s**t kingzが新作舞台『See』で向き合う「見る」ことへの意識 人と向き合い、走り続けた2024年を語る
2025年2月1日より東京・新国立劇場 中劇場にて、s**t kingzが新作舞台『See』を上演する。同舞台は2022年に上演された『超踊る喜劇「HELLO ROOMIES!!!」』以来、約2年5カ月ぶりとなる舞台。「見えてないだけ」「見えなきゃよかった」「見せたくないもの」「見えないものさし」など、“見る=See”をテーマに作られた作品で、今まで以上に飛躍した彼らだからこその視点、表現が楽しめそうだ。そんな『See』に対して、s**t kingzは現在どう向き合って制作を進めているのだろうか。4人それぞれとグループとしての2024年を振り返りながら、話を聞いた。(高橋梓)
「何かをぶち壊したい」――今のシッキンを詰め込んだ舞台『See』
――まずは『See』について、お話を伺わせてください。約2年5カ月ぶりの舞台ですが、上演するに当たっての心境はいかがですか。
kazuki:ちゃんと久しぶりな感じがしています。『超踊る喜劇「HELLO ROOMIES!!!」』(2022年上演/以下、『ハロルミ』)からのあいだにいろいろな出来事があったのも大きいですが、“2年5カ月という時間が空いた感覚”よりももっと久しぶりな気がしていて。今ちょうど舞台の感覚を取り戻している最中です。やっとリハーサルに入ったくらいのタイミング(取材は11月上旬に実施)なのですが、最初は勘が全然戻ってこなかったですね。「舞台ってどうやって作るんだっけ?」みたいな。なので、どんな話し合いをして、どういう順番で作っていたのかを再構築することから始めました。
shoji:舞台を作るって、何よりもヘビーなんですよね。約2時間の作品を作るのにはかなりのカロリーを使いますし、もちろん楽しみではあるのですが、制作中である今はその楽しみを感じる余裕がないくらいの恐怖があります(笑)。
kazuki:そうそう。その期間に入ったらほかのことができなくなるという意味では、受験みたいな感覚です。
――今作のキーワードは「見る」です。このテーマで作品を作ることになった背景を教えてください。
shoji:ここにたどり着くまでに、本当にいろんな打ち合わせをして、いろんなストーリーの案が出てきました。そんななかで、「先入観」や「見えているつもりだったけど見えていなかったこと」という話が出てきて。話を詰めていく過程で、「見えているもの」「見ているもの」「見ていないもの」「見たくないもの」「見せたくないもの」……さまざまな視点における「見る」をテーマに作品を作ったらどんな舞台になるんだろう?と、『See』という作品を作ってみることにしました。ただ、『See』というタイトルを決めた時と、現時点では中身がかなり変わっています。まさに、このインタビューの直前の休憩中にOguriのアイデアで、ストーリーがガラッと変わった部分があって(笑)。日々調整をしながら進んでいるので、きっと今からお話しするのと本番では、違う内容になっていると思います。いつものことですが、そういったヒリヒリ感も舞台の醍醐味として楽しんでいます。
――まさに“生き物”ですよね。『See』が生まれた原点をお聞きすると、「MORECHAU」でお話しいただいた「自分たちが踊りたいように踊れているのかわからなくなることがある」(※1)という部分にも繋がっている気がしました。
NOPPO:ああ、たしかに。
Oguri:最近の僕らのマインドがそうなのかもしれないですね。
shoji:何かをぶち壊したい、みたいなね。もしかすると、「シッキンはこういう人たち」という先入観で自分たちを見たくないのかもしれません。メディアに出演させていただくことで「s**t kingzってこういう人たちだよ」というものを押し出していかなければいけない反面、自分たちで形を決めて提示していくことに窮屈さを感じているのかも。いろいろなマインドがリアルに反映された舞台になる気がしています。
――それこそ、今年一年は今まで以上にメディアにご出演されていたので、よりその気持ちが強まったのかもしれませんね。
Oguri:そうですね。あとは、“匠”であることにこだわりすぎなくていいのかなとも思っていて。今までは仕組みやストーリー、メッセージを組み込んで劇的に感動させたり、大きなメッセージにとらわれすぎていた部分もあったなと思うんです。今回の『See』は自分たちがこの世界、そして自分たちをどう見ているのかをそのまま作品にしたらいいのかもしれないね、という話をしています。逆に、観てくださった方々がどう感じるのか教えてもらうようなスタンスで作ってみようという流れになっています。
shoji:僕ら4人の感覚は、それぞれがバラバラなんですよ。たとえば、僕としては正義として考えていることがあったとしても、ほかの3人にとっては正義ではないというようなことがあるんですね。それをシッキンの舞台のテーマにしても、共感しているのは僕だけになってしまう。「それってどうなの?」という思うこともあったんです。『See』も最初は実はそうで。最初に「何が見たいか」「何を見たくないか」とみんなで出し合って、ワードをホワイトボードにバーッと書き出していったんです。「SNSのネガティブな書き込みは見たいか、見たくないか」、「自分が作った作品に対するリアクションは見たいか、見たくないか」みたいな。それをすり合わせていったら4人全員違っていて。
NOPPO:だったら、誰かの思いをひとつのメッセージで提示するのはおかしいよね、って。
shoji:なので、舞台を作るまでの準備期間がめちゃくちゃ長かったんです。たくさん悩んだ結果、「見る」というテーマひとつを取ってもこんなに価値観が違うし、作品を作るまでのその葛藤をそのまま作品に落とし込むことになりました。そのほうがリアルな表現として届けられるし、こんなに身近な存在でもいろいろな価値観があるということをコメディーでダンスとして表現することで面白いものができるんじゃないか、という着地点になりました。
――その準備期間はどれくらいあったんですか?
shoji:いちばん最初の打ち合わせっていつだったんだっけ?
スタッフ:2年前の11月のミーティングの録画が残っています。
全員:えー!
kazuki:2年前? ちょうど『ハロルミ』が終わったくらいだ! でも、思い返せばその頃にはもう話してたかも。でも、『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』(以下、『シッキンフェス』)もあったから、当時はふわっと話しているくらいだったよね。
shoji:そうだね。
kazuki:舞台はshojiくんが主に動いてくれていて、僕はライブの演出をしているんですね。shojiくんは『See』の話がしたいけど、迫りくる『シッキンフェス』の話をしなきゃいけないから、舞台の話をするために集まったのに、結局フェスの話をし始めるという日々が続いていた記憶がある(笑)。
Oguri:何度舞台の話し合いが中止になったことか(笑)。
kazuki:今そのしわ寄せがきてる(笑)。
shoji:ちゃんと来てるよね(笑)。でも、それが今のシッキンを表現できる源だとポジティブに捉えておこう!
kazuki:だからこそ、今の『See』の形になっている。
NOPPO:それは絶対そう!