竹内まりや、Travis Japan、sumika、なとり、yama、AI……注目新譜6作をレビュー

なとり「ターミナル」

なとり「ターミナル」

 2022年の初リリース楽曲「Overdose」がアジア圏を中心にバスりまくり、一気に注目度を上げた“なとり”。1stフルアルバム『劇場』に収録された「ターミナル」は、「劇場」「ラブソング」などと同じく、以前からTikTokでデモが公開されていた楽曲。ギターのコードとスキャット風のコーラスで始まり、心地よいファンクネスをたたえたバンドサウンドへと移り変わり、リスナーの体を気持ちよく揺らしてくれる。生楽器の音色を活かしたアレンジ(特にグルーヴィなベースラインは最高)、しなやかなラインを描き出すメロディは、たとえば90年代のアシッドジャズあたりが好きな大人の音楽ファンにも訴求できるはず。“逃避行”をモチーフにした普遍的なメッセージを含め、ポップアーティストとしてのポテンシャルを感じさせる楽曲だ。(森)

yama「沫雪」

yama「沫雪」

 SNSで話題を集め、「春を告げる」でブレイクした仮面のシンガー・yama。1月24日に発売を控えた3rdアルバム『awake&build』からの先行配信。鍵盤、シンセ、電子音、フィンガースナップなど、さまざまな音が入ってくるが、トラックは全体に主張が控え目。yamaも声を張り上げるタイプの歌い手ではなく、この曲は特に、消えてしまいそうな儚さを丁寧に表現しているので、淡い歌唱をさらに淡いサウンドで包み込む、まさにタイトルに相応しいセンチメンタルな一曲となった。テーマは別れなのだろうが、具体的な描写はない。〈よろけたまま伸ばした手は空を掻く〉〈哀れむような風の音〉など、わりと古風な詩情に寄せたところも注目すべきポイントだろう。(石井)

AI「ワレバ」

AI「ワレバ」(Official Audio Track)

 サビで繰り返される〈Whatever〉の実際の響きを、カタカナでタイトルにした最新曲。サウンドは朋友プロデューサーであるUTAとAIの手によるもので、軽やかなアコースティックギターと存在感の強いキック、もしくは流れるようなストリングスとぱちゃぱちゃした手拍子など、面白い組み合わせの音像が展開ごとに入れ替わっていく。アッパーな曲、しっとりした曲と簡単に言い切れない曲調にしたのは、ただポジティブ一辺倒の曲だからではないからだろう。〈なんだってできる〉〈一緒に行こうよ〉とリスナーを鼓舞するAIがいれば、〈あとどれぐらい? どこまで?〉と命の有限を想うAIもいる。ただやみくもに背中を押さないところに大人の成熟を見る。(石井)

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