クラムボン ミト、音楽家としての原体験 TM NETWORK、大江千里ら輩出したEPIC・ソニーの革新性

EPICの革新的なところが愛おしい

ーーそういう視点でいくと、当時他のレコード会社も明らかにEPICを意識した類似デザインのものを出してきたり、坂西伊作的な映像を撮る人が出てきたり、わりと追従する方も増えて、他のレーベルでEPICっぽいものが出てくる現象も起きていたんです(笑)。

ミト:クラムボンでMVを作ったときに少し素人仕事っぽいというか(笑)、着飾らない状態でもいいんだみたいな考え方を持っていて。当時はそれを良しとしてやってはいたんですけれども、頭の隅っこに「MVってもっとアウトテイクとか撮っていいんじゃない!?」と思っていたんです。だからクラムボンで「パンと蜜をめしあがれ」「雲ゆき」のMVを撮るとき、インタールードを作ってほしいとリクエストして、実際に作ってもらいました。その部分は、TVで放映されてもカットされがちなんですけど(笑)。そういうことをやりたがるようになったきっかけは、EPICの影響が強いなと思います。

ーーただ、クラムボンがシーンに登場したときは全然TMと結びつかなかったです。

ミト:(笑)。イクイップメント(楽器やアンプなどの設備)以外では全くと言っていいほどリスペクトは見えていなかったと思います。もはやギターがいないぞっていう。でもギター不在で押し進めた背景には、いわゆるEPICを聴いていた自分の音楽的価値観みたいなものを無理くり忍ばせていたところはあったと思います。当時はくるりやナンバーガール、さらにロキノン系の全盛期だったわけで、どうにかしてあの輪から離れたいという気持ちがものすごく強かった(笑)。

ーー(笑)!

ミト:そういう気持ちがあったから、僕らはその界隈ではすごく浮いていたと思う。スタンスとしては世代の代表的な感じで音楽を作っていましたけど、アティテュード自体があまりにもひねくれ過ぎていて。でも無理くりなつもりではやっていなくて。何か他人と違うことをやっていきたいと思っていたところも、掘り下げるとEPICに着地する可能性があります。

ーーミトさんがEPICを振り返ったときに、レーベルカラーのようなものに憧れましたか? 僕はあるときからEPICのロゴを見つけただけでレコードを買い集めるようなフリークになっちゃったんですけど。

ミト:たしかに自分の中でもそういう時代がありました。でも僕はそこから音楽をやろうと思い始めて、TMは好きなんだけれども、小室哲哉さんが影響を受けた音楽ルーツを探るようになりました。その後、TMからTMNになって小室さんはハードロックとプログレをコンセプチュアルに作るようになって。ハードロックは当時流行っていたから僕も何となく分かりましたが、プログレに関しては「なんぞや!?」という感じだったんです。でも、当時親父のレコードにKing CrimsonやYES、エマーソン・レイク&パーマー(ELP)などがあったので。(ELPの)『Brain Salad Surgery(恐怖の頭脳改革)』ってすごいジャケットだな、みたいな(笑)。神保町は中古レコード屋さんがいっぱいあるから、当時プログレっぽい商品はめちゃくちゃ安い値段で買えることがわかって。

ーー本当、90年代はレコードが底値で買えるいい時代でしたよね(笑)。

ミト:TONYレコードで3枚で100円のカット盤(廃盤レコード)などを買いながら、プログレのルーツだったらブルースロック、ブルースからサイケデリックに流れていって……。だから僕にとって音楽性への影響というよりは、音楽を自分が作り始める大きなきっかけがEPICだった。そこからめちゃくちゃいろんなところに派生していくようなイメージかな。

 どちらかと言うと進化している今のEPICの枠に自分はあまりいないと感じます。80年代~90年代前半ぐらいまでのEPICにあった、ものすごく煌びやかというか、革新的なところが愛おしい。僕がJ-POPをやりたいと思うのは、多分そこなんでしょうね。クラムボンのアルバム『まちわび まちさび』(2000年)の中に「EPIC」という曲が入っているんですけど、あの当時このタイトルの曲を作る人間は誰もいなかったと思います(笑)。あの世紀末世代から言ったら相当な“どパンク”ですよ。

ーー(笑)!

ミト:相当ハードコアだったと思う……「ロックフォーマットでアティテュードなんて語るんじゃないよ!」って言いたくなるぐらい、だいぶ暴力的でしたね(笑)。

■リリース情報
『EPIC 45 -The History Is Alive-』
発売中
価格:3,960円(税込)
https://www.110107.com/EPIC45CD

<収録内容>
【DISC 1】 1981-1989
01. 街角トワイライト / シャネルズ (1981/1/21)
02. サムデイ / 佐野元春 (1981/6/21)
03. すみれ September Love / 一風堂 (1982/7/21)
04. (め)組のひと (1983/4/1)
05. 激しい雨が / THE MODS (1983/9/21)
06. そして僕は途方に暮れる / 大沢誉志幸(1984/9/21)
07. Blue Blue Rose / BARBEE BOYS (1985/2/1)
08. ガラス越しに消えた夏 / 鈴木雅之(1986/2/26)
09. Boys Jump The Midnight / The Street Sliders (1986/11/21)
10. Get Wild / TM NETWORK (1987/4/8)
11. City Hunter 〜愛よ消えないで〜 / 小比類巻かほる (87/5/10)
12. TAXI / 鈴木 聖美 with Rats & Star (1987/11/21)
13. Rain / 大江千里 (1988/7/21)
14. 以心伝心 / 松岡英明 (1988/8/26)
15. 地図をください / 遊佐未森 (1989/2/1)

【DISC 2】 1989-2005
01. ダイナマイトに火をつけろ <2014 Mix> / BO GUMBOS (1989/7/1)
02. サマータイム ブルース / 渡辺美里 (1990/5/12)
03. WON'T BE LONG / バブルガム・ブラザーズ (1990/8/22)
04. カルアミルク / 岡村靖幸 (1990/12/1)
05. ホリデイ / 東京スカパラダイスオーケストラ (1990/12/1)
06. 晴れたらいいね / Dreams Come True (1992/10/21)
07. 生涯の恋人 / 吉田美和 (1995/12/18)
08. 夢で逢えたら / ラッツ & スター (1996/4/22)
09. これが私の生きる道 / PUFFY (1996/10/7)
10. やさしい気持ち / Chara (1997/4/23)
11. LOVER SOUL / JUDY AND MARY (1997/10/15)
12. GOING TO THE MOON / TRICERATOPS (1999/5/19)
13. ワダツミの木 / 元ちとせ(2000/2/6)
14. ignited -イグナイテッド- / T.M.Revolution (2004/11/3)
15. JOY / YUKI (2005/01/19)

【DISC 3】 2005-2022
01. 恋におちたら / Crystal Kay (2005/5/18)
02. 花 / 中孝介 (2007/4/11)
03. 帰りたくなったよ / いきものがかり (2008/4/16)
04. 虹 / Aqua Timez (2008/5/9)
05. 手紙 〜拝啓 十五の君へ〜 / アンジェラ・アキ (2008/9/17)
06. JAP / abingdon boys school (2009/5/20)
07. オレンジ / 7!! (2015/2/11)
08. 花瓶の花 / 石崎ひゅーい (2016/5/18)
09. テイクミーアウト / SCANDAL (2016/7/27)
10. さよならエレジー / 菅田将暉 (2018/2/21)
11. Bright Burning Shout / 西川貴教 (2018/3/7)
12. PHOENIX / BURNOUT SYNDROMES (2020/2/12)
13. キャラクター / 緑黄色社会 (2022/1/26)
14. Butter / 小袋成彬 (2022/4/27)
15. 恋だろ / wacci (2022/6/15)

■EPIC 45 関連サイト
●“EPIC 45th Anniversary PLAYLIST”
https://www.110107.com/s/oto/page/EPIC45_PL01
レーベル創立45周年を記念し、様々なジャンルから毎月新たな9名のセレクターたちが5カ月にわたりプレイリストを公開中。セレクターのEPICへの想いが詰まった個性的なプレイリスト。

●「EPIC 45プロジェクト特設サイト」
https://www.110107.com/EPIC45

クラムボン アルバム『imagination』発売20周年記念
発売中

「Folklore」10inch VINYL盤
初回生産限定 ¥3,300/P10-6398

<収録内容>
Side-A Folklore
Side-B Etching *エッチング・デザイン仕様

■ミト ライブ出演
Bar Isshee presents "EXTREME NIGHT R Vol.8"
2024年2月3日東京・秋葉原Club GOODMAN
OPEN 18:30 / START 19:00

出演者
内田静男/ オータコージ/ かわいしのぶ/ 黒木真司/ ゴンドウトモヒコ/ 坂田明/ 須郷 史人/ 竹久圏/ 天鼓/ 原田仁/ ヒグチケイコ/ 日高理樹/ ミト/ 森川誠一郎/ 山際英樹/ 山本達久/

■書籍情報
『バディットマガジン2 -総論EPIC-』
2024年3月発売予定
※2024年2月より先行予約スタート
表紙:木根尚登(TM NETWORK)/ 松岡英明&久宝留理子(W表紙構成)
伊豆田洋之 / いまみちともたか / 大川直人(写真家) / 小川美潮 / 杏子 / 
葛谷葉子 / 小比類巻かほる / 佐橋佳幸 / 鈴木祥子ほか
そのほかスタッフインタビュー、ライブレポートやディスクレビュ含めて
テキスト盛りだくさんのコアな一冊!
発売元:合同会社バディット 
https://bhodhit.jp/

[エッチング仕様] [Analog]"]

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