『コーチェラ 2024』超大物不足でも大健闘 地域性やジャンルを網羅したラインナップ解説
1月18日(日本時間)、2024年度の『コーチェラ・フェスティバル』(4月12~14日および19~21日の2週末開催)のラインナップが発表された。詳細については公式のポスター画像などを参照いただくとして、本稿では筆者の視点から今回のラインナップにおける注目ポイントをいくつかまとめていきたいと思う。
D.A.N.C.E
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— Coachella (@coachella) January 17, 2024
「超大物」不足だが、手堅く揃えたラインナップ
まず、前提として書いておきたいのは、今年は世界のフェスティバルシーン全体において、いわゆる(人気や話題性においての)超大物クラスのアーティストが軒並み稼働しない年になる可能性が高いということ。もちろん、アーティストの知名度の大小でそのラインナップの良し悪しを判断することなど到底できないわけだが、フェスティバルの醍醐味の一つとして、ヘッドライナーの名前を見た時の「おおっ!」という感覚があることは否定できない。その点において、今年の各フェスティバルはなかなかに苦労している印象がある。
その点で、さすがコーチェラというべきか、そのような状況の中でもしっかりと手堅いヘッドライナーを揃えてきた。キャリアを更新する新たな傑作『Did You Know That There's a Tunnel Under Ocean Blvd』を携え、10年ぶりにコーチェラのステージへと帰還する現代のシンガーソングライターの最高峰 ラナ・デル・レイ、あらゆる垣根を自由に越境しながらその確かなセンスとユーモアでオーディエンスを魅了し続けてやまないタイラー・ザ・クリエイター、昨年リリースの「Paint the Town Red」がSpotify上で1日に770万回以上再生され、Billboard Hot 100でも1位を獲得するほどの大ヒットを記録し、名実ともに期待の若手からトップアーティストへと大躍進を果たしたドージャ・キャットという3組は、まさに2024年のメインストリームのフェスティバルにおけるヘッドライナーのチョイスとして申し分ないという他ないだろう(意外だが、3名とも今回が初めてのヘッドライナー出演となる)。さらに、グウェン・ステファニー擁するNo Doubtが2015年以来の復活ライブを披露するというビッグサプライズまで用意されている。
また、ヘッドライナー以降においても、昨年の音楽シーンにおける最大のブレイクアーティストと言っても過言ではないアイス・スパイスや、最新作『Pink Tape』で改めてヒップホップシーンに唯一無二の存在感を示したリル・ウージー・ヴァート、BBCの「Sound of 2024」で1位を獲得し、いよいよ大ブレイクへの期待がかかるロンドンの5人組バンド The Last Dinner Party、先日ノミネートが発表されたばかりの第96回アカデミー賞にもノミネートを果たしたジョン・バティステや、今や最重要プロデューサーの一人となったジャック・アントノフによるソロプロジェクト Bleachersといった注目度の高いアーティストも数多くラインナップされている(後半の2組についてはラナ・デル・レイとの共演にも期待したい)。
個人的にはアマピアノやアフロビートを取り入れた「Water」で世界的な大ヒットを記録したTylaや、NewJeansへの楽曲提供でも名の知られるようになったポストR&Bにおける最重要アーティストといっても過言ではないErika de Casier、近年の若い世代を中心としたニューメタルリバイバルの動きの中でも特に名前が挙がることの多いDeftonesのステージにも期待したいところだ。
ラインナップ全体を支えるラテン系アーティストたち
さて、ここからは(本稿の主題とも言える)全体のラインナップの傾向や注目どころについてピックアップしていきたい。まずは何と言っても印象的なのが、ラテン系アーティストの存在感の強さだ。昨年はついにバッド・バニーがスペイン語圏のアーティストとして史上初のヘッドライナー出演を実現させたが、今年も1日目と3日目のサブヘッドライナーとしてそれぞれ起用されたペソ・プルマ(昨年、コーチェラのステージでも披露されたベッキー・Gとの「CHANEL」などの大ヒット曲を連発したメキシコ音楽界の超新星だ)とJ. バルヴィンを筆頭に、さまざまなジャンルのアーティストがラインナップ全体における重要な役目を担っている。
特に注目なのはアルゼンチン出身のDJ/プロデューサー、ビザラップのステージだろう。彼が2019年に始動した「BZRP Music Sessions」(さまざまなアーティストとのセッションシリーズ)は、EDMやヒップホップなどをベースにしつつも、相手の魅力をしっかりと引き出した見事な仕上がりが多くのリスナーの反響を呼び、今では新作がドロップされるたびに数千、時には数億回再生を叩き出し、ラウ・アレハンドロやシャキーラといった大物アーティストが参加するほどの一大コンテンツとなっている。昨年公開された「#55」に参加したペソ・プルマは間違いなく出てくるとして、さまざまなサプライズゲストの登場に期待したい(個人的にはVillano Antillanoと「#51」を披露してくれたら最高だ)。
また、まさに1月11日に「BZRP Music Sessions」の最新作「#58」に登場したばかりのプエルトリコ出身のラッパー ヤング・ミコも要注目だ。昨年リリースしたFeidとの「Classy 101」で初の全米チャートインを果たし、新たなクィアアイコンとしても多くの支持を集める彼女のコーチェラでのステージは、その存在感をより強く世界に知らしめる大きなきっかけとなることだろう。他にも、レゲトンやR&B、ハウスなどを自由に織り交ぜたサウンドでアルバムリリース前にも関わらず1万人規模の会場をソールドアウトさせているメキシコの3人組ポップグループ Latin Mafiaや、数億再生レベルの大ヒット曲を連発している、同じくメキシコを代表するシンガーソングライターであるカリン・レオンなど、注目のラテン系アーティストはまだまだたくさん存在する。本稿を見て気になったという方は、ぜひ他の出演者もチェックしてみてほしい。