NOA、新曲「Seasons」で届ける春――「“四季”を共有していきたい」 アーティスト、そして俳優としての今

NOAが、新曲「Seasons」をリリースした。自身の誕生日の翌日である3月14日にデジタルリリースされた同曲。お馴染みともなってきたSunnyとの共同プロデュースによって生まれた「Seasons」は、春を描いたミッドバラードだ。「今年は四季というものを曲を通して表現したい」とNOA自身が語っていたが、デビュー5周年を迎える2025年もたくさんの新しいNOAに出会えることを予感させてくれる、そんな楽曲に仕上がっている。
新曲についてはもちろん、まもなく始まるファンミーティングについて、演技について、そしてこれからについて、じっくり話を聞いた。(編集部)
コロナ禍のデビューと時代特有の広がり方
――デビュー5周年という節目を迎えられたこと、おめでとうございます。音楽活動を始めてからの5年間を振り返って、キャリアの転機だったと感じる出来事や作品はありますか?
NOA:まず『君の花になる』(TBS系)というドラマに出させていただいたことで、多くの方に知っていただく機会が広がったと感じています。コロナ禍を含めて考えると、「TAXI feat. tofubeats」という楽曲がアーティストとして大きな転機だったと思いますね。ネットの存在によって、よりワールドワイドに自分の思いが届けられる、この時代特有の広がり方というものを体感でき、「多くの人が同じ思いを持っているんだな」と最も強く感じた瞬間でした。キャリアの転機と言えば、このふたつになると思います。
――コロナ禍という特異なタイミングでデビューされましたが、当時を振り返ってどんな気持ちでしたか?
NOA:自分がデビューするにあたって想像していた世界とはかなり違った状況で、正直、先行きに不安を感じていました。当時は「これでいいのだろうか?」という疑問もありましたね。デビューしたばかりで経験も少ないなかで、ある種の挫折感を感じていたというか。このままライブ活動を含めたアーティスト活動を続けられるのか、自分の気持ちも維持できるのかという心配が少なからずありました。
――そのなかでモチベーションとしては、ファンの方とリアルで交流するというのを目標にされていたと思うんですが、そういう心持ちは強かったですか?
NOA:強かったですね。SNSでも多くのファンの方から毎日のようにメッセージをいただいて、国内外からの「会える日を待っているよ」という言葉に支えられながら頑張ってきました。本当に、ファンのみなさんの存在が僕の原動力だったと思います。
――これまでの5年間の活動のなかで、自分のキャリアが上向いてきたと感じたのはいつ頃でしたか?
NOA:それも「TAXI」以降でしたね。1stアルバム(『NO.A』)を出す頃には、コンサートや対面イベントが普通に行われるようになり始めていました。マスクを外して声を出せるようにもなってきた時期だったので、「これこそが自分の目指していたものだ!」という実感が湧いてました。デビューしたての気持ちに戻ったというか。「やっと本当の活動が始まった」という感覚で、2023年は1年目のような新鮮な気持ちで活動していましたね。
――2023年の初アリーナ公演以降、ライブを重ねるなかで新たな気づきはありましたか?
NOA:去年のツアー(『NOA “Primary Colors” HALL TOUR IN JAPAN ~Flashing Lights~』)では、ひとつの作品を観終わったような満足感をお客さんに感じてもらいたいと思って、構成を作り直しました。通常ならMCを入れるような場所であえてMCを入れずに曲をつなげるなど、『Primary Colors』(2024年5月リリースの2ndアルバム)という三原色をテーマにした演出を意識しました。色のグラデーションも含め、観客の方々が曲ごとの色彩やその変化を感じられる、ミュージカルのような構成を心がけて。ただ、それを終えて気づいたのは、もっとお客さんを巻き込めばよかったな、という思いです。一方的な演出になってしまった部分もあり、お客さんともっと交流するような場面があればよかったなというのが少し反省点ですね。
――『Primary Colors』では3カ国語の特性を活かした表現に挑戦されていましたが、今後の音楽制作において、さらに挑戦してみたい表現や新しい試みはありますか?
NOA:今年はより自分の音楽性を明確にしていきたいです。ファンの方や一部の方からは「NOAの音楽はこういう音楽だよね」というイメージのようなものを抱いてくださっている方もいらっしゃるんですが、自分のなかではまだそれが明確ではない気がするんです。だからこそ、自分のカラーをより強めていきたい。たとえば、R&Bに特化したり、ひとつのジャンルをもっと極めていくような取り組みをしたいですね。昨年のツアーでどのジャンルでお客さんが盛り上がってくれるのかという感覚も掴めたので、それを活かしながら新たな曲作りに挑戦していきたいです。
冬を乗り越えるための新曲「Seasons」
――3月14日にリリースされた新曲「Seasons」は、「別れと出会いの時期に寄り添う切ないミッドバラード」と紹介されていて。この楽曲に込めた思いや“春”という季節を選んだ理由は何かありますか?
NOA:去年は四季を通してファンのみなさんとお会いして思い出を作りましたが、今年はその四季というものを曲を通して表現し、一曲一曲がその季節を思い出せるような一年になればいいなというアイデアがまずありました。そのなかで“春”というのは、始まりであり別れもあるという、切なさとワクワクが混じっているような季節だと感じています。
5周年ということで振り返ってみると、この5年間だけでもさまざまな出会いと別れがありました。少し肌寒くて人肌が恋しくなるような時期に、みなさんをあたためて寄り添えるような楽曲を作りたいという気持ちから生まれたのがこの曲です。
――再びSunnyさんとタッグを組まれていますよね。今回はどのような制作プロセスで楽曲を作り上げていったのでしょうか?
NOA:今年最初の曲をどのようなものにするかを考えた時、恋愛で言う倦怠期のような状態を季節に喩えてみようと思いました。仮に倦怠期が冬だとしたら、「この先に暖かい季節が待っているから一緒に迎えよう」という倦怠期を乗り越えるメッセージを歌詞のテーマにしたいと考え、そこから書き進めていくうちに、倦怠期だけでなく、人との出会いや卒業で離れ離れになる友達同士など、さまざまな状況にも共通する要素が生まれてきて。より多くの人が共感できるような歌詞に発展していきました。
ビート感については、切なさもありながらも希望がある表現をSunnyさんと一緒に目指しましたね。ビートを全部抜いたり、寂しさを強調するようなことはしたくなかったので、リズム感があって、そこにギターで壮大さや明るさを表現するようにしました。
――楽曲制作中の印象的な出来事はありましたか。
NOA:曲中に流れるギターパートがあるのですが、ギタリストの方には「ラスサビのギターリードは完全にフリーでやってください」とお願いしたんです。そうしたら素晴らしい演奏をしてくださって。Sunnyさんともすごく興奮しました。一発録りでしたが、もうこれで完璧だという感じで。自分ひとりで作ると打ち込みメインになりがちですが、生の楽器が入ることで曲がより生き生きとしてくる感覚がとても刺激的でしたね。
それと、以前からご一緒している常楽寺澪さんに今回も参加していただきました。これまで基本的にオンラインでのやり取りだったのですが、今回は初めて同じ部屋で一緒に歌詞を書いていって。常楽寺さんはノートに手書きで歌詞を書かれていて、今の時代、デジタルで書くことが多いなか、手書きで歌詞を書くというのがとても素敵だなと思いましたね。お会いすることがなかなかできなかったので、制作が始める前は「本当に存在する人なのかな?」とSunnyさんと冗談を言い合うほどで(笑)。でも、実際にお会いしてみると、本当に気さくで素敵な方でしたね。