昭和の名曲が現代に映像化される背景とは? 竹内まりや、村下孝蔵らの楽曲が新たな解釈で蘇る

 先ごろ、村下孝蔵の代表曲「初恋」のミュージックビデオ(以下、MV)が公開されたが、実は同曲のMVが制作されたのは今回が初。オリジナルは1983年2月25日にリリースされているが、当時日本の音楽シーンでは未だMVの文化が根付いておらず、村下以外の名だたる名曲も同じように映像化されてないものが多い。そんな映像化されてこなかった名曲たちが、様々な経緯や才能との化学反応を経て蘇る動きが活性化している。

村下孝蔵「初恋」Music Video

 この動きの起点を探る上で欠かせないのが、2019年に竹内まりや「プラスティック・ラブ」のMVが制作されたことだ(※1)。海外を中心に盛り上がりを見せていたシティポップブームと呼応するように公開され、映像クリエイター・林響太朗により新たな解釈がなされた。1984年リリースの同曲だが、35年を経て新たに映像化されたことでその普遍性を確かめられた人も多いはず。だが映像化に際しては、シティポップというムーブメントに起因するも、林のように平成生まれの若く才能を持ったクリエイターが参加している点も重要になってくる。

竹内まりや - Plastic Love (Official Music Video)

 2021年10月には、新進気鋭のクリエイターたちが昭和の名曲のMVを制作する特番『ザ・ニュージックビデオ』(テレビ朝日系)が放送された。番組内では、YUKIとのコラボなどで知られ、世界的にも活躍するシシヤマザキがチェッカーズ「ジュリアに傷心」を、YOASOBI「夜に駆ける」の映像を手がけ一躍有名となった藍にいなが太田裕美「木綿のハンカチーフ」のMVをそれぞれ新たに制作。なお、藍は山下達郎「さよなら夏の日」の初MVも手がけている。若い世代を中心に支持を集める2人のクリエイターが参加する意義は大きく、映像を通じた新しい解釈以上に、楽曲やアーティストを知らないであろう層へリーチする側面もあったように思う。単に昭和の名曲に現代のエッセンスを加えるのではなく、そこから生まれる思いがけない表現にこそ“楽曲が蘇る”面白さが潜んでいるのではないだろうか。

山下達郎「さよなら夏の日」

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