コライトセッションや著作権セミナーも 音楽クリエイターに特化したイベント『KENDRIX EXPERIENCE』立ち上げの狙い
3月20日、音楽クリエイター向けのイベント『KENDRIX EXPERIENCE』が開催される。クラムボン・ミト、DÉ DÉ MOUSE、ぷにぷに電機、Watusi、遠藤ナオキ、宮田‘レフティ’リョウ、麦野優衣(Yui Mugino)、エンドウ.といった幅広い作曲家・アーティストが出演し、「音楽ができるまでをのぞいてみた」と題した実演企画や、ビジネスセミナーなどを行う。本稿では、主催者や出演者からのコメントを交えつつ、音楽クリエイターに特化した本イベントの狙いや見どころについてご紹介したい。
本イベントの主催を務めるのが、日本音楽著作権協会(JASRAC)が運営する音楽クリエイター向けDXプラットフォーム「KENDRIX」だ。クリエイターが制作した音源ファイルをKENDRIXに登録すると、その楽曲がいつ創作されたのかを証明するための「存在証明」を発行することができたり、クリエイター自身の「身元確認」ができるシステムを使用することができる。楽曲の存在証明はブロックチェーン、クリエイターの身元証明にはeKYCの技術を活用。すべてWeb上で完結する仕組みで、音楽クリエイターなら誰でも無料で利用することができるという。また、KENDRIXに登録することでJASRACと信託契約を締結できるようにもなっており、複雑だった契約のハードルを下げることで、一人でも多くのクリエイターが適正な著作権の対価を得られるような土壌を整えている。
このたび、KENDRIX主催の初のオンサイトイベントを開催するに至った経緯について、日本音楽著作権協会の常務理事である中戸川直史氏に話を聞いた。同氏はKENDRIXに関する二つのプロジェクトをいずれも統括している。
「KENDRIXは2022年10月にローンチしました。以降、オウンドメディアの『KENDRIX Media』やSNSなどで情報を発信しています。今回、テキストなどでは伝えきれないKENDRIXの魅力や可能性を知っていただくため、今後の改善につなげていくため、オンサイトにこだわって企画しました」
『KENDRIX EXPERIENCE』は、初開催にもかかわらずリアルの参加者は定員に達し、同日はYouTubeチャンネルでの生配信を行う予定だ。
本イベントの見どころは大きく3つある。まずは遠藤ナオキ、宮田‘レフティ’リョウ、麦野優衣(Yui Mugino)、エンドウ.が参加する「音楽ができるまでをのぞいてみた 公開収録1」。ステージ上でコライトによる曲づくりをリアルタイムで行うパートだ。宮田‘レフティ’リョウによると「なかなか見ることのできない楽曲が作られていく様子をお楽しみいただければと思います」とのこと。また、このコライト曲をなかねかな。のシンガー、なかねかなが歌唱することも決定しており、5名のプロフェッショナルのクリエイティビティが集結し、どのような楽曲が完成するのか楽しみだ。
二つめは「TikTokでバズりたい!印税について学びたい!さわりさと学ぶDIYアーティスト向け実践講座」。2023年に活動をスタートしたばかりのシンガーソングライター・さわりさが、TikTokの仕組みや著作権と著作隣接権(原盤権)、TikTokでバズるための施策などを学んでいくというもの。「音楽の原盤権のマーケットプレイス」を提供するOIKOS MUSICの共同代表でもある前述の宮田‘レフティ’リョウやTikTokを運営するByteDanceの担当者らが登壇し、クリエイターにとって有益な情報が提供されるという。リアルでの参加者はもちろん、配信の視聴者も新人アーティスト・さわりさと同じ目線でTikTokや著作権に関する基礎を学ぶことができそうだ。
そして三つ目が、ミト、DÉ DÉ MOUSE、Watusiが参加する「音楽ができるまでをのぞいてみた 公開収録2」。DÉ DÉ MOUSEによると「コンテンツに関わる時の音楽の作り方や曲制作したプロジェクトファイルなどを一部お見せしようかなと思っております。Watusiさんとミトさんとのトークなのでほんわかしたムードでお届けできると思われます」とのこと。
イベント会場では、音楽クリエイターにゆかりのある企業のブースや、プロのクリエイターとトークができるブースなども用意されている。ローランドのブースでは展示機材のデモ演奏が行われたり、ハッシュタグ投稿でエントリーできるプレゼントキャンペーン(ローランド「SP-404MKⅡ Stones Throw Limited Edition」を抽選で2名にプレゼント)が行われる予定だ。
出演者の宮田‘レフティ’リョウ、DÉ DÉ MOUSEは、本イベントに期待することについて以下のように語る。
「クリエイター、リスナーとの交流の場として、そして新たな音楽が生まれるきっかけになると良いなと思っています」(宮田‘レフティ’リョウ)
「クリエイター同士の出会いやコラボってハードルが大きいことがたくさんあるので、クリエイター同士の出会いの場だったり、新しい表現を発見できる場になれば良いと思います」(DÉ DÉ MOUSE)
学びや刺激を得られる場、さらには交流が生まれる場としても大きな期待が寄せられている『KENDRIX EXPERIENCE』。KENDRIXは今後、初のオンサイトイベントの開催をきっかけに、音楽クリエイターの新たなコミュニティとしての発展を目指していくという。クリエイターはもちろん、音楽に関心のあるユーザーが広く楽しめるコンテンツが揃った初回開催をライブ配信でもチェックしたい。
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