Red Velvet、秀逸なコンセプトとトレンドに流されない個性で確立した“らしさ” 9周年を機に軌跡を振り返る

 韓国SMエンターテイメント所属のガールズグループ、Red Velvetが8月1日に9周年を迎えた。2023年に韓国内での正式活動アルバムは18枚を数え、SM歴代ガールグループの中で最も多くのアルバムをリリースしたRed Velvetの軌跡を振り返ってみたい。

Red Velvet 레드벨벳 '행복 (Happiness)' MV

 2014年8月1日にIRENE(アイリーン)・SEULGI(スルギ)・WENDY(ウェンディ)・JOY(ジョイ)の4人組グループとして「Happiness」でデビューしたRed Velvet。このグループ名は、「Redのように強烈で明るいが親しみやすい魅力」と「Velvetのもつクラシカルで柔らかな魅力」の両面を併せ持つという、グループコンセプトそのものを表している。“Red”コンセプトの曲はラップパートも多めで強烈なビートのダンス曲、“Velvet”コンセプトの曲は柔らかめのビートかつテンポもスローで優雅な雰囲気の楽曲が多い。“Red”コンセプトの楽曲では大衆的ヒットの曲が主で、よりクラシカルでありながら同時に実験的な試みもされる“Velvet”コンセプトではアイドルファンや音楽評論家の評価が高い。SMエンターテインメントのガールズグループで言えば、清純で親しみやすい少女時代のイメージと、個性が強く独特なコンセプトを消化することも多かったf(x)のイメージの両方を引き継いでいる。デビュー当時のメディアでも「少女時代とf(x)の中間」と紹介されることが多かった。一方で、音楽的には少女時代のさらに先輩である天上智喜や、Red Velvet自身も楽曲をカバーしているS.E.Sを想起させる部分もあり、SMエンターテインメントのガールズグループの音楽的なベースを多様な方向性で引き継ぎながらも、同時にもうひとつの「SMエンターテインメントらしさ」でもある実験的要素をうまく溶け込ませている。

Red Velvet 레드벨벳 'Be Natural (feat. SR14B TAEYONG (태용)) MV

 デビュー曲「Happiness」から続けてガラリと雰囲気の変わったクールなスーツ姿で“Velvet”コンセプトとしてS.E.S.のカバー曲である「Be Natural」「Automatic」を公開し、グループのコンセプトを知らしめた。最初に大きな大衆的注目を受けたのは、2015年に末っ子のYERI(イェリ)が加わり5人組グループとしてリリースした1stミニアルバム『Ice Cream Cake』だろう。ここから2015年『The Red』、2016年『Russian Roulette』までは、ティーンの間で話題で人気のグループという印象の強いグループだった。そして2017年7月にリリースした「Red Flavor」が音源チャートで大ヒットし、大衆認知度とサマークイーンの称号を得る。この曲は第15回KMA(韓国大衆音楽賞)で最優秀ポップスにも選ばれた。一方で、同じ年にリリースした「Peek-A-Boo」をタイトル曲とした2ndアルバム『Perfect Velvet』は、「weiv」や「Idology」といった音楽マニア向けのメディアで「今年のアルバム」に選定されるなど、大衆認知と音楽メディア・アーティストによる音楽的評価、そしてファンダムという両翼を手に入れた。2018年には『Red Flavor』のテイストを引き継いだサマーソング「Power Up」、翌年にはダークでキッチュなイメージの「Bad Boy」をヒットさせた。この時期以降、それまでははっきりと分かれていた“Red”と“Velvet”の両方を融合させたような楽曲もリリースされるようになり、90年代風のR&Bやニュージャックスイング、トロピカルハウスなど多様なサウンドを表現している。キャッチーでポップな「#Cookie Jar」で日本デビューを果たしたのも2018年だ。

 2014年から2018年までのキャリア初期では全てのアルバムのアートディレクターを現在はHYBE傘下レーベルADORでCEOを務めているミン・ヒジンが担当していた。最近では、現在彼女がアートディレクションを担当するNewJeansのデビューと活躍によってRed Velvetの過去のアートディレクションにも再び注目が集まった。特に2015年『Ice Cream Cake』での全員がトーンに差があるロングのブロンドヘアー、「Dumb Dumb」、2016年「Russian Roulette」、2017年「Rookie」で見せた5つ子コーディネートといった、「不自然なまでに均一なスタイリングによる奇妙なスタイリッシュさ」などは、より大衆的に噛み砕かれながらもそのままNewJeansに引き継がれている部分はあるだろう。

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