THE ALFEE、“声出し解禁”ライブで交差した三位一体の歌声とファンの大歓声 夏イベントへの期待に胸膨らませた最新ツアー
「音楽コンサートにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」が廃止され、観客が声を出せるようになった2023年春。隣の席の人と感動を分かち合えなかった観客収容率50%、ステージに声援を送れなかった声出し禁止、その状況を経て遂にマスク着用ながらも声出しが解禁された5月28日のTHE ALFEE のNHKホール公演2daysの2日目。『THE ALFEE 2023 Spring Genesis of New World 風の時代』の開演前、客席は期待と興奮に包まれた。この状況を待ち望んでいたのは、観客だけではない。約50年間ライブを主軸として活動しているTHE ALFEEは、それ以上にこの日々を待ち侘びていたのではないだろうか。
開演時間の17時になり、「お待たせしました」のアナウンスが流れると、会場の拍手は一段と大きくなり、観客が徐々に立ち上がり始める。客電が落ち、幻想的なブルーの照明に照らされた会場にピアノのSEが流れ、ステージ奥の下手からメンバーの高見沢俊彦(Vo/Gt)、坂崎幸之助(Vo/Gt/Per)、桜井賢(Vo/Ba)がステージ中央に歩いてくる。高まる歓声と拍手。その中でメンバーが定位置に着き、ドラム音が鳴り響き、「鋼鉄の巨人」が始まる。桜井と高見沢が交互にボーカルを取るハードなナンバーに合わせて、客席の拳が小刻みに揺れる。照明が情熱的な赤に替わり、温まった会場に放たれたのは、坂崎がハンドマイクでボーカルを取る「恋の炎」。ステージ左右に動き回って客席を煽る坂崎同様、高見沢も縦横無尽にギターを掻き鳴らし観客を魅了する。客席も拳を振り上げ、歓声を上げる。声を出せる、やっとこの状況になったのだ。2曲が終わり、「この春からやっと解禁になりましたので、みなさんの3年分の熱い声援を期待しています!」と坂崎がMC。1階席から3階席までを埋め尽くされた観客からの声援が響く。
あたたかなオレンジ色の照明に照らされ、このツアーのタイトルにもなっている、2022年のアルバム『天地創造』からのナンバー「風の時代」が始まる。物にとらわれず、自由に生きていくことを概念とする“風の時代”が加速する昨今。「変わるのは今」と歌うパワーをくれるナンバーだ。間髪入れずに、THE ALFEEのブレイクのきっかけになった1983年のナンバー「メリーアン」へ(個人的に前日のライブにも足を運んだのだが、ここは「Brave Love ~Galaxy Express 999」だった。)ブルーの照明が眩いステージで始まったのは「THE AGES」。3人の歌声のみで始まる曲冒頭に、客席の拍手が冴え冴えと会場に響き渡る。激しくなったりポップになったりバラードになったりと、目まぐるしく展開する1986年のナンバーだが、こんな曲を作ってライブで再現できるバンドは、現代においても他に出てきていないと思う。
6分超の同楽曲が終わり、中央の坂崎が「先が長いのでお座りください」とアナウンス。MCタイムは、「初めてTHE ALFEEを見る人のためのメンバー紹介」。前日は、わざとなかなか紹介しなかったのだが、この日は真っ先に「縁の下の力持ち、ベース桜井賢」とTHE ALFEEの創設者を紹介し盛り上げる。恒例の桜井営業部長によるツアーグッズ紹介コーナーではツアーパンフレットや「ほっぺが落ちる」くらいおいしいグッズのお菓子を紹介。落ちたほっぺたを踏む3人の足音をキーボード音で出すお遊びでしばし会場を沸かせ、「はい、終わり」の高見沢の指示でMCタイムが終了。「演奏会に戻りたいと思います」の坂崎の合図で、客席もスローナンバーを聴く体制に。「春ツアーで演奏するのは久しぶり」という、1992年ドラマの主題歌にもなったシングル「Promised Love」。(前日の公演ではここで「Love Never Dies」。)片手をポケットに引っかけ、ベースを弾かずに桜井が艶やかに歌い上げる。高見沢と坂崎がアコースティックギターを持って向き合い、カウントしてスタートした「人間だから悲しいんだ」。激しく重なり合うふたりのアコギの音と、そこにすんなり溶け込む坂崎の味のあるボーカル。ライブ仕様にドラマティックに仕上がっている。鐘が鳴り響き、懐かしい雰囲気のオルガンの前奏が流れ、これもドラマ主題歌でツアーで演奏するのは久々になるであろう、2013年のシングル「GLORIOUS」が始まる。この曲がリリースされてから約10年。私自身の年齢の年代も変わり、この世を去る友人も出てきた。亡くなった友へ、そして愛するファンに「俺は今もここで愛を歌っている」と歌うこの曲を聴いて、涙が出てきた。
鳴り止まない拍手の中、高見沢のMCタイム。この日のライブのここまでで自身のギターの弦が2回切れるハプニングやNHKホール改装の話、そして本人たちも「こんなに続くと思わなかった」という「THE ALFEEが続いている理由」について言及。「はっきりしたものはない、ひとつだけ言えるのは高見沢、坂崎、桜井の3人がいたからできたんでしょう」と断言すると、客席からは割れんばかりの拍手が起こる。
そして「新曲を出しました」とオリコンウィークリーチャート2位を記録した、ダブルAサイドシングルの1曲「Never Say Die」へ。着席していた客席は一気に立ち上がる。「風の時代」という言葉が印象的に使われる激しいナンバーだ。波の音のSEが聴こえてきて、高見沢のエンジェルギターが点灯し、『天地創造』からの約9分のプログレッシブナンバー「組曲:時の方舟」へと続く。2022年のライブでもずっとこの曲が披露されていたが、この壮大な曲を盛り上げる照明が相変わらず素晴らしい。インスタレーション・アートを見ているようなこの曲の空間に酔いしれた後は、風と雷の音が流れ「Countdown 1999」へ。ハードなイントロと共にステージに噴煙が上がる。坂崎はパーカッションを担当、赤とシルバーの照明が切り替わる中で、“メタリック”満載のステージングを繰り広げる。曲が終わるや否やバロック風オルガン音が流れ、ダブルAサイドシングルのもう1曲で、ドラマ『グランマの憂鬱』(東海テレビ・フジテレビ系)主題歌にもなった「鋼の騎士Q」が始まる。本編ラストとなるこのナンバーを盛り上げるがごとく、オレンジの照明に炎が上がる。ドラマプロデューサー“たって”の希望でこの曲のメインボーカルをとる桜井のやわらかで艶のある歌声、この曲のレコーディングで使われたレスポールを高見沢が、D45のアコースティックギターを坂崎が持ち、CD音源よりもさらにドラマティックに演奏され本編の幕が閉じた。