愛知で初開催迎えたロックフェス『RUMBLE×JAG 2025』 地元勢やニューカマーに託された飛躍の可能性

パンク/ラウドロックを中心とした屋内音楽フェス『RUMBLE×JAG 2025』が3月15日・16日に愛知・Aichi Sky Expoにて初開催された。愛知ではこれまで『FREEDOM NAGOYA』やcoldrain主催『BLARE FEST.』、04 Limited Sazabys主催『YON FES』などといったフェスは行われていたものの、首都圏や関西地区と比べると決して数は多くはない。そんな、ある意味では“フェス後進地”と言えなくもない愛知で、『FREEDOM NAGOYA』開催やRAD系列のライブハウス展開、そしてENTHやKUZIRA、Makiなどのマネジメントを手掛けるRAD ENTERTAINMENTと、東海地区の名物イベンター JAILHOUSEがタッグを組んで、「ゴロゴロでギザギザ。」というキャッチコピーを掲げて、今回大きな勝負に挑んだ。
パンク/ラウドロック系フェスはアーティストやレーベルが主催するものを含めると、国内に多々存在する。と同時に、夏季の野外開催から始まった日本のフェス文化も今や通年行事として定着し、この時期もほぼ毎週のように全国各地で、大小の規模を問わずフェスやイベントが行われている。そんな中で『RUMBLE×JAG 2025』はどのような独自性を持って、オーディエンスにアピールしていくのだろうか。それを目撃すべく、筆者は2日間にわたり会場に足を運んだ。
開催地となるAichi Sky Expoは中部国際空港 セントレアのすぐ向かいにある大型展示場施設で、愛知の中心地である名古屋から最速で約30分という距離感。これを不便と感じるか否かは人それぞれだが、周りに大型商業施設などがなく、フェスや音楽に没入できるという利点もあるのでは、と筆者は感じた。また、出演者のブッキングに関してはENTHのダト・ダト・カイキ・カイキ(Ba/Vo)が暗躍したと聞く。この手のジャンルのフェスでよく目にするベテランから中堅、若手、ブレイクが期待されるニューカマーまでが、3つのステージに散りばめられており、かつ両日のヘッドライナーをKUZIRA(15日)、ENTH(16日)という東海地区出身バンドが務める点などからは『RUMBLE×JAG 2025』らしさを感じ取ることができた。
Crossfaith、ROTTENGRAFFTYらがもたらした狂乱
ここからは、2日間で気になったアクトについて触れていく。まずは初日のGIZAGIZA STAGEトップバッターを務めたMaki。名古屋出身の3ピースバンドが、地元で初開催のフェスで一番手を飾ることは、バンドにとってもファンにとっても光栄なことではないだろうか。事実、11時スタートにも関わらずフロアには大勢のライブキッズたちが駆けつけ、暗転と同時に大歓声が響き渡った。山本響(Ba/Vo)の「お前ら、おはよう!」を合図に、ライブは「朝焼け」から華々しくスタート。バンドの信念が伝わるような堅実なビートに乗せて、オーディエンスはクラウドサーフなどでその熱意に応えていく。そんな中、山本が「後ろまで俺の声がバーンと届くように歌います」と告げ「銀河鉄道」を歌い始めると、会場の一体感はさらに高まり、さらにラストの「憧憬へ」では会場がひとつになってシンガロングする場面もあり、新しいフェスの幕開けに相応しいステージを全うした。

GIZAGIZA STAGEとGOROGORO STAGEが横並びとなったメインフロアでは、10分ほどのインターバルを挟みながら、観客を飽きさせることなくライブが進行していく。以降も今年3本目のライブを大きなフェスで飾ったOVER ARM THROW、曲ごとに豪華なゲストを迎えてライブを進行させるSPARK!!SOUND!!SHOW!!など、個性的な面々が熱量の高いステージを展開。その一方で、メインステージから少し離れた場所に位置するGIRAGIRA STAGEでは、狭いスペースにライブハウスさながらの熱気を充満させ、勢いのあるライブで観る者を夢中にさせる。名古屋出身のMay Forthもそのうちのひとつで、満員のフロアを前にカンタ・デ・ラ・ロッチャ(Gt/Vo)が「最高っすね。最高の景色!」と何度も口にする中、エネルギッシュな疾走パンクチューンを連発。ライブ終盤、カンタは「3年前、『FREEDOM NAGOYA』のオーディションに受かって出演して。その後、自分以外のメンバーが抜けて、がむしゃらに続けていたらここにたどり着いた。ラッキーが続いたからバンドを続けられている」と感慨深げに話し、「俺のこれまでとこれからの歌」と「次回予告」をエモーショナルに歌い上げた。



フェス終盤では、自身最大規模のワンマンライブ『OUR FAITH WILL NEVER DIE』と初主催フェス『HYPER PLANET 2025』ぶりのライブとなるCrossfaithがGOROGORO STAGEに登場。サウンドチェックで「Countdown To Hell」が演奏されると、フロアではウォールオブデスが発生するなど早くも加熱ぶりを見せる。その盛り上がりはライブ本編へと引き継がれ、オープニングの「Monolith」から無数のサークルピットやクラウドサーファーが続出し、再びウォールオブデスが発生した「Rx Overdrive」や会場がダンスフロアと化した「God Speed」、Koie(Vo)が「激しい曲ばかりやったけど、次は一番ポップな曲」と告げてCrossfaith史上もっとも凶悪&強烈な「DV;MM¥ SY5T3M…」が繰り出されるなど、終始彼ららしさが貫かれた。


SHADOWS、The BONEZがそれぞれのカラーでフロアを染め上げた後は、ROTTENGRAFFTYが会場を熱狂の渦へと巻き込んでいく。N∀OKI(Vo)の煽りから「ハレルヤ」でライブを始めると、その前のめりなバンドサウンドに合わせて、満員のフロアに一体感が生まれていき、NOBUYA(Vo)の「本気でかかってこい!」を合図に「世界の終わり」へ突入すると、会場はクライマックスのような盛り上がりを見せる。以降も「D.A.N.C.E.」「THIS WORLD」が続き、フロアにはモッシュやサーファーが大量発生。3月19日にリリースを控えたニューアルバム『わびさび』から披露されたドラマチックな「響都グラフティー」に続いて、ライブに欠かせないキラーチューン「金色グラフティー」が繰り出されると客席からはこの日一番のシンガロングが沸き起こった。


ハルカミライ、KUZIRAらが届ける真摯な歌の力
この熱気を引き継ぎつつ、続くハルカミライは橋本学(Vo)の「やろうか! こいよ!」を合図に、「君にしか」を筆頭とした“大きな歌”を届け続ける。ライブ中、橋本はフロアへ降りてオーディエンスと直接コミュニケーションを図りながら、まっすぐな歌とメッセージを投げかけていく。また、ステージ上のメンバーもアグレッシブなアクションと豪快な演奏で、場の空気を掌握。メンバー紹介パートで、橋本が「全員ボーカル! それだけです!」と言い切るくらいに4人とオーディエンスがありったけの声で歌い続ける様は、会場の大小など関係ないほどに「ここはいつものライブハウスと何も変わらないんだ」ということを証明してみせる。クライマックスとなる「僕たちの悲しみはどこへ行く」では会場の一体感が最高潮に達し、「幸せになろうよ」でその場にいる者の心がひとつになったところで、彼らのステージはフィナーレを迎えた。


SHANKが彼ららしいステージを見せると、いよいよ初日のヘッドライナー KUZIRAの出番だ。すし詰め状態のフロアを前に末武竜之介(Vo/Gt)がひとり姿を現すと、被っていたキャップを脱ぎ、自身の坊主頭にバリカンを当てていく。その後は客席をまっすぐ見つめ、深く一礼してから「Backward」でライブをスタートさせた。序盤はMCを挟むことなく、ストイックに楽曲を繰り出し続けるKUZIRAの面々。昨年後半に末武が起こした事件を機にバンドは少し歩みを止めることになったが、今彼らに求められるのは、この真摯な姿勢とまっすぐな歌ですべてを伝えていくことではないだろうか。事実、その思いが客席にもしっかり伝わっていたことは、この日のステージを観れば十分に理解できた。ライブ終盤には「続けていこう!」という、『RUMBLE×JAG 2025』のみならず自身に向けて発せられたメッセージも届けられ、初日は幕を下ろした。

