PEDRO アユニ・Dが暮らしに向ける温かな眼差し 優美な進化を遂げた2度目の武道館公演

PEDRO、2度目の武道館レポート

 11月26日、PEDROが日本武道館にて単独公演『PEDRO TOUR 2023 FINAL「洗心」』を開催した。

 自身2度目となる武道館公演は、8月にスタートし、約3カ月をかけて回ってきた全国ツアーの千秋楽。アユニ・D(Vo/Ba)、田渕ひさ子(Gt)、ゆーまお(Dr)という新体制によるツアーファイナルを観ての第一印象は、活動休止前のPEDROとはまるで別のバンドになったかのような感触だった。田渕ひさ子のギターの鳴りは圧倒的だし、ゆーまおのドラムの安定感も抜群。何よりアユニ・Dの堂々とした優美な立ち振る舞いに、ミュージシャンとしての“成熟”を感じた。

 ライブは「さすらひ」からスタート。2021年12月、PEDROが無期限活動休止に入ったタイミングで書き下ろした楽曲だ。ステージには岩のようなセットが設けられ、中央にゆーまお、上手に田渕、下手にアユニ・Dという3人が並ぶ。

 「PEDROです、よろしくどうぞ」とアユニが告げ、続けては『後日改めて伺いました』収録のゆったりとした「安眠」から、疾走感あふれる「無問題」「おバカね」を披露。スリーピースのバンドサウンドは、オルタナティブロックが基調でありながら、尖った鋭角性よりも、どこか丸みを帯びた温かみを感じさせる。

 MCでは「早速ですが私の愛してやまないサポートメンバーを紹介させてください」とアユニ・Dが語り、「スーパービューティフル・ギタリスト、田渕ひさ子」と「スーパーテクニカル・ドラマー、お祭り男こと、ゆーまお」を紹介。ゆーまおのハイテンションな名乗りが徐々に調子を変えながらユーモラスなコール&レスポンスになっていくやり取りも笑いを誘っていた。

 「愉快ですね。こんな愉快な新生PEDROでございます」とアユニ・Dが言うと、続いては「いっそ僕の知らない世界の道端でのたれ死んでください」から、パンキッシュに駆け抜ける「万々歳」へ。「生活革命」ではオレンジ色の照明の光の中でノスタルジックな情感たっぷりの歌を聴かせる。

 中盤のアコースティックパートにも惹き込まれた。田渕がアコースティックギターを奏で、ゆーまおのパーカッションに乗せて、アユニがステージのあちらこちらを行き交いながらハンドマイクで歌う。跳ねるリズムの「浪漫」に続けて、ソファに腰掛けたり、寝そべったり、自由に振る舞いながら初期の楽曲「自律神経出張中」を肉感的な四つ打ちのアレンジで披露。PEDROのバンドアンサンブルの新たな可能性を見せていた。続くゆーまおのドラムソロも見せ場。アユニ・Dの優美なステージング、田渕の控えめな佇まいとのバランスも含めて、いいトライアングルが形成されている感がある。

 そして、この日のクライマックスとなったのは8月にリリースされた「飛んでゆけ」だった。〈安心して暮らして/安全な体温で/安全な言葉で〉という歌詞が印象的な曲だ。歪んだギターが優しく鳴り響く。そのサウンド感からも今のPEDRO、アユニ・Dが描きたい情景が伝わってくる。

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