11月21日は「世界テレビ・デー」 とんねるず、井上陽水、ピンク・レディー……“テレビ”モチーフが楽曲に映す時代性

 “テレビに出る”ということをアーティスト側から歌う曲もあり、それは主にロックバンドによって作られている。1997年にTHE YELLOW MONKEYは「TVのシンガー」を発表。バンドにとって当時最大のヒットとなったオリジナルアルバム『SICKS』の収録曲で、ハードかつヘヴィなギターサウンドが印象的なナンバーだ。テレビ露出も積極的に行っていたバンドだが、その姿をやや自嘲気味に歌っているようにも聴こえる。ライブハウス出身である彼らにとって、テレビという華やかな世界で歌う自分たちはどこか虚像めいていたのだろうか。テレビを斬ることで、自分たちの本質を表現しているかのようだ。

 2002年にはポルノグラフィティが「TVスター」という楽曲を発表している。淡々とした曲調の中で〈なんだ?アーティストって/哀しきTVスター?/身を切って創って それまで/グラム売りをするようなもんか...〉と嘆く歌詞が特徴で、テレビ出演の多いバンドのリアルな苦悩が垣間見える。煌びやかな夢や幸せを歌うシングル『幸せについて本気出して考えてみた』のカップリングという点からも、憧れの裏面にある現実を暴く楽曲と言えるだろう。テレビサイズに編集されてしまう自分たちの表現と同時に、広く楽曲を届けられる恩恵もあるーーその両面を冷静に捉えた作品なのだ。

 そして時は経ち、テレビ黄金時代は過ぎ去っていく。パーソナルコンピューターの台頭、スマートフォンの登場は人々が音楽をはじめとするエンタメを享受する形を変えた。そんな移ろいを歌った楽曲として、2019年に発表されたMONO NO AWARE「テレビスターの悲劇」を紹介したい。テレビに取って代わられたラジオについて歌ったThe Bugglesの「ラジオ·スターの悲劇」になぞらえ、旧メディアへとなりつつあるテレビへの哀悼を捧げるような楽曲である。飄々とした中にも物悲しさがあり、諸行無常の宿命を拾い上げている。

MONO NO AWARE - テレビスターの悲劇 [YouTube Music Sessions]

 と、すでにテレビは全盛期の勢いは失われているという視点をもってで書き進めてみたものの、先日発表された『第75回NHK紅白歌合戦』の出場者発表も話題を集めているし、それ以外にも多くの音楽番組が年末を賑わせていくのは今年も例年通りなはず。一度暮らしに定着したものは、その役割をほかにはなかなか引き渡さない。現代のテレビがまとう佇まいからは、今後新たな切り口によって歌を生むかもしれない。まだまだ末永く、メディアの重鎮としてそこに居続けるはずだから。

※1:https://gendai.media/articles/-/75607

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