s**t kingz NOPPO、ジリアン・マイヤーズと語り合うダンスの可能性 初ソロ演出公演で見せる“距離”
2024年4月27日から5月6日まで、s**t kingz・NOPPOの初ソロプロデュース公演『GOOFY〜マヌケな2人の間で〜』が上演される。距離・間隔をテーマに、作・演出・振付を手掛けながら、NOPPO自身も出演する作品だ。さらに振付・出演で映画『ラ・ラ・ランド』のアシスタントコレオグラファーも務めたダンサーのJillian Meyers(ジリアン・マイヤーズ)を迎える。2人はどんな“ダンスコミュニケーション”を見せてくれるのだろうか。本人たちに同公演についてじっくり語ってもらった。(高橋梓)
人間の距離感を文化が違う僕らで表現したら面白いんじゃないか
――お二人の出会いはいつのことだったのでしょうか。
NOPPO:今日、いろいろとインタビューを受けてきた中で判明したのですが、13年くらい前に僕がロサンゼルスにダンスの勉強をしに行った時が初めての出会いだったみたいです。
Jillian Meyers(以下、Jillian):ロサンゼルスにあるMillennium Dance Complexというダンススタジオでした。
NOPPO:当時、そこで僕はJillianのレッスンを受けたり、一緒のレッスンに出たりして、徐々に話をするようになって仲良くなっていって。自然と絆が深まっていきました。
――当時、お互いどんな印象を持っていましたか?
NOPPO:僕はJillianのレッスンを受けていたので、当初は「先生」という印象でした。そこからアメリカでできた共通の友人と一緒にご飯を食べたり、遊んだりする機会があって。僕は英語があまり話せなかったのですが、フランクに優しく接してくれたり、質問をしてくれたりしました。なので、先生から「優しいお姉ちゃん」に変わっていった感じですね。
Jillian:NOPPOの最初の印象は「窓から覗いている子」(笑)。というのも、私がレッスンをしていたらクラスに入ってくるわけでもなく、後ろの窓からずっと見ているだけだったんです。その後、ショーン・エヴァリストという共通の友人を通じて直接お話するようになって、一緒にレッスンを受けたりしながら友だちになっていきました。私はNOPPOと一緒にレッスンを受けている時、いつもNOPPOの後ろに立ってどう踊っているのか研究して、テクニックを盗めないかなと考えていましたね。
NOPPO:怖いって(笑)!
Jillian:私よりも背が高いのに、気づいたら私よりも早く低い位置にいるのが理解できなかったんです。「なぜそんなことが可能なんだろう?」と思いながら見ていました。
――お互い刺激を受ける関係だったのですね。そんなお二人が今回、タッグを組むことになった経緯を教えてください。
NOPPO:まず、この公演を行うにあたって、自分らしい公演にしたいと思ったんですね。“自分らしさ”を考えた時、僕にはダンスしかないというくらいダンスで生きてきましたし、ダンスを通じて仲良くなった人、出会えた人がたくさんいるな、と。その中でもJillianはリスペクトし合えて、ダンスで距離が縮まった人の1人でした。人間の距離感を文化が違う僕らで表現したら面白いんじゃないかなと思って、声を掛けさせてもらったのが始まりです。それに今回は植松陽介さん、高橋あず美さんという素敵なミュージシャンにも参加していただけることになって、オリジナル曲も作ったんですよ。その曲を背負って、2人でしかできないダンスで表現したいなとも思って。あとは、Jillianをダンサーとしてすごく尊敬しているということも、声を掛けた大きな理由です。今回の公演はチャレンジをしたいと思っていたので、仲間内ではなく普段は距離が離れている彼女と演った方が予想できないものができあがるんじゃないかなとも考えました。
――普段から連絡は取られているのですか?
NOPPO:全く取ってないです(笑)。LINEって使ってる?
Jillian:うん、使ってる。
NOPPO:アメリカでも?
Jillian:アメリカでは使わない。日本に来たときだけかな。でも、楽しいアプリだよね。スタンプとかすごく好き! たくさん持ってます(笑)。
――(笑)。じゃあ、この公演を機に連絡を取られたのですね。
NOPPO:そうですね。
Jillian:NOPPOから連絡がきた時は驚きました。まさにサプライズでした。しかも、どういう形でのコラボレーションになるのか書いていなかったのでわからなかったんです。ただ、どんな形であれ一緒に何かできること自体が光栄なこと。舞台上の小道具、照明、書記、なんでもいいのでやりたいと思って、「ぜひ」と返事をしました。
NOPPO:嬉しい。
Jillian:NOPPOの頭の中を知りたかったんですよね。何を考えているのか、どういう構造になっているのか、いつも教えてくれないので知りたいという気持ちがあって。今回誘ってもらえてすごく嬉しいです。
ダンスや表情、ジェスチャーでコミュニケーションを取ってきた二人の関係
――今回のテーマは距離・間隔。これはJillianさんとの共演だから生まれたテーマなのでしょうか。それとも元からあったテーマだったのでしょうか。
NOPPO:元から、というかずっと自分の心の奥底に抱えている問題点ですね。僕は人との距離感を掴むのが苦手で。1人でいるのが好きなんです。でも、そんな僕でもダンスを通じていろんな人と出会って、文化も言葉も違う人たちと笑い合って通じ合うことができました。なので、今回はテーマの方が先にあった形です。
――資料やHPの中に「ダンスコミュニケーション」という言葉が度々出てきますが、これはNOPPOさんにとってダンスはコミュニケーションツールの1つという認識があるのでしょうか。
NOPPO:そうですね。特にこの舞台に関してはその意味合いが大きいです。Jillianもコミュニケーションをする時の表現がすごいんですよ。会話をしているだけなのにもはやダンスを踊っているんじゃないか、みたいな(笑)。それに、コミュニケーションを取ることで相手を知れるし、自分も知ってもらえますし。そういった意味で「ダンスコミュニケーション」という言葉を使っています。
――Jillianさんはこのテーマを聞いた時にどう感じましたか?
Jillian:とても納得のいくテーマだと思いました。私もダンスは「見せる」というよりも、オーディエンスや一緒にステージに立つ人と繋がったり、コミュニケーションを取ったりするツールだと思っています。だからこそ、熱量を持って取り組める舞台になりそうだと感じました。それと、私とNOPPOは言語というよりも、ダンスや表情、ジェスチャーでコミュニケーションを取ってきた関係なんですね。なので、ステージ上のパフォーマンスでコミュニケーションを取っている様子がオーディエンスに伝わって、「距離」、「間隔」が体現されると思っています。
――お二人の関係性だからこそ表現できるものもありそうです。ちなみに、今回のように誰かとタッグを組んで作品を作るときの型はそれぞれお持ちだったりするのでしょうか。
NOPPO:僕は人によるかもしれません。完全に分業する場合と、一緒に喋りながら曲を聴いてその場で話し合っていく場合。今回は確実に後者になりそうです。
Jillian:私は面白いものや好きなものを共有して作るタイプ。なので、作るプロセスにストレスがなく、どんな時でも楽しく取り組めます。そもそも誰かとコラボをして何かをつくることが発見に満ちたものになるだろうなと感じ、すごく好きなんです。どういう結果になるかわからないからこそ、探りながら作るのが楽しくて。今回もNOPPOと一緒に面白いもの、良いものができると確信しています。
NOPPO:僕とJillianの絶妙に噛み合わない感じもいいんですよ。お互いの言語が完璧に理解できていないから、言っていることがわかる、わからないという感覚を作品に反映したいです。完全にわかり合えないからこそのいいところがあると思いますし、わかり合おうとしている様子が面白かったりするんですよね。