『京都大作戦2023』、団結することで取り戻した“全力の楽しさ” 絆を紡いできた10-FEETへのリスペクトが絶えない2日間に

『京都大作戦2023』総括レポート

10-FEET、“真骨頂と新基軸”を交えて感動を呼ぶステージに

 そして初日のトリとなるステージで、10-FEETはThe Birthday「LOVE ROCKETS」をカバーした。これには驚いたが、〈願いたいよ 願ってたいよ 人が病に負けない事を〉(「OVERCOME」)と歌ってきたTAKUMA(Vo/Gt)だからこそ、並々ならぬ祈りとリスペクトを込めてカバーに挑んだに違いない。大作戦が中止に見舞われたり、TAKUMAの不調でツアーが中断された経験があったことを思えば、10-FEET自身、万全な状態でライブを行なう難しさを痛感しているのだろう。「今年は可能な限り全フェスに参加してくだ祭!」という副題には、本来の意味を飛び越えて、「いつでもそのアーティストのライブを観られるとは限らないからこそ、一つひとつのライブ、ひいては今この瞬間を後悔ないよう全力で楽しんでくれよ」という、切実なメッセージが滲んでいるように思えた。

 TAKUMAは2日間のライブ中、何度も「最後まで助け合えよ!」とオーディエンスに投げかけていた。声をかけ合い、倒れた人がいれば起こす。出演できなくなってしまったバンドがいる時は、その時間を仲間のバンドが全力のライブで盛り上げる。そうやって、全ての観客とアーティスト、スタッフが相互に働きかけ、助け合いながら『京都大作戦』は歴史を積み重ねてきた。コロナ禍を経て、声を出せる状態で再会できたことで、その団結は一段と強くなったように感じたし、初参加の人にとっては、優しくて居心地の良い空間として映ったのではないかと思う。2日目のMCで、TAKUMAが「過去の傷を消すことはできないけど、その意味を変えていくことはできる」と話して「深海魚」を歌うシーンがあったが、せめて『京都大作戦』に来ている間だけは、互いに助け合い、音楽で喪失や後悔を癒してあげることで、明日を生きるための小さな糧を作り出していきたい。そんな願いと温かさを、全身で感じることができた。

 コロナ禍において、10-FEETはきっと様々な重荷を背負ってステージに立っていたことと思う。歓声がなくてもフィジカルなライブを研ぎ澄ませなければならなかったし、フェスを主催する立場として安全面も考慮しなければならなかったし、何よりそれを先導するようなライブや発信をしていかなければならかった。その重さは計り知れないものだが、昨年「今年こそ全フェス開祭!」を掲げて4日間の大作戦を成功させたように、しっかりと役目を果たしてきたからこそ、今年の10-FEETはその荷物を少しだけ置いて、軽やかな足取りでライブしていたことが感動的だった。そこに「第ゼロ感」という強力な武器が加わったことは鬼に金棒。先述した「深海魚」に続いて、Kj(Dragon Ash)を迎えた「RIVER」、大阪籠球会を迎えた「第ゼロ感」が立て続けに披露された2日目の流れは、「待ち望んでいた10-FEET」と「新しい10-FEET」の両方が垣間見え、『京都大作戦』の原点と未来が交錯したような素晴らしい瞬間だった。

 「ヒトリセカイ」「STONE COLD BREAK」「SHOES」「その向こうへ」「VIBES BY VIBES」といった歴史を作ってきた名曲たちが再び歓声を帯び、ステージとフロアの垣根がどんどんなくなっていく。そして最後の最後、『京都大作戦2023』は「CHERRY BLOSSOM」で大団円を迎え、たくさんのタオルが喜びの声とともに宙を舞った。こんなにも晴れやかな気持ちで大作戦を楽しめるようになるとは、1年前はまだ確信できていなかったけれど、“ライブ”を取り戻すために歯を食いしばって堪えてきた全てのロックファンへの祝福のような光景に、思わず目頭が熱くなってしまう。そして何より、先の見えない時代でも『京都大作戦』を開催し、絆を守り続けてきた10-FEETへのリスペクトが絶えない2日間だった。また来年も太陽が丘で10-FEETと会えるよう、困難や葛藤を何度でも乗り越えていこうーーそう思える日常が、これからも続いていきますように。

10-FEET オフィシャルホームページ
京都大作戦2023 公式サイト

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