GACKT、稲垣吾郎、細美武士……節目を迎え、“知命”を持ちながら活動し続けるアーティストたち
古代中国の哲学者・孔子は「五十にして天命を知る」という言葉を残している。これは「知命」と言われ、自分の人生が何のためにあるかを意識するようになるという意味の言葉である。歴史に名を残す偉人が五十歳という年齢を人生における節目と捉えているのだ。そこで今回は、五十歳という節目を迎え、第一線で活躍し続けるアーティストを取り上げてみたい。
先日公開されたWebインタビューが話題となっているGACKT(※1)。2021年には体調不良と重度の発声障害を発症、その容態に伴う活動休止で一時は芸能活動の継続も危ぶまれたGACKTだったが、今年の3月にはライブツアーを開催。7月4日には自身50歳のバースデーイベントとして『GACKT ANNIVERSARY-大魔王生誕祭2023-』を行うなど、精力的な活動でその快復ぶりを示した。
GACKTといえばストイックな生活も度々注目を集めている。2020年9月13日に放送された『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)ではGACKTの私生活に密着。放送では多様かつハードな筋トレを難なくこなしつつ、食事にも徹底したこだわりを見せる姿が明らかになった。
そんなGACKTだが、前述のWebインタビューでこんな言葉を残している。
「今わかったのは《人生五十年》って、50年しか生きられないという意味ではなくて、50になる前にどれだけのことができたのかということなのかと。もう30代や40代には戻れないですし。それまでどれだけ全力で走っていけるのかが、人生でいちばん大事だと思うようになりました(※2)」
「人生五十年」とは織田信長が好んだとされる幸若舞『敦盛』の一節。「人間五十年、下天(化天)の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」、現代語に訳すならば「人の世の五十年ごときは、天上界の下方の時間で見るならば、ほんの夢や幻のようなもの」という意味だ。限られた人生だからこそ、GACKTはその限られた時間を全力で走り、アーティストとしてのパフォーマンスに還元しようとしているのだろう。
香取慎吾、草彅剛と共に新しい地図を立ち上げ、映画出演やラジオパーソナリティなど多角的な活動を展開する稲垣吾郎も今年の12月で50歳を迎える。昨年公開された『窓辺にて』では、自身に当て書きされたキャラクターを伸び伸びと演じきったことでも話題となった稲垣だが、4月に放送されたバラエティ番組『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ系)に出演した際は、周囲からはなかなか振りづらい話題を自ら積極的に話す姿に注目が集まった。
番組内でもお台場・フジテレビでのバラエティ収録は6年ぶりと語られていた通り、地上波バラエティ番組とは暫し距離があった稲垣だが、軽妙なトークで視聴者の期待に応えた。香取、草彅とともに月1回、7.2時間にわたり生配信してきた『7.2 新しい別の窓』(ABEMA)や、パーソナリティを務めるラジオ『THE TRAD』(TOKYO FM)といった番組でも培われてきた、稲垣のバラエティタレントとしての力を改めて実感することができた。
そんな稲垣だが、昨年11月に『窓辺にて』の公開に伴って行われたインタビューではこんな言葉を残している。
「あっちの道を選んだほうが良かったんじゃないか……みたいなことは、もちろんいっぱいありますよ。でも、“たられば”は仕方のないことですよね。それが本当の後悔とは思わない。その時その時の決断があったから、今があるわけですし(※3)」
自分の人生を振り返った時、あのときああしておけば良かった……と悔やんでしまうのは人間の性だ。そしてそうやって悩んでいる自分を鬱陶しく感じてしまうのも多くの人が抱える悩みのタネだろう。そんな悩みを稲垣は肯定しつつ、一方で我々が見失いがちな“選択の果てに今がある”ということも説いているように感じる。それは他でもない稲垣が彼自身の選択に何度も悩みながら、それでも脇目も振らず現在の活動に取り組み、充実した日々を過ごしている証だ。こうしたコメントからは、彼自身のたゆまぬ努力を感じる。