米津玄師が描いた『JUNK』という壮大なファンタジー 画面越しの出会いからドームまで辿り着いた“祝福”の瞬間

米津玄師、東京ドーム公演レポ

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』東京ドーム公演オフィシャルレポート

 米津玄師が2月26、27日に全国ツアー『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』の東京ドーム公演を開催。

 今年の1月に宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで始まった全国ツアー『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』。2月に入ってからは福岡、大阪、北海道のドームを巡り、国内の最終地点となった東京ドーム公演は、米津のキャリア史上最大規模のワンマンライブとなった。昨年8月に4年ぶりのアルバム『LOST CORNER』を発表し、年末にはNHK連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合)の主題歌「さよーならまたいつか!」で『NHK紅白歌合戦』に6年ぶりに出場した米津。ツアーでは『LOST CORNER』の収録曲を中心に全24曲を披露し、計35万人のファンを沸かせた。

 開演時刻を迎えると、会場に雷鳴が轟き、ステージ後方のLEDディスプレイに真っ赤な稲妻が走る。不穏な雰囲気の中、米津はバンドメンバーの堀正輝(Dr)、須藤優(Ba)、中島宏士(Gt)、宮川純(Key)に続いて登場し、『LOST CORNER』のオープニングを飾るナンバー「RED OUT」でライブの口火を切った。華やかなホーンサウンドに合わせてLEDビジョンに街並みが現れると、「感電」のパフォーマンスがスタート。ダンサーチーム・TEAM TSUJIMOTOの面々が全身を使って楽曲の世界観を表現し、米津は気持ちよさそうに体を揺らしながら歌声を届けた。

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』(撮影=太田好治、鳥居洋介、ヤオタケシ、横山マサト)

 街並みが歪み、巨大なバルーンが倒れ始めると、アイナ・ジ・エンドとのコラボレーション楽曲「マルゲリータ」へ。米津はダンサブルなこの曲を軽やかに歌いこなした。「今日は来てくれて本当にありがとうございます。今日という得難い1日を楽しく過ごしていきたいので、どうか最後までよろしくお願いします」と挨拶した米津は、ギターを弾きながら人気曲「アイネクライネ」を披露。楽曲が持つ繊細な雰囲気とは裏腹に、米津の力強い歌声に導かれるようにバンドの演奏は徐々に熱量を帯びていった。

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』(撮影=太田好治、鳥居洋介、ヤオタケシ、横山マサト)

 ジョージアのCMソング「LADY」は、宮川が奏でる流麗なピアノのインタールードを経て始まった。LEDビジョンには同曲のミュージックビデオの世界観を思わせる横断歩道が映し出され、米津はダンサーを従えて花道をランウェイのごとく歩きながら歌唱。春の陽気にぴったりなサウンドスケープが会場いっぱいに広がり、オーディエンスはその軽やかなリズムに身を委ねた。

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』(撮影=太田好治、鳥居洋介、ヤオタケシ、横山マサト)

 Netflixシリーズ『さよならのつづき』の主題歌として書き下ろしたミディアムバラード「Azalea」では、ステージ上でシアーな布が幻想的に揺らめく演出が目を引く。花道から大きな布が上空へと浮かび上がり、ゆらゆらと舞う中で披露されたのは「ゆめうつつ」。布の演出に加え、バレエを思わせる優雅なペアダンスがステージを彩る中、米津は伸びやかな歌声を届けた。

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』(撮影=太田好治、鳥居洋介、ヤオタケシ、横山マサト)

 「さよーならまたいつか!」のステージでは、カラフルな袴を穿いたダンサーがステージにずらり。瞬く間に「虎に翼」の世界観が作り上げられ、無数の花吹雪が舞う中で米津は軽やかにステップを踏みながら歌う。その後は、スタジオジブリの宮﨑駿が監督を務めた映画『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」や映画『シン・ウルトラマン』の主題歌「M八七」、ドラマ『アンナチュラル」』(TBS系)の主題歌「Lemon」、アニメーション映画『海獣の子供』の主題歌「海の幽霊」とスケール感のあるタイアップ曲が続き、米津は祈るように歌声を響かせた。

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』(撮影=太田好治、鳥居洋介、ヤオタケシ、横山マサト)

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』(撮影=太田好治、鳥居洋介、ヤオタケシ、横山マサト)

 音楽を届けるという原体験がライブではなく、ニコニコ動画を通じてだった米津にとって、ドームでの舞台は夢や憧れではなく、現実味のないファンタジーのようなものだった。画面越しのコミュニケーションだけだったボカロP“ハチ”から、米津玄師名義でも活動を始め、ライブをする機会が増えていく中で、こうしてドームまでたどり着いたことについて米津は「何万人もの人が自分の音楽を聴きに来てくれることは、祝福だと思う」と述べる。そして「どういうきっかけで俺の音楽を聴いてくれたのかわからないですけど、こういう大きい場所で再び会えるっていうのは……もう、生きてきてくれてありがとう、という感じなんです。本当に、みんな今まで生きてきてくれてありがとう!」と、来場者に感謝の思いを伝えた。

『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』(撮影=太田好治、鳥居洋介、ヤオタケシ、横山マサト)

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