サンボマスター、SUPER BEAVERからヤングスキニー、ねぐせ。まで 長尺タイトル曲の面白さ

 そして、長いタイトルは曲を聴く前からどんな曲なのかイメージを膨らませやすい。タイトル自体が、楽曲や作品の核になり得るためだ。

 長尺タイトルの作品は、歌詞を元に名前がつけられているものと、そうでないものの大きく2パターンである。直近の楽曲でいえば、SUPER BEAVERの「幸せのために生きているだけさ」(2024年)は、サビで〈幸せのために生きているだけさ〉〈幸せのために生きていくだけなのさ〉と歌っており、前者に当てはまる。先述したねぐせ。の「愛してみてよ減るもんじゃないし」も同様だ。アルバムでも、収録曲の歌詞がアルバム名になっているケースがある。例えば、クリープハイプの『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』は「愛の標識」に、『泣きたくなるほど嬉しい日々に』(2018年)は「泣き笑い」に登場するフレーズだ。ヤングスキニーの『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』は、「ごめんね、歌にして」の〈歌に乗せてしまえば、/どんなことでも許されると思ってたよ〉の歌詞を元にしていると考えられる。

SUPER BEAVER「幸せのために生きているだけさ」MV (テレビ朝日系『マルス-ゼロの革命-』主題歌)
ごめんね、歌にして (Short ver.) 【Lyric Video】

 一方、サンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」は、タイトルが歌詞に登場するわけではない。しかし、〈君ならできない事だって/出来るんだ本当さウソじゃないよ〉のように、曲中で歌われているのは挫けそうな人へ向けたエールだ。“できないと思っても諦めないで”という曲のメッセージを、タイトルでは歌詞とは別の言い方で表現している。

サンボマスター / できっこないを やらなくちゃ MUSIC VIDEO

 長尺タイトルには、曲やアルバムを通してアーティストが一番伝えたかったことが比較的ストレートに表れていると言えるだろう。リスナーは楽曲名から、作品が持つメッセージを受け取ることができる。さらに曲を聴くことで、作品に込められたメッセージへの理解も深まるはずだ。

 もちろん、短い楽曲名にも“なぜそのタイトルにしたのか”を考える楽しみがある。アーティストによって、タイトルのつけ方にも個性が表れているのが面白いところだ。楽曲の内容はもちろんのこと、タイトルにも注目して作品を楽しんでいきたい。

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