香取慎吾、完璧に演じ切った11年ぶりフジテレビ連続ドラマ主演 みんなの“慎吾ちゃん”は更新され続ける
「さぁお立ち合い #日本一の最低男」
そうX(旧Twitter)で、つぶやく香取慎吾の不敵な笑みが見えた気がした。香取が主演するドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)の最終回がオンエアされた、3月20日の夜10時直前のことだった。
香取が演じた物語の主人公・大森一平は、元テレビ局のプロデューサー。部下にパワハラだと訴えられて退職したが、社会的再起をかけて政治家になることを目指すという役どころだ。そのために、利用しようと考えたのが一平の亡き妹の忘れ形見を育てる、シングルファザーの小原正助(志尊淳)。男2人で2人の子どもを育てるという疑似家族っぷりをSNSに投稿し、好感度稼ぎをしていこうという魂胆だった。
そもそもの動機こそ自分の利益や欲望を叶えようとしたものではあるが、一平はちゃんと結果を残していく。そのやり方は、まだまだ昭和的な根性論がチラ見えしたものの、子どもたちに寄り添う気持ちはニセモノではない。そんな一平を頼りにする人の輪も大きく広がっていく。気づけば、私たちの日常に潜むさまざまな課題に体当たりで向き合い、解決していく。どこが「最低男なんだ?」と思わせる展開。しかし、そのタイトルにあった違和感は、最終回で見事に払拭された。
政界に近づくほど見えてきた現職の長谷川区長(堺正章)の利権政治。それを止めるには、その悪事を白日の下にさらす必要がある。だが、それを内部の人間による匿名告発も、誰だかわからない無名の人が騒いだとしても、少し話題になったところで「生成AIによるディープフェイクだ」なんだと、もみ消されてしまうのが関の山。
そこで一平は、自らが区長選挙に出馬して、とことん暴露系候補者として大暴れしていくことを思いつく。その大暴れっぷりに、現職区長サイドの黒岩鉄男(橋本じゅん)も必ず反論してくると見込んで。そしてドロドロの泥沼になったところで、一平の幼馴染で議員秘書の真壁考次郎(安田顕)が立候補するのだ。情報合戦で世論を操作しようという絶望的な選挙戦の中で、当たり前の政治を訴える真壁が唯一の光となって見えるシナリオだ。
本当に区民の生活を考える真壁を区長にしたい。不動の組織票を崩し、さらに政治に関心を持てなくなっている浮動票を動かす。その目的を果たすために、一平はとことん“最低男”を演じ切る。一平を深く知らない人は「こいつだけは当選させてはいけない」と危機感を募らせ、投票所へと足を運ぶはず。一平の影が濃くなるほどに、真壁に光が強くなると信じて。そのピエロっぷりは、かつて一平を訴えた元部下で、現在は人気動画配信者の野上慧(ヘイテツ)も「完璧」と口をつくほどだった。
区民から、いや日本中から嫌われ者になる覚悟で企てた、一平による一世一代の“最低男”ショー。そして、無事に真壁が区長に当選した際には、正助や子どもたちに迷惑をかけまいと、ひとりそっと姿を消す準備まで進めていた。その姿は、まさしく児童文学『泣いた赤鬼』で悪役に徹して赤鬼と村人をつないだのち、そっと旅に出てしまった青鬼そのものだ。「そのあとはどうするんだ」と心配する真壁に、一平はこう答える。「なんとでもなるだろ。俺を誰だと思ってんだよ」と。そして「わかるだろ。長い付き合いなんだから」「そういう俺を、俺は一番好きなんだよ」と続けるのだった。
『 #日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』
最後まで視聴いただきありがとうございました✨みなさんの心に残る作品に
なっていたら嬉しく思います。SNSの投稿はもう少し続きますので
最後までお付き合いください💫🗳️𝟏~𝟑話・最終話 #Tver 見逃し配信中!https://t.co/POlNKKmyP7… pic.twitter.com/VGm0NLysSp
— 『日本一の最低男』木10ドラマ【公式】 (@saiteiotoko_cx) March 20, 2025
このセリフを言う香取慎吾のナチュラルな表情にしびれた。「俺を誰だと思ってんだよ」なんて、昭和の終わりから平成、そして令和にかけて、30年以上トップアイドルとして走り続けることができた人から言われたら、もはやひれ伏すしかない。ドラマにも描かれていた通り、この数十年で価値観は大きく変わった。それでも変わらず“慎吾ちゃん”として愛され続けることは、簡単なことではない。
もちろん、香取にだって歯がゆい思いややるせない気持ちに包まれた瞬間も数多くあったはず。それでも彼は、計り知れない大きさの器でそれらを受け止めてきたのだろうと、一平の姿を通して想像する。「わかるだろ。長い付き合いなんだから」とは、そんな香取をずっと応援し続けてきたNAKAMAたちへの目配せのようにも感じられて、なんだか胸が熱くなった。