BoA「メリクリ」、浜田雅功と槇原敬之「チキンライス」、浜崎あゆみ「CAROLS」…...20年前の冬を彩った名曲
冬になると、ふと耳にする懐かしい曲がある。2004年にリリースされたBoAの「メリクリ」もそのひとつだ。この年、さまざまな冬曲が音楽シーンを彩り、クリスマスや冬そのものを特別なものにしてくれた。リリースから20年が経った今、それらの楽曲がもたらすあたたかい記憶とともに、2004年にリリースされた冬の名曲を振り返ってみよう。
2004年は、四季折々に印象的なバラードがヒットした年だった。春には平井堅の「瞳をとじて」が映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌として社会現象的な人気を博し、夏にはゆずの「栄光の架橋」が『アテネオリンピック中継』(NHK総合)の公式テーマソングに起用され、日本選手団の活躍を象徴する応援歌として感動を呼んだ。そして秋にはORANGE RANGEの「花」が映画『いま、会いにゆきます』の主題歌として大ヒット。そんな2004年の締め括りともいえる冬には、BoAの「メリクリ」がシーズンを代表するバラードとして注目を集めた。
「メリクリ」は、20年経った2024年になってもクリスマスシーズンを象徴する1曲だ。柔らかくあたたかいメロディと切ない歌詞が、今でも多くの人々の心を掴むこの楽曲。意外なことに、歌詞の中に「メリクリ」という言葉は一度も登場しない。それでもこの曲は当時若者の間で広まりつつあった「メリクリ」という略語を一気に浸透させ、クリスマスの新たな挨拶として定着するきっかけにもなった。
また、この楽曲は韓国でも「Merry-Chri」というタイトルでリリースされている。抽象的なテーマで大きなエモーショナルを生み出してきたこれまでのJ-POPの王道バラード曲とは対照的に、〈コンビニでお茶選んで 当たり前に分けあって〉のように歌詞に身近な風景が描写されている点も注目したい。日常の風景を切り取り、その視線を半径数メートル程度に留めておきながら、サビでは〈冬の贈り物 ほら 雪だよ〉と視線をあげて射程を大きく広げているのだ。この視線の移動が楽曲のパーソナルさと壮大さを両立させる仕掛けなのかもしれない。
もう1つ忘れてはならないのが、浜田雅功と槇原敬之による「チキンライス」だ。この楽曲が生まれたきっかけは、音楽番組『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)でのやり取りだった。槇原敬之が同番組に出演した際、浜田が冗談交じりに「曲を書いてくれ」と頼んだことが発端だったという。実際に楽曲制作が進められ、作編曲を槇原が、作詞を浜田の相方である松本人志が担当する形で完成させた。歌詞には松本の幼少期のエピソードが込められている。彼の家庭は決して裕福ではなく、クリスマスはささやかに楽しむことが定番だったのだそう。その思い出をユーモアを含みながらも心あたたまる内容で描いたのがこの楽曲だ。
特にバブル時代にはクリスマスの象徴の1つでもあった〈赤坂プリンス〉という固有名詞が登場する歌詞が印象的で、2011年にこのホテルが閉業した今となっては、当時を懐かしむ象徴的なフレーズにもなっている。「チキンライス」は、クリスマスソング=恋愛ソングという既成概念を覆した1曲だ。松本の言葉の力と浜田の素朴な歌声が相まって、華やかさだけではない心のあたたかさを伝えている。この歌詞に触れた槇原は感動を隠せず、素晴らしい歌詞だと絶賛したという。歌唱部分は浜田が担当し、槇原はコーラスに徹している点も、この楽曲のユニークさを際立たせている。
2004年といえば、浜崎あゆみが「CAROLS」をリリースした年でもある。2000年の「M」、2001年の「Dearest」、2002年の「Voyage」、2003年の「No way to say」などに続き、ファンにとって特別な意味を持つ楽曲となった。「CAROLS」は、切なくも力強い歌詞とメロディが冬の風景と重なり、当時の人々の心に深く刻まれている。