ヒプノシスマイク『.MAD TRIGGER CREW』に刻まれた3人の信念と絆 浅沼晋太郎&駒田航&神尾晋一郎 ロングインタビュー

 音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Divisiion Rap Battle-』(『ヒプマイ』)から、ディビジョン別CDの7カ月連続リリースが決定。6月に発売されたイケブクロ・ディビジョンの『.Buster Bros!!!』に続き、ヨコハマ・ディビジョンの『.MAD TRIGGER CREW』が完成した。

 MAD TRIGGER CREWは、ヤクザの若頭である碧棺 左馬刻(CV:浅沼晋太郎)、警察官の入間 銃兎(CV:駒田航)、元軍人の毒島 メイソン 理鶯(CV:神尾晋一郎)からなるチーム。それぞれ複雑な事情と戦う理由を持ち、ラップの個性も三者三様だ。今作に収録されたソロ曲では、各自が新たな表現に挑戦し、これまでより一歩踏み込んだ深層心理に触れることができる。

 2回にわたるディビジョンラップバトルや、ラップ以外の音楽を取り入れた『The Block Party -HOMIEs-』『The Block Party -HOODs-』などを経て、約4年ぶりのディビジョン別CDにどのように向き合ったのか。また、4月6日、7日に幕張メッセで開催された『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 10th LIVE』の話題から、MAD TRIGGER CREWの変化、『ヒプマイ』の未来まで、ソロインタビューでキャスト3人の想いに迫った。(後藤寛子)

浅沼晋太郎(碧棺 左馬刻 役)ソロインタビュー

ーー直近のトピックとして『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 10th LIVE』の感想からお伺いできればと思います。振り返っていかがでしたか?

浅沼晋太郎(以下、浅沼):無観客ライブや声出しができない期間を経て、声が出せるようになった『9th LIVE』から、あらためてお客さんが僕たちにくださるエネルギーを思い知らされることになったんですけど、『10th LIVE』でもさらにその力を強く感じました。以前も「Scarface」の途中のセリフ部分に反応する声に驚かされましたが、新曲の「燐火」でも「こんなに喜んでくださるんだ!」とやっぱりびっくりして。ようやく戻りつつあるんだな、という喜びもありました。ただ、左馬刻はキャラクター的に怒り以外の感情を大きく出すタイプではないので、難しいんですよね。今回のライブで思ったのは、こんなに無愛想でお行儀の悪いディビジョンをトロッコなんかに乗せていいのか? って(笑)。

ーー(笑)。浅沼さんは、いつも髪型や衣装などの見た目から細かい動きにまでこだわりを感じます。

浅沼:たしかに、コンテンツごと、キャラクターごとにステージでの自分の佇まいは意識して変えるようにしています。というのも、僕自身がステージで歌ったり踊ったりが基本的に苦手なタイプなので、自分自身を鼓舞するための演出であり、自己暗示としてやっているからです。衣装やメイクはもちろん、お客さんに伝わらないような部分――たとえば、そのキャラクターが使っていそうだなと思った香水を(ライブの前に)つけたりして、「今は浅沼晋太郎じゃない、〇〇〇なんだ」と自分に言い聞かせて臨んでいます。加えて、神尾さんと駒ちゃん(駒田)が僕をリーダーとして持ち上げてくれるので、そこに助けられている部分もたくさんありますね。3人での歩き方や小道具のタバコを使うタイミングなんかも、その時々でお互いにアイデアを出し合ったりして。『ヒプマイ』のライブは決まった振り付けがほとんどないうえに、MAD TRIGGER CREWはお客さんとのコール&レスポンスがあまりないディビジョンですから、そういった細かい部分で“らしさ”を感じてもらえるように考えています。

ーー『The Block Party -HOODs-』からソロ曲「燐火」が初披露されましたが、ラップではない楽曲を歌った感触はいかがですか?

浅沼:いやあ、実は怖くてまだライブ映像観れていないんです(笑)。最初は、ギターを弾きながら歌おうかとも考えたんですよ。でも練習しているうちに、ふと思ったんです。頑張って弾いているように見えたんじゃ、全然左馬刻らしくないなって。左馬刻は(山田)一郎に頭を下げられたから「しょうがねえな」って感じでフェスに出たわけで、せっかくやるんなら「そういや最近弾いてなかったわ。久々に引っ張り出してみっか」くらいの余裕を感じさせてこそ左馬刻じゃないですか。なので、早々に「すみません、ギター弾くのやめます」と宣言しました(笑)。

ーーそうだったんですね。駒田さんと神尾さんのパフォーマンスについてはどうでしたか。

浅沼:駒ちゃんに関しては、やっぱり「ジンギ(Pay Respect)」の高速ラップがすごかったですね。リハを一緒にやっていた時、速くラップしすぎて音源を追い越しちゃうことが何度かありました(笑)。神尾さんは「Move Your Body Till You Die!」のリハで、ダンサーさんたちがハアハア息切れしているなか、「もう一回お願いします!」って何度もやっていて。ふたりとも本当にストイックでした。

ーー『9th LIVE』から中王区“言の葉党”のパフォーマンスが始まりましたよね。左馬刻の妹・合歓が所属しているわけですが、どんなふうに観ていましたか?

浅沼:『10th LIVE』では、前回欠席だった(合歓役の)山本希望ちゃんも出演されていたので、中王区のライブは以前にも増してグッときましたね。個人的には、最後に全員が勢揃いした時にもいてほしかったなあ。いつも「ディビジョン・ダンス・バトルの人たちに拍手を!」と言っているように、ライブを作り上げてきた仲間として「中王区を演じた御三方に拍手を!」って言いたい気持ちが強いです。

サイプレス上野によるリリックの「Backbone」は原点回帰の一曲

ーーそして、ディビジョン別CD 7カ月連続リリースの第2弾として『.MAD TRIGGER CREW』が完成しました。

浅沼:まずジャケットがすごく美しくてかっこいい。「Backbone」に関して言えば、ラップ曲としてのソロは「Gangsta's Paradise」以来ですし、なんと言っても、いちばん最初のソロ曲「G anthem of Y-CITY」を書いてくださったサ上(サイプレス上野)さんのリリックですから、原点回帰といいますか、ちょっと身が引き締まる思いでした。

ヒプノシスマイク 碧棺 左馬刻「Backbone」Trailer

ーー「Backbone」のデモを聴いた時の印象はいかがでしたか?

浅沼:あらためて振り返ると、「G anthem of Y-CITY」の時は、 「男の子がかっこいいと思ってるものが、女の子から見たらちょっと滑稽で笑っちゃう」みたいな、喩えるならヤクザ映画とかプロレスとかフォークソングとかヴィンテージデニムのような、「あえてちょっとダサい感じがいい」という部分が味になる、クセになるチームなんだろうと感じていたんです。でも、いろいろとストーリーが進んで、若頭という設定や一郎とのあいだにあった確執、妹が中王区にいることが徐々にわかっていくなかで「決して“ちょいダサ”でいくわけじゃないんだな」と感じて、演じ方や歌い方を少しずつマイナーチェンジしながら今の左馬刻をつくりあげてきました。その集大成みたいなものが「Backbone」だと感じてます。

ーーサイプレス上野さんがリリックを手掛ける意味を感じますね。

浅沼:そうですね。サ上さんは、楽曲提供はもちろんですけど、『3rd LIVE』で欠席だった僕のかわりに左馬刻のヴァースをラップしてくださったことが印象深いです。そのお礼として「サ上のアニキ、この恩義は必ず。」(※1)とSNSで書いたら、その呼び名を気に入っていただけたのか、リリックに盛り込んでくださったり。いちばん嬉しかったのは、ディビジョン単独ライブで「Uptown Anthem feat. 碧棺左馬刻(from「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」)」をコラボさせていただいた時。「俺たちに任せりゃ間違いないけど、任せたいやつも出てきたから呼んじゃいます! マイメン左馬刻!」って呼び込んでくださったんです。あれは一生の思い出ですね。

ーー素敵な関係性ですね。

浅沼:『ヒプノシスマイク』というコンテンツでは、“次元の壁を越える”というキーワードがいろんな曲に出てくるんですよ。サ上さんの曲もそうだし、5月4日に開催された『EVIL A LIVE 2024』でももいろクローバーZさんとリーダーズ(Division Leaders from ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-)でコラボした「Cross Dimension」も“次元が交叉する”という意味だし、一郎も〈二次元でも三次元でも俺は俺だから〉(「Division All Stars ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- +」)って歌っていますしね。『ヒプステ』(『「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」Rule the Stage』)のキャスト陣とのクロストークイベントもそう。ほかのコンテンツではなかなか交わらなかったところに挑戦しているのが面白いなと思います。

ーー「Backbone」の歌詞はドラマトラックともリンクしつつ、左馬刻の新たな覚悟を感じました。リリックはどういうふうに受け止めましたか。

浅沼:左馬刻はずっとまっすぐな人なのでブレてはいないんですけど、そこに、より貫禄みたいなものがプラスされたように感じました。いろいろなことを受け入れてきたからこその、今の姿というか。それこそ2回のディビジョンラップバトルで、嫌というほど敗北も味わってきたし、妹を取り戻すこともできなかった。さらに自分がずっと信じていたことが実は誤解だったことがわかったり――そういうことを全部ひっくるめて噛み締めた強さを感じます。

ーー変化はしつつ、芯はブレないという。

浅沼:そうですね。芯がブレないというのは、銃兎にせよ理鶯にせよ、ヨコハマ全員に共通するものではありますけど。

ーードラマトラックについてはいかがでした?

浅沼:MAD TRIGGER CREWとして、ひとつ完結した印象がありますね。あと、ドラマトラックのなかでのラップが、今までとちょっと違ってとても新鮮でした。

ーーここから3rdバトルがありますが意気込みは……?

浅沼:ヨコハマを推してくださってる方々も、駒ちゃんも神尾さんも「左馬刻を玉座に」と言ってくれて本当にありがたいです。バトルって僕らだけの問題ではなくて、敗北は多くのヘッズが悲しむのはもちろん、楽曲を提供してくださる方々にも悔しい思いをさせちゃうので、負けてたまるか、と思ってます。現に、ICE BAHNさんはライブで共演した際「めちゃくちゃ悔しかったっつーの!」っておっしゃってましたしね。ヨコハマの本気、見せてやります。

ヒプノシスマイク 『.MAD TRIGGER CREW』 Drama Track 「Time For Heroes」

ーーその前に、まずは11月に『ヒプノシスマイク –Division Rap Battle- ディビジョン・ファンミーティング』が控えていますね。

浅沼:ヘッズに対して、ライブの時よりもずっとフランクに接することができると思うので、楽しみにしています。左馬刻を演じている姿しか知らない方々には、普段の僕の姿を見てがっかりさせちゃうかもしれないですけど……(笑)。ヘッズが手を振ったりしてくださるのを、ずっと眉間にシワを寄せて無視し続けるのって、案外大変なんですよ(笑)。思い切り楽しんでいただけるように、精一杯頑張ります。

ーー(笑)。この先の『ヒプノシスマイク』に期待してることはありますか?

浅沼:やってみたいことは山ほどあるんですけど……“ヨコハマ”ですから、やっぱり横浜のどこかで何かやれたらなあって思ってます。たとえば横浜の海でクルージングしながらのイベントとか、中華街でディナーを食べながらのイベントなんてやれたら素敵だなあと。期待していることで言えば、やっぱり楽曲提供のアーティストさん。参加していただきたい方々がまだまだたくさんいらっしゃるので、今後の楽曲も楽しみにしています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる