってしまいました……」と曲を終えて呟くアユニに「でもよかった!」と声が飛ぶ。その後もなかなか機材トラブルは解決せず、MCで場を繋ぐことに。「こういうときに盛り上げられたらいいんですけど……」というアユニをとっさに支えたのは「呼びました?」と立ち上がったゆーまおだ。田渕とともに「大丈夫だよね!」とフォローしつつ、「ゆーまおでーす!」という絶叫コールで場を温める。アユニもこの正月に「人生初の初日の出を見ました」というエピソードを披露。「初日の出を見て、おいしい食べ物を食べて、幸先いいなと思っていたら……これは日頃の行いなのかもしれない」と愚痴るように言って笑いを取る。「ひとりじゃなくてよかった」とアユニは言っていたが、まさにバンドのチームプレイが、この日のライブをさらに特別なものにしていった。

 しばしの中断の後、無事にベースも回復してライブは再開。その一発目は「この日のためにアレンジし直した」という「洗心」だった。疾走感と軽やかさを増したサウンドがこの曲の〈前よりもつよくなってるよ〉という歌詞を証明するように鳴り響く。「大人になるといろんなことが自由になって、深夜にケーキを食べても、朝まで酒飲んで遊んでも、部屋散らかしっぱなしにしても誰にも怒られなくて。自由で楽しいけど、たまに全部わからなくなって、怖くなってしまうときがあって。でも生きることを嫌いになりたくない、好きでいたいからこんな歌を作りました」というアユニの言葉とともに届けられた「明日天気になあれ」を経て、「久しぶりにやる曲」と演奏されたのは「感傷謳歌」。2ndアルバム『浪漫』に収められていたこの曲は、当時のアユニの“願い”と“覚悟”を歌っていた。それが時を経て、確かな実感を伴って鳴り響いてくる。その響きの違いが、アユニの、そしてPEDROの進化を物語っているようで感動的だった。

 さらに「GALILEO」「自律神経出張中」とここ最近はあまりやってこなかった初期の楽曲を立て続けに披露し、アユニはこう語った。「昔の曲をやるのが怖かった。でもこのツアーでたまにやることがあって、なんで私はこの曲たちを封印しようとしていたんだろうなって」。ライブでやることで、オーディエンスから「曲が生き返る力」をもらった、と感謝を述べるアユニ。「これからもたまにやっていきたいと思っています」という言葉に、フロアからは大きな拍手が送られたのだった。アユニが言っていた「怖かった」というのは偽らざる本音だろう。彼女にとってPEDROは自身の過去を乗り越えていくための闘いだったし、自身が変わっていく中で過去の自分の感情に蓋をしたいという思いもあったはずだ。だがこうしてステージで歌い、集まった人々と音楽を分かち合うことで、そうではない思いが彼女の内側で大きくなっていった。これまで積み重ねてきた人生を愛し、肯定する。ここで披露された過去曲には、そんな意思が込められていたように思う。

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