2025.03.28 12:00

マカロニえんぴつの音楽が無比であり続けるのはなぜか　映画『山田くんとLv999の恋をする』主題歌含む最新EPをレビュー

文＝兵庫慎司

　マカロニえんぴつのメジャー5th EP『いま抱きしめる足りないだけを』が、3月12日にリリースされた。

　1曲目は、1月2日から放送中のテレビアニメ『アオのハコ』の第2クールオープニングテーマ「然らば」。この曲が、1月3日に配信シングルでリリースされた時、ジャケットを飾ったのは高石あかりであることは、書いておきたい。『ベイビーわるきゅーれ』シリーズのファンとしては。なお、MVは、マザーファッ子が監督で、「老後」と「学生時代」のマカロニえんぴつをテーマにして作られている。

マカロニえんぴつ「然らば」Official Audio

マカロニえんぴつ「然らば」MV

　2曲目の「NOW LOADING」は、累計600万部突破の大ヒットマンガの実写映画『山田くんとLv999の恋をする』の主題歌。映画の主演は作間龍斗と山下美月で、同作に鈴木もぐらが出演していることは、書いておきたい。空気階段のファンとしては。なお、鴨下大輝が撮ったMVには、山下美月も出演している。

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マカロニえんぴつ「NOW LOADING」MV

　それから、長谷川大喜（Key）が作曲した「前世よ、しっかり」と、田辺由明（Gt）が作曲した「ロング・グッドバイ」。以上の4曲が収録されている。EPのタイトルは、「NOW LOADING」の歌詞から。

　疾走感に満ちていて、シャープで豪快でキャッチーな「然らば」。そっと始まる→力強く続く→サビでドラマが降ってくる「NOW LOADING」。どちらも、よくまあこんなハイペースで、こんなクオリティの曲をどんどん出せるよなあ、と思うが、そのような状態が何年も続いているのがマカロニえんぴつなので、さすがにもうそこには驚かない。僕は「なんでもないよ、」が出た時に「ここまでのキラーチューンをこんなにさっさと出してどうする、『ここだ！』ってタイミングまで温存しとくべき」などと書いてしまい、常にあれぐらいの曲を書けるから出し惜しみしないんだ、ということをのちに理解して、後悔した奴なので。

　歌詞に関しても、どちらの曲も、アニメや映画の内容に沿っている、という次元に留まらず、「その先」までを見せてくれるところがさすがだが、その「さすが」も、もう「いつものこと」と言っていいくらい続いているので、そこにもびっくりはしない。長谷川大喜の「前世よ、しっかり」と、田辺由明の「ロング・グッドバイ」が、4曲しかないのにアルバムに感じるくらいの振れ幅を作品にもたらしていることに関しても、然りだ。

　しかし。4曲に通底している「ここまでやらないといけないの？」と言いたくなる、アレンジと曲構成に関しては、何曲聴いても、何作聴いても、やはり、驚愕する。というか、ビビる。「どうかしてる」と言わざるを得ない。前にも何度も同じようなことを書いたが、やはり今回も、書かずにはいられない。コーラスの入れ方。ベースとドラムのリズムの組み方。ギターのフレージング。キーボードの被せ方。で、それぞれの、というか、すべての音色。

　たとえば、いわゆるDTMでなら、ここまでやる存在は、他にいるかもしれない。が、基本的に生で演奏して録音することを軸にしているバンドで、現在、ここまで執拗に音の細部までこだわっていて、かつリスナーから支持され続けている存在は、他にいないと思う。逆に言うと、ヒットし続けるために、この執拗さが必要かというと、そうでもなかったりするのだろう。はっとりの、メロディメーカーとしての能力を考えると、もっとシンプルな音にしても変わらなかったりするのではないか、と思う。

　以前は、マカロニえんぴつがここまでやるのは、「自分たちならではの音にしたいから」「ロックバンドが作っている音楽であることを示したいから」だと捉えていた。が、そういうことではないのかも、と、今回の4曲を何度も聴いているうちに、思えてきた。

　単に、マカロニえんぴつにとって、曲を作るということは、こういうことなのだ。「ここまでやる」ことなのだ。いや、「ここまでやる」という意識もないのだろう。これが普通で、あたりまえなので。