三代目 J SOUL BROTHERSに宿るブラックネス ルーツへの敬愛がステージにもたらす独自性

すべての音楽ジャンルをインテグレートする豊かさ

 なるほど、そうか。現行の三代目JSBは、メンバーのソロ活動で(意識的、無意識的問わず)各々がブラックネスを志向し、深化させようと努めているのかもしれない。7人の中で最大のR&Bラバー、今市隆二はどうだろう。三代目JSBの楽曲は、ØMIに先んじて今市の歌い出しとなることが多い。時折これは今市のソロナンバーなのではないかと錯覚することがある。「旅立つまえに」なんて特にそう。敬愛するブライアン・マックナイトからの教示など、ブラックミュージックへの愛好が偏愛へと深化する中で、今市は2018年にソロ活動を開始した。

 タイムリーな話題だと、ブルーノ・マーズからの影響も明らかだ。東京ドームで行われた先日の来日公演を観て、なるほど今市のソロプロジェクトは、ほぼ同年代のブルーノを相当意識してるんだなと。ブルーノのファンクグルーヴやマイケル・ジャクソン的な振る舞い、公演終盤カラオケゲームと称して弾き語りを披露したその佇まいは、Nord Stage 2の前に座る今市を読み解くきっかけになる。でも僕個人の感覚では、アンダーソン・パークとのデュオ Silk Sonicとしてではないブルーノ単体より俄然、今市のソロステージの方がずっと伸びやかでメロウに聴こえる。

RYUJI IMAICHI / RILY (Music Video)

 深い敬愛はときに最大の恵みをもたらす。今や今市隆二のオリジナリティはひとつのジャンルとして確立されているといえるだろう。これを辿れば(例えばミシシッピなどの)源流までひとっ飛び? ルーツミュージック的なうねりが三代目JSBのライブへ持ち込まれたとき、単なる模倣ではない三代目JSB発信の豊かさが広がる。ライブ開演直前のワクワク感を思い起こしてみるといい。それは、夜明け前の淡い時間。あるいは、ローランド・カークによるエキセントリックなバカラックカバーや、カーラ・ブレイのアレンジ力が炸裂するうねりなど、直後に音楽がパッと華やぐマジカルな煌めきに至るまでのチャージタイム。極めてジャズ的な開演前。そこから開演後、圧巻のライブ演出には、リッカルド・ムーティがヴェルディのオペラ序曲でタクトを振るときの雄大さを引き合いに出してもいい。ポップスではなく、ジャズやクラシック音楽を三代目JSBに見出すと戸惑われるかもしれない。でもそれだけさまざまな音楽的感性が隠れている。三代目JSBとは、すべての音楽ジャンルをインテグレートする豊かさのことなのだ。

"Awakening Light" Live Performance from JSB LAND / 三代目 J SOUL BROTHERS

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