サンボマスター、SUPER BEAVERからヤングスキニー、ねぐせ。まで 長尺タイトル曲の面白さ

 3月8日より放送開始のドラマ『これから配信はじめます』(テレビ東京系)の主題歌を、4人組ロックバンド・ねぐせ。が担当する。気になるのが、その楽曲タイトル「めちゃくちゃ好きな人を愛すように世界を愛して!」だ。ねぐせ。は直近でも「あの娘の胸に飛びこんで!」「愛してみてよ減るもんじゃないし」といった楽曲をリリースしており、聴き手に呼びかけるような長いタイトルをつけることが多い印象である。

 一般的に、楽曲タイトルは単語やその組み合わせなど、短く完結させるケースが多いだろう。とはいえ、長い楽曲名が特段珍しいわけでもない。岡村靖幸「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」(1990年)、B’z「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」(1993年)など、長尺タイトルの楽曲は以前から誕生してきた。

 ねぐせ。のようなロックバンドと長尺タイトルの組み合わせで考えると、思い浮かぶのはサンボマスター。彼らは「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」(2005年)、「全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ」(2005年)、「できっこないを やらなくちゃ」(2010年)、「オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで」(2017年)など、長尺タイトルのヒット曲をいくつも生み出してきた。楽曲だけでなく、アルバムタイトルも『サンボマスターは君に語りかける』(2005年)、『僕と君の全てをロックンロールと呼べ』(2006年)など一文のようなものが多い。作品に長いタイトルをつけることが、バンドの1つの個性になっているようにも思う。

サンボマスター / 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ MUSIC VIDEO
サンボマスター「オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで」MUSIC VIDEO

 クリープハイプも『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』(2012年)、『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』(2014年)など、長尺タイトルの作品を多く発表している。同じように、直近ではヤングスキニーも『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』(2023年)、『どんなことにでも幸せを感じることができたなら』(2023年)と、長いアルバム/EPタイトルをつけている印象だ。ねぐせ。やサンボマスターとは異なり、クリープハイプやヤングスキニーの作品タイトルからは“後悔”や“悲しみ”のような、ややネガティブなニュアンスを感じる。長いタイトルになると、よりアーティストのキャラクター性が出やすいのも面白いところである。

 このような長尺タイトルの作品の魅力とは何か。まず、タイトルを見たときに興味を抱きやすい点が挙げられる。特に音楽配信サービスが普及した近年では、プレイリストで新たな楽曲を知る機会も多いだろう。プレイリストで楽曲一覧を眺めたときに、長い楽曲名はインパクトがあり、目を引きやすい。

 また、タイトルが長いと覚えづらいデメリットもあるが、一方で略称が生まれるケースも少なくない。例えば、ねぐせ。の「愛してみてよ減るもんじゃないし」はファンの間で“愛減る”と呼ばれている。このように略称で呼ぶことで、楽曲への愛着が高まるのも魅力のひとつだろう。

ねぐせ。「愛してみてよ減るもんじゃないし」MUSIC VIDEO

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる