『京都大作戦2023』、団結することで取り戻した“全力の楽しさ” 絆を紡いできた10-FEETへのリスペクトが絶えない2日間に

『京都大作戦2023』総括レポート

源氏&牛若の各ステージを総括 “出られなかったバンド”への想いも

 時代を作ってきたという意味では、1日目のクリープハイプと、2日目のACIDMANも印象深い。両者とも昨年、新型コロナウイルス感染で出演が叶わなかったこともあり、満を持してのリベンジ公演となる。足元を見つめるように言葉を紡ぐクリープハイプと、宇宙を見上げるように鳴らすACIDMANでは、一見スケールが真逆のような気もするが、生活を真っすぐ見つめる歌を日本語詞で鳴らすという意味では、奇しくも通じ合う部分の多い2組。「ナイトオンザプラネット」や「ALMA」のように、ミドルテンポな楽曲で太陽が丘を照らせるのも彼らならではだろう。クリープハイプは「Fin」(コラボアルバム『10-feat』収録)を、ACIDMANは「RIVER」をカバーし、10-FEETへのリスペクトもしっかりステージに刻み込んだ。

 2日目に出演したDragon Ashは、“俺たちの居場所としてのライブ”を取り戻すために、コロナ禍で先陣を切って闘い続けてきたバンドだ(昨年の『京都大作戦』でのライブは今も鮮明に記憶に残っている)。だからこそ、この日のステージはとりわけ解放感に満ちていたように思う。サンバのリズムで陽気なステップを踏む「La Bamba」「For divers area」の後、ダメ押しの「Fantasista」を叩き込む流れは、コロナ禍を乗り越えてDragon Ashが取り戻した自由自在な羽ばたきそのものだった。

Dragon Ash

 ORANGE RANGEも今年の『京都大作戦』に欠かせない高揚感をもたらした。「以心電信」「上海ハニー」「イケナイ太陽」といったヒットアンセムで盛り上げ、「Pantyna feat.ソイソース」で爽やかな風とクスッとした笑いを吹き込み、パンキッシュな「キリキリマイ」で豪快に締めるという、20周年を経た彼らの王道スタイルは、大作戦でも鮮烈な輝きを放っていた。ライブのキレが抜群に尖っているからこそ、ORANGE RANGEは今も人気の幅を広げ続けているのだろう。やはり彼らも、独自のミクスチャー道を貫き続ける稀有なバンドである。

ORANGE RANGE

 笑いという意味で強烈だったのは、やはりマキシマム ザ ホルモン。前代未聞の“MC中にモッシュさせる”というダイスケはん(キャーキャーうるさい方)にしかできない煽りで、爆笑と発汗の渦を巻き起こしつつ、ヘッドバンギングにダイブにクラウドサーフに大合唱に、ライブハウスの“全て”を濃縮したような35分間のセットリストを爆走。京都の飢えた腹ペコ(ファンの総称)たちを一気に満たした。一方、牛若ノ舞台では、1日目の朝イチからかずき山盛りのイサム(Ba/Vo)が海パン姿のまま観客に担がれるという珍事が巻き起こっていたが、こうした笑いというのも『京都大作戦』に欠かせない瞬間だ。

 そんな牛若ノ舞台では、大作戦常連のENTH、10-FEETのマネージメントの後輩であるNUBOをはじめ、過去に出演経験もあるFOMAREやKUZIRAらが熱演。高速ハードコアで世の不条理を吐き出しつつ、シュールなMCも交えたおとぼけビ〜バ〜は、海外での百戦錬磨のライブ経験を大作戦に叩きつけ、初出場ながら強烈なインパクトを残した。同じく初出場となったw.o.d.は、うだるような暑さを切り裂く鋭利なロックを聴かせ、退屈を打ち破るように「My Generation」「踊る阿呆に見る阿呆」でオーディエンスを踊らせた。2日目の10-FEET直前に登場したHakubiは、「蜃気楼」(コラボアルバム『10-feat』収録)の大合唱を巻き起こし、昨年以上に大らかで熱量の高いライブを牛若に刻み込んだ。声出し解禁も相まって、ライブハウスの熱狂をそのまま体感できる牛若ノ舞台も『京都大作戦』の大切なピースだと再認識できたとともに、w.o.d.やHakubiのように飛躍の時を迎えたバンドが多数いるからこそ、近い将来、丘を越えて源氏ノ舞台の土を踏むバンドも現れることだろう。

 また、今年はチバユウスケの病気療養のため、出演が叶わなかったThe Birthdayに向けて、たくさんの想いが飛び交った年でもあった。Ken Yokoyamaは、ステージ上のマイクを全て客席に投げ入れ、“オーディエンスに歌わせる”演出を徹底していたが、最後には「このステージに立てなかった友達のために1曲やって帰るわ」と言って、本来はチバがボーカルを取るコラボカバー曲「Brand New Cadillac」を自身の歌声で届け切った。

Ken Yokoyama

 代打として出演したのは、ヤバイTシャツ屋さん。何より素晴らしかったのは、The Birthdayの穴を埋めにいこうとするのではなく、10-FEETをリスペクトし、『京都大作戦』を知り尽くした自分たちにしかできないライブを堂々とやってのけたことだ。特に、こやまたくや(Gt/Vo)のエモーション剥き出しのMCから「ヤバみ」「あつまれ!パーティーピーポー」へ畳みかけた流れは今年のハイライトの1つ。「10-FEETめちゃくちゃカッコいい!」のコール&レスポンスを投げかけるこやまに、もりもりもと(Dr)が「媚び売りすぎ!」とツッコんだかと思えば、結局こやまが「『美味しんぼ ザ ムービー』のタイアップください!」と謎の媚びを売ってしまうというオチも、ヤバTらしさ丸出しであった。

ヤバイTシャツ屋さん

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