「最終的にはコミュニティになりたい」 WurtS、アーティストとしての進化とこれから
WurtSの中で大きくなる“コミュニケーション”の比重
――昨年には[Alexandros]との「VANILLA SKY (feat. WurtS)」でのコラボもありました。これはどういう経験になりましたか?
WurtS:コラボすることによって他のアーティストがどういう曲作りをしているのかという発見がありました。[Alexandros]さんの楽曲制作って、レコーディングしている中でメンバーさんそれぞれが意見を出し合ってどんどん良いものができていくみたいな感じなんです。最初にデモがあるんですけど、完成したものは良い意味で全然違うものになっている。その現場を初めて見て、自分の曲作りはデモそのままでの進行だったので、全然違うんだな、それってアリだなって思いました。
――いろんな経験を経て、WurtSというアーティストがやれること、表現の可能性が広がってきたという感じなんですね。
WurtS:コミュニケーションが増えたことで、どんどん吸収できるものが増えたという感覚はひしひしと感じていますね。アレンジにおいても、僕は音楽理論に詳しくはないので感覚的に伝えてしまう部分もあるんですが、それを仲介して訳してくれる方と一緒に作業することによって楽曲のレパートリーも広がる。頭の中にあるものを明確に出せるようになってきたかもしれません。
――それを踏まえて、改めてお伺いできたらと思います。デビューの頃に取材でお会いしていたときはご自身のことを「研究者×音楽家」と言っていましたよね(※1)。そういう自らを実験体にしたマーケティング研究としてのマインドは今もあるとは思うのですが、“研究者”としてのWurtSはこの3年間の“音楽家”としてのWurtSの変化をどう見ていますか?
WurtS:客観的に見ると、ライブにおいての表現はすごく進化できたし、楽曲制作においても、独りよがりの制作から視野が広がったと思います。聴いている人たちを意識した楽曲作りができているなと。視野が広がって社交的になった、みたいな進化がある気がします。
――これは僕なりの解釈なんですけど、「マーケティング」から「コミュニケーション」になった感じがするんですよね。音楽の役割が変わっていった。自分の部屋で作ったものがTikTokを介してどれだけ広がっていくかというのは「マーケティング」の実験で、フェスの場で後ろの方の人にどれだけ興味を持ってもらえるかというのは、お客さんとの「コミュニケーション」である。遠くに届けるっていう意味では同じだけど、その感覚の違いが大きくなっているのかなと思ったりしました。
WurtS:まさしくそうだという気がしますね。WurtSが始まった頃は、いかにデジタルを駆使してまず知ってもらえるか、音楽をいろんな人に届けるかということを、マーケティングの考え方でやっていて。そこから、楽曲とWurtSを少しは知ってもらえたような気がしています。もちろん今もマーケティングの考え方もあるんですけど、お客さんとのコミュニケーションであったり、制作においてのコミュニケーションであったり、そういうコミュニケーションの比重が大きくなってきている。それが結果として、マーケティング的な言葉で言うと「WurtSのブランディング」になってきているなと思います。
WurtSのテンプレートに続く人たちがどんどん出てきてほしい
――今の音楽シーンでのWurtSについても聞かせてください。The 1975への憧れがルーツにあったということを以前に語っていましたが(※2)、そこからどんな変化がありましたか? たとえば今はどんなアーティストに影響を受けたりしていますか?
WurtS:The 1975さんからは今でも影響を受けていますし、変わることに対しての憧れはありますね。変わることのできる強さを僕は大事にしているので、すごくリスペクトしています。加えて、今はフェスや対バンライブでご一緒したアーティストに対してのリスペクトや憧れをどんどん持つようになっていますね。特に[Alexandros]さんとのコラボは僕の中で一つの大きな分岐点だったので、バンドというものへのリスペクトというか、バンドの良さをどれだけ吸収できるんだろうみたいなことを考えています。あと、サカナクションさんはクラブミュージックとロックを融合させてすごくかっこよく見せているというところで、先をどんどん進んでいる存在として参考にしていますね。
――WurtSというアーティストを俯瞰で見ると、日本のロックシーンの先達が切り拓いたきたものを受け継ぐ意識があるけれども、その一方で自分から始まる文化みたいなものもある。そういうユニークな立ち位置になっている感じがします。
WurtS:そうですね。TikTokで無名の人がいきなり大きくなっていく流れの中で、WurtSのやり方は一つのテンプレートになったような気がしていて。音楽を作って、それをTikTokで上げて、そこから火がつく。それに憧れてアーティストを始める人たちも増えてきました。そこから、次はライブ力が問われるような場所にきて他のアーティストさんに負けないようにということを考えた時に、デジタルとフィジカルの両面で頑張っていく必要がある。そのラインを作り上げていきたいと思いますし、そこは僕の立ち位置でもあると思っています。
ーー単にTikTokから出てきたというだけでなく、たとえば映像のディレクションに携わっていたり、音楽だけではなくトータルで活動自体をデザインしているのも大きいですよね。いわゆるブランディングの価値観がある。そういうタイプのアーティストとしてWurtSが新しく切り拓いた道は確かにあるなと思いました。
WurtS:自分でセルフプロデュースをするというのは、音楽だけではなく、アートワークであったり、映像であったり、いろんな部分をトータルでプロデュースするものでもあるので。音楽ももちろん大事だし、自分がどう見られているか、それこそブランディングやマーケティングに繋がってくるんですけれど、そこがアーティストの一番大事な部分なんじゃないかという価値観を持っています。あと、最近すごく思っているのは、「最終的にWurtSはコミュニティになりたい」ということ。WurtSというカルチャーがあって、音楽も映像もあるし、考え方やイズム的なものもある。そういうトータルでのカルチャーとして受け入れられることが僕の目標なんじゃないかな、と最近思うようになりました。
――コミュニティを作りたいというのは面白いですね。具体的にはどういう感じなんですか?
WurtS:WurtSのテンプレートに続く人たちがどんどん出てきてほしいし、それこそWurtSの音楽だけではなくて、その見せ方であったり、そういう部分に対する同じ気持ちを持った人たちがどんどん集ってほしいというか。アーティストとして見られたい思いもあるんですけど、WurtSをきっかけに人々が集まってくるような、そういう存在になっていきたいという感じですね。僕がWurtSとして目指してる場所は、CDショップに置かれるというより、一つのカルチャーのジャンルとしてヴィレッジヴァンガードに置かれるようなイメージ。そうなったら面白いんじゃないかなと思います。
――この先のライブについても聞かせてください。『WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅲ 』が始まりましたが、どんなツアーにしたいと思っていますか?
WurtS:去年にやった『WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅱ 』でWurtSのライブスタイルが確立されたような気がして。それこそクラブミュージックとロックミュージックの融合だったり、そういう部分をより突き詰めていくのが今回の『WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅲ 』なのかなと。セットリストもより攻めたものになるんじゃないかと思っています。
――そして、10月31日には武道館公演も決まりました。どういうライブにしたいですか?
WurtS:武道館は憧れの場所ではあるんですけど、あまり記念としては考えていないですね。ここをハイライトにするわけではなく、より会場を大きくしていって、その都度そこでできる何かをしようみたいな。そういう感じで考えてます。
※1、2:https://realsound.jp/tech/2021/11/post-891093.html
■リリース情報
『エヴォリューション』
2024年5月22日(水)発売
Download:https://lnk.to/Ws_Evolution
■ツアー情報
『WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅲ』
・5/29(水) 新潟LOTS OPEN 18:00 / START 19:00
・5/30(木) 長野CLUB JUNK BOX OPEN 18:30 / START 19:00
・6/6(木) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM OPEN 18:00 / START 19:00
・6/8(土) BLUE LIVE HIROSHIMA OPEN 17:00 / START 18:00
・6/10(月) 高知CARAVAN SARY OPEN 18:30 / START 19:00
・6/11(火) 高松festhalle OPEN 18:00 / START 19:00
・6/22(土) 鹿児島CAPARVO HALL OPEN 17:30 / START 18:00
・6/23(日) 熊本B.9 v1 OPEN 17:00 / START 18:00
・6/25(火) Zepp Fukuoka OPEN 18:00 / START 19:00
・6/26(水) Zepp Fukuoka OPEN 18:00 / START 19:00
・6/29(土) 福井県県民ホール OPEN 17:00 / START 18:00
・7/3(水) 仙台GIGS OPEN 18:00 / START 19:00
・7/5(金) Zepp Sapporo OPEN 18:00 / START 19:00
・7/10(水) Zepp Nagoya OPEN 18:00 / START 19:00
・7/11(木) Zepp Nagoya OPEN 18:00 / START 19:00
・7/16(火) Zepp Haneda(TOKYO) OPEN 18:00 / START 19:00
・7/18(木) Zepp Osaka Bayside OPEN 18:00 / START 19:00
・7/19(金) Zepp Osaka Bayside OPEN 18:00 / START 19:00
<チケット代金>
スタンディング: 5,500円(税込)、2F指定席:6,500円(税込)
※各公演別途ドリンク代必要
■公演情報
『WurtS LIVE AT BUDOKAN』
2024年10月31日(木)日本武道館
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット代金: 8,000円(税込)※未就学児入場不可
オフィシャルHP詳細:https://wurts.jp/news/1365/
■関連URL
Official Website:https://wurts.jp/
X:https://twitter.com/wurts2021
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